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てなわけで、何か再会早々説教かまされました。


「……竜也、お説教長い」

「あんな置手紙置いていなくなるお前が悪いんだろ!」


私のせいか?

いや、まあ、姿見せようと思えば見せれたのに見せなかったんだから私のせいともいえるか。

でもなあ。竜也の後ろで殺気立ってるお姉様方。あの中の四人が元凶だよ?ダーリンが拾ってくれなかったら死んでたよ?


………ダーリン。こっぱずかし!でもちょっと続けてみよう!んでもって本人に向かって言ってみよう!上手くいけば一矢報いてやれる!毎回恥ずかしいのが私だけってのが納得いかない!


「で、今までどうしてたんだよ」

「えー?世界中旅してた」

「旅?」

「うん。いろんなとこ行った」

「俺もいろんなとこ行った」

「勇者だもんねえ」


お説教が終わったんで、正座してた足を崩す。しびれはない。慣れた。

いや、だって何でか知らないけど、魔王城で茶道はやっててさ。どこがツボだったんだ?分かんないけど、正式なものは知らないからお遊びなんだけど、正座してお茶回し飲みするの。畳まで作りやがった。


でも畳はいい。ほっとする。私室の一角にも置いてもらった。そこでダーリンとごろごろするの。何かまったりしていい感じ。彼もどうやらお気に入りらしい。日向ぼっこしてる猫みたい。可愛い。


しびれを訴えることもなく立ち上がった私を怪訝そうな顔で見た竜也が疑問を口に出す前に、踊り子と盗賊がその腕に抱きついた。

……胸でか!いや、ハーレムさん皆でかいけど!竜也の腕が埋もれてる。なにあれ羨ましい!竜也も羨ましいけどお姉さん方も羨ましい。


いやいやいや。待て私。これは口に出すな。出したらダーリンが何言い出すか。確実に大きくしてやろうかとか言うから!ベッドの上だけじゃなくて日常でも揉みかねないから!嫌じゃないけど嫌だ!矛盾じゃない!これは断じて矛盾じゃない!


「竜也~。誰、これ」

これ呼ばわりかい。

「ああ、幼馴染の凛だよ」

待て。胸に腕埋まってるのスルー?

