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時代遅れの戦闘員  作者: 二項定理
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ACT・4 貧乏暇なしなキツネ

えぇ、ストックが切れました。更新速度……下がるかも?





 貧乏暇なし、という言葉がある。

 貧乏暇無しとは、生活に余裕がないために必死に働かなければならず、仕事がなくて暇がないという日はないという意味を持つことわざである。


 つまり、たくさん働いているのでお金があるように見えて、実は働かないと人並みの生活を送れないので已む無くそうせざるをえないということだ。



 今月の預金通帳を見て一言。


「……もっと働かないと拙い」


 悪の戦闘員と塾の給料だけでは足りなくなってきた。その他にもいくつかバイトを掛け持っているのだが、仕事探さないと。





ACT・4 貧乏暇なしなキツネ






 悪の組織にも一応、定時がある。それが17時。この時間になるとかなりの戦闘員が帰宅するのだ。


 我が第八実働部隊もその例に漏れず。


「さーて、帰るか」


「……私は今日、用事がある」


「あっ、お疲れ様です――ってまだミーティングは終わってないんですけど」


 17時の鐘がなり、トラさんとコウモリさんはそそくさと帰ろうとする。……まだミーティング途中だというのに。因みにタカさんは今日はまだ来ていません。


「ウルセ―な。どうせ、実の無いダラダラとした話し合いなんだろ? 無駄だよ。オレはゲーセンに行く」


「……面倒くさい」



 口々にそう言って出て行ってしまいました。それを止められないチキンな俺。

 あぁ……胃に穴が開きそうだ。

 思わずorzのポーズをとってしまう。まだまだ、彼女達との距離は遠いし、生活はピンチだし、どうしたら良いんだ?!


「オホホホホ! 私がやって参りましたわよ。さぁ、ものども、ひれ伏しな――ってもうひれ伏していましたわ。ミジンコが」



 高笑いと同時にタカさんがやってきた。




「ふん。もう定時でミジンコ以外は帰ってしまったと……。それで悲しくなって打ちひしがれていた、そういう訳ですわね?」


「はい……」


「かける言葉もございませんわ。呆れてものも言えません」


 グサッとささるタカさんの言葉。俺に100のダメージ。


「そもそも、私達は何故あなたが上司なのか理解できていませんの」


 タカさんの追撃。俺に150のダメージ。


「あなた、いくら積んでここに入りましたの?」


 タカさんの止めの一撃。俺に999のダメージ。

 俺は死んでしまった。



 死は誰にでも等しく訪れる。

 人間であっても、動物であっても。

 例え主人公だったとしても……。



 おぉ、アツシよ死んでしまうとは情けない!



「――って、まだ生きてるわい!」


「キャッ!」


「あ、スミマセン」


 いきなり声を上げたからか、タカさんは驚いて尻餅をついてしまったようだ。涙目でこちらを睨むタカさん。

……可愛い、じゃなくて!


「あの? タカさん? 変身して殴ろうとするのは駄目ですよ……? 死にますからね?」


「バカー―ッッ!!」


「ブホォァッッ」


 見事なストレートだぜ……。

 俺は窓ガラスをぶち破って外へと殴り飛ばされた。




「そういえば、何でタカさんは今日遅れたのですか?」


 固いコンクリートの地面と激しいキスをした後、血まみれになりながら部屋に戻ると、タカさんはどこからともなく取り出したティーカップに紅茶を注いでいた。タカさんは俺を一回チラッとだけ見たが直ぐに興味を失ったようで目を逸らした。……心配の一つくらいしてくれても良いのに。


「あら? 気になりまして?」


 優雅に足を組みソファーに腰掛けるタカさん。ここはオンボロアパートだからギャップが激しい。


「一応、隊長だからね。隊員の事情は把握しておかないと」


 苦笑いしながら、タンスから医療セットを取り出して、傷口を消毒する。イテテ、染みる。


「まぁ、たいした理由はございませんわ。ただ、専属の執事が裁判をおこしそうになりましてね? それを宥めていただけですわ」


 何の問題も無いと言わんばかりの態度で紅茶を啜るタカさん。


「へぇ、それは大変でしたね――って、裁判?!」


 危ねぇ、普通に受け流しそうだった。一体何をしでかしやがったんだ、このおぜう様は。


「もう、煩いですわね。もう少し優雅になれないのかしら?」


 誰の所為だ、誰の。

 とは言えずに(言ったら確実に殺られる)スミマセン、と一言謝った。


「内の十年仕えていた執事がですね、調き――コホン、お仕置き中に、もうお嬢様には耐えられない、訴えてやるーっ! などと叫びだしましてね」


 調教?! 物騒な! というか、その執事さんには尊敬する。恐らく、十年間理不尽なことに耐えてきたのだろうから。



「全く、我が家に仕えられることがどれだけ光栄なことか、十年もいて分からなかったのでしょうか? とりあえず、あのまま行くと裁判を起こして我が家に泥を塗りそうだったので、社会的に殺し――宥めてきたんです。それで遅れましたわ」


 えっ? 社会的に殺した……? まさか揉み消したんですか? とはやっぱり聞けないので、ハハハ、大変でしたねーと棒読みで言った。


「まったく、困りましたわ。彼は意外と有能でしたのに。このままでは私の送迎やスケジュール管理をしてくれる奴れ――執事がいませんわ」


 タカさんは、少し困り顔で頬に手を添えた。もう彼女の発言には何も突っ込むものか。


「どうしたものかしら――って、あら?」


 タカさんは俺と視線を合わせると何やら思いついたような顔をする。

 嫌な予感しかしないのですけど。


「あなた、車の免許持っていらしたわよね?」


「はい、持ってますが」


 昔は戦闘員になるために必須なものだったし。



「なら、あなた私の執事になりませんこと?」


「結構です」


 チキンな俺にしてはよくやったと自分を誉めてあげたいくらいの速さで断る。

 先ほどの話を聞いて執事になる、なんて馬鹿な奴はいないだろう。


「あら、お給金に色目はつけましてよ?」


 そういって、俺に差し出された紙には……ゼロが沢山書いてあった。


「なっ、こんなに!」


「フフフ? どうされます?」


「ぐぬぬ……」


 これは、金欠の俺にとって願ったり叶ったりの職場だ。バイトを止めてでも余裕でおつりがくるくらいの給料は魅力的だけど、先ほどの話を聞いている限りでは、人間として扱っているのか甚だ疑問だ。


 俺の自尊心>お金


「それでも――」


「あら断るのですか?」


「いえ、受けさせていただきます」


 俺の自尊心<お金+俺の命


 タカさん、その爪で脅すのは卑怯ですって。


 結局、俺はここの職場との公私は使い分けることを条件に、タカさんの執事を受けることになった。


 ストレスで禿げなければ良いけど。(もう、胃に関しては諦めかけている)


副題 キツネとお嬢様


以下、蛇足。


タカさん。天性のお嬢様キャラです。作者の一番のお気に入りだったりします。

不良系・寡黙系・お嬢様系。どこぞのギャルゲだよ。皆さんだったらどのタイプから攻略しますか? 私はやはりお嬢様系ですかね。


これで、一応三人娘のフラグの種を植え終わりました。それにしても……タカさん、書いていて楽しい。筆が進む進む。


主人公の攻略度。


トラさん0% コウモリさん0% タカさん5% 普通に話せるというのは大きなアドバンテージではないでしょうか?


さてさて、次回から物語が動き始めます。温かく見守ってやってください。

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