「くす。あら、可愛らしい幼馴染さんね」

あ、馬鹿にされた。

「お久しぶりですわね」

アンジェリカ姫はお怒りですか。そうですか。

「突然姿を消されたので心配いたしましたわ」

心配そうに首傾げられても目が裏切ってるよ、巫女リリアン。

「戦いを知らない女の子が魔王退治なんて、怖くて逃げだしても当たり前だったわね。気づかなくてごめんなさいね」

本当にね。剣士のモニカさん。

「でも、リュウヤの幼馴染なら、リュウヤを支えてあげてほしかったわ」

竜也は私達が支えるのよ。あなたはいらないのって言ったのあなたですよね、魔法使いのミリーさん。




「相変わらず性悪で安心しました。色惚け婆、じゃないや、お姉様方」




ぴしっていう音がした。

ついうっかり口が滑った。

…あれ?全文ダメじゃないか?これ。


「性、悪?」

「色惚け、婆?」


私を追い出した四人のお姉様方の口元がひくついた。

後の二人は大笑い。それをお姉様方が睨みつけるけど無理。効果なし。


「こら、凛。何てこと言うんだ」


女性に失礼だろう。

竜也が嗜めれば、アンジェリカ姫が目を潤ませて、リュウヤ様!って泣きながら抱きついた。盗賊を突き飛ばして。


「わ、わたくし、本当に心配しておりましたのよ?ですのに、あのような…」


うっわ。鳥肌立った。

思わず腕をさすると、踊り子が面白そうに私を見た。何だ。首を傾げれば、何故か竜也の腕を離してこちらにくる。後ずさったのは仕方がない。


「リュウヤ様!いくらリュウヤ様の幼馴染でも、私達の心を踏みにじっていい理由にはなりません!」


酷いです!って踊り子が離れた隙に走って抱きついたリリアンも、出遅れたって顔したモニカもミリーも、突き飛ばされてアンジェリカを睨みつける盗賊も今はどうでもいい。

すみません、姫、とか。後でよく言って聞かせますから、とか言ってる竜也もどうでもいい。何で近づいてくんの?踊り子さん。


踊り子は私の前で足を止めると、ふうん?と言いながら上から下まで眺めて、ついっと綺麗で長い指で顎を掬った。

なんだ。これダーリンがやったらキスされるって思うんだけど、さすがにないだろう。何だ本当に。


「あなた、リュウヤの恋人?」

「ただの幼馴染、ですけど」

「じゃあ、元の世界で恋人いた?」

「いいえ、全然」


むしろ竜也の幼馴染ってだけで男は寄ってきませんでした。

顔が良くてもてる男を幼馴染に持ってるんだ。理想は絶対高い。そう思われてたらしい。

挙句に、あんなに近くにいるんだから、絶対竜也のこと好きなんだろうとかも思われてたらしい。何でだ。


踊り子さんは、へえ?とか言いながら顔を近づけてくる。

うっわ。美人。いや、ダーリンで分かってたけど、美人って近づいても美人だ。ってか、胸!胸当たってる!柔らかい!ちくしょう!やっぱりこれくらいとは言わないけど、もうちょっとほしい!ダーリンにばれないように誰かに他に胸大きくする方法ないか聞いて回ろう!うん!






「でもあなた、男知ってるわよね?」






わあお、爆弾発言。


きゃいきゃいうるさかったハーレムが静かになった。

踊り子は顎を支えた指を動かして私の頬をなぞって首筋をなぞって鎖骨を撫でた。


「大事に大事にされてるわね。とっても愛されてるわ」

「うひゃあ!?」


ボンッと顔が真っ赤になる。

いや、分かってる!知ってた!でも他人から指摘されると凄い恥ずかしい!!

そんな私に踊り子が微笑ましそうに笑うと、曲げていた背中を伸ばして離れた。


「いい人と出会ったのね」

「は、は、い」


何だ。いきなりいいお姉さんになったよ、踊り子さん。

あれか。恋敵認定を外されたからか?

でも向こうのハーレムは嫌な顔してる。体売ったのかみたいな、すっごい見下す顔。嫌悪を浮かべた顔。踊り子さんの顔と全然違うんだけど。

もしかしてさっきの、馬鹿にされてなかったとか?私の被害妄想?


「凛」

「ほえ!?」


ひっくい、ひいいいっくい声で名前呼ばれた。怖っ!

声の方を向けば竜也。何だあの顔。すっごい怖い。何で怒ってんの?


お姉さん方をそっと引き剥がしてこっちにくる竜也に逃げ出したくなった。

でも踊り子さんが後ろから抱きしめてきた。ちょっとほっとした。…いや、これ逃げらんなくない?


「凛」

「な、なに?」

「今まで旅してたんだよな?」

「う、うん」

「本当に?」

「うん」

「一人で?」

「ううん」


カッと竜也の目に鮮烈な光が走った。

怖っ。これすっごい怖っ。魔王が私見て、何だその女はペットかペットとしても役不足な顔と体だなとか言った時マジ切れしたダーリンに比べたら全然怖くないけど、怖い。


なんだなんだ。

お姉様方も戸惑ってる。思わずすり寄った踊り子さんだけが訳知り顔だ。


「男?」

「うん」

「知らない人についていくなって教わっただろ!?」


教わったけど、でも地獄に仏な存在だったんだよ?それにいまや私の旦那様だし。

大体、あの時差し出された手を掴まなかったら私、どうなってたか分かんないのにさ。

ちゃんと置手紙に書いたじゃん。強制されて書きましたみたいな文さ。ならその後だって分かるでしょ?何でいなくなったとか。

読んでないとか?それとも何。言いくるめられた?どっちにしろムッとするんですけど。


「どこの男に何された!?」

「…何怒ってんの?」

「何って、普通怒るだろ!?幼馴染がどこの馬の骨とも知れない男にって聞かされて笑ってられるか!」

「馬の骨え!?うちのダーリンに向かって何その暴言!!」

「ダ、ダーリン!?何言ってんだお前!」

「ダーリンはダーリンでしょーが!」

「その男から逃げてきたんだろーが!」

「はあ!?」


何それ!?逃げてきた!?はあ!?

目を大きく見開くと、違うのか?と竜也が目を見開いた。いや、何であんたが見開くの。


「だから戻ってきたんだろ?俺のとこに」

「戻るって何さ」

「何さって」

「用事があったから会いにきただけなんだけど」

「え…」


何だ、その傷ついた顔。

え、何。

思わず踊り子さんを見上げれば頭を撫でられた。うわあい…じゃない!何でいきなりこんな扱いになったんだ。踊り子さんの中で何が起こった。


「リンちゃん、だったわね」

「へ?あ、はい」

「恋人さんは一緒じゃないのかしら?」

「一緒の予定だったんですけど、土壇場で仕事持ってきた人が足にしがみついて離れなくて」


顔蹴られても離さなかった。

血と涙と鼻水が凄かった。

ダーリンはドン引きしてた。私もした。


に~が~し~ま~せ~ん~よ~~~ってひっくい声震わせながら、イヒヒヒヒヒって笑ってたのが怖くて、先行くね!ってダーリン置いてきました。

待て!こら!裏切り者!!って声が聞こえたのはきっと気のせい。絶対気のせい。

……………後でまたお仕置きされる。


「あら?旅してたんでしょう?仕事何してるの?」

「今は彼の故郷に定住してます。仕事は主に書類仕事です。たまに現場出るけど」

「へえ。忙しいのね」

「いや、そうでもない」


仕事大好きな側近がいるから、こっそりそっちに仕事回してるから、一国の王としては暇な方だと思う。

継ぎたくないのに継いだんだから、必要最低限だけ働く。優先は俺の時間と凛の時間。とダーリンはのたまいました。私も賛成しました。

いや、だって一年も二人っきりで旅暮らししてたんだよ!?二人っきりの時間とか、自由時間減るの嫌。


「凛」

「なにさ」

「お前、その男に騙されてるんじゃないのか?男に免疫ないだろ」

「お・ま・え・の・せ・い・だ・っ」


どごっと腹を蹴ってやった。

ぐほっと体を折り曲げてうずくまった竜也に、お姉様方が駆け寄る。


「リュウヤ様!大丈夫ですか!?」

「ちょっとあんた!リュウヤに何すんのよ!!」

「野蛮ですわ!」

「暴力に訴えるなんて最低ね」

「それでも幼馴染なの!?」


うっさい色惚け婆。

思わず睨みつければ誰もが蒼白になった。

あ、まずい。対魔王モード入ってた。


対魔王モード。それはあれだ。思い出すだけで凶悪な気持ちになる。

だってあの魔王、人のこと貶したくせに、形勢不利になった途端、私に妾にしてやるとか。可愛がってやるとか。発禁発言とかしてきたんだよ!?だからこっちにつけっていってきたんだよ!?気持ち悪っ!思わず気絶しそうになったのは仕方ないと思う。


でもそれがただでさえマジ切れしてたダーリンをさらにキレさせて。魔王どころか大魔王降臨って感じだった。ダーリンは一人で世界を滅亡させられる。うん。

私も気絶しそうな心境を過ぎたらプチッと何かがキレて。ダーリンと一緒に大暴れした。

視線だけでも人を殺せますね!よっ、凶悪夫婦!ってその場から逃げ遅れた魔族が言ってた。


「言っとくけど、騙されてないから」

「そ、んな、こと、わ、かる、かよっ」

「うるさいなあ、もう。いいじゃん、ようやく私にも春がきたんだから」

「よくない!」

「好きな人と一緒になって何が悪い!」

「はしたないこと言うな!」

「はしたない!?」


結婚したことがはしたない!?


「そんなこと大っぴらに言うようなヤツじゃなかっただろ!?」

「意味わかんない!」

「やっぱりつきあう男が悪いんだ!別れろ!戻ってこい!」

「はああ!?ふざけんな!誰が別れるか!!」


何言ってんのこいつ!

わけ分かんないこいつ!






「大体お前は俺の幼馴染だろ!?何でそんな男の側にいるんだよ!!」






頭湧いてんの!?こいつ!!

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