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時代遅れの戦闘員  作者: 二項定理
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ACT・1 適材適所なキツネ

序盤ということで、先ずは主要メンバーを登場させてみました。

 「適材適所」という言葉がある。


 人の能力・特性などを正しく評価して、ふさわしい地位・仕事につけること、という意味だ。


 頭がよくて、身体が弱い人は肉体労働などできないし、身体が強くて、頭が悪い人が研究職についてもその人の真価が発揮されない。

 つまり、その人にはその人に見合った地位や仕事につけないと、その人の真価が発揮されないのだ。



「だから、俺にはこの部隊の隊長なんか務まらんっての」


 俺は、自分の与えられた役職に対し、もう何度目か分からないため息を吐いた。





ACT・1 適材適所なキツネ





 幹部兼第八実働部隊隊長。


 これが、俺の組織での肩書きだ。


 俺の所属するこの「青空を愛でる会」には二つの職場がある。

 一つは、デスクワーク中心の「事務」

 もう一つは、勢力拡大や資金確保のために働く「実働隊」

 戦闘が苦手な者は事務で働くし、戦うのが好きな者は実働隊で働く。俺が入団した当初からこれは変わらない筈だ。


 筈なのだが……。

 三ヶ月ほど前、春の人事異動のとき、今まで事務に居た俺が、何の因果か実働隊の隊長に任命されちまった。


「もっと、適任がいるでしょうが」


 切実に、そう思う。

 改造手術怪人である俺とベルト怪人には、もの凄い、それこそ月とすっぽん位の戦闘差があるのに、何でわざわざ俺みたいな旧型にこんな役職を押し付けるのだろうか。

 事実、実働部隊には改造手術怪人は今となっては俺一人しかいない。

 それなのに上層部は何故、俺をここに異動させたのか気になる。まぁ、恐らくは厄介事を俺に押し付けたいからだろうな。


……と、まぁ愚痴は置いておくとしても。


「ハッ――。流石はコウモリってとこか。過ぎたことをネチネチと……。陰険だな、オイ」


「……貴方は、大雑把過ぎる。この前の作戦のときもその所為で失敗した」


「あんだと? 喧嘩売ってんのか? オレに」


「オホホホホ! 全く、下賎の者同士の争いはいつ見ても醜いですわね」


 俺の目の前で火花を散らしながら激しく口論する女性三人。それぞれタイプは違うが、十人いたら全員が美人と答える程の容姿の持ち主だ。

 

 彼女らは第八部隊の戦闘員、つまり俺の部下にあたる。


「あ……すいません。落ち着いて貰えませんかね……?」


「「「黙ってろ!」」」


「すみません……」


 一喝されました。あの……立場上、俺が上司なのですが……?


「だいたい、何でテメーがまだいんだよ? さっさと辞めちまえよ愚図が」


「……給料泥棒」


「まったく……何故私がこんなゴミくずにも劣る下等生物と同じ空気を吸わなければならないのでしょうか」


 口撃の矛先が俺に飛んできました。

……もう、挫けそうです。


 


 第八実働部隊には別名がある。

「一ヶ月部隊」。ここに任命された隊長が一ヶ月かそれに満たない期間で辞任してしまうことから名づけられた。

 その原因はこの三人の美女達にあるという。


 口が悪く、一人称がオレな赤髪ショートで赤目の勝気な美女は「トラ」さん。


 眼鏡を掛けて、もの静かな雰囲気を醸し出している青髪のセミロングで蒼目の美女が「コウモリ」さん。


 お嬢様口調で、金髪ツインテールの美女は「タカ」さん。


 ちなみに、これは彼女達の本名ではない。俺は彼女たちから名前を呼ぶ許可を貰ってない(一回名前で呼んだところ半殺しにされました)ので便宜上そう呼んでいる。


 この三人はもの凄く仲が悪い。

 手元にある彼女達の資料によると、この三人は幼稚園の頃からの幼馴染みで幼稚園時代から仲が悪いらしい。



 幼稚園の頃、人形の取り合いで乱闘。

 小学生の頃、同じ男の子を好きになって、その男の子の取り合いになって乱闘騒ぎを起こす。

 中学生の頃、文化祭の劇で主役の座を巡り乱闘。

 高校の頃、またもや同じ異性を好きになり乱闘。


……どんだけ、乱闘してんだよ。ざっと見ただけでも四回。


 そして、今。

 誰が怪人として一番優秀かで乱闘一歩手前の状態。


 上層部もこんな資料あるんだったら、この三人を一緒の部隊にさせるなよ……。


 と、思ったらその理由が下に書いてあった。

 なになに……。他の部隊に入れたところ問題ばかり起こし、部隊の指揮に関わるのでこの部隊に入れた?


 なるほど……問題児をこの部隊に集めたわけね。


 一人にしても問題起こすんだったら、一くくりにしちまえ! って魂胆ですね。分かります。解雇されないのは彼女達が十年に一人くらいの優秀な戦闘員だからか。



 で、一くくりに部隊に入れたはいいがそうすると、部隊長というものが必要になってくる。

 この三人から部隊長を選ぶとなると、無駄な乱闘が置きかねない。


 だから外部から部隊長を入れる事になったのだが、その部隊長は一ヶ月以内にストレスで辞めてしまう。これは組織にとって目を瞑っていられない状況だ。


 そこで、恐らく俺をこの部隊長に任命したのだろう。

 改造手術の俺ならば、辞めても組織として痛くも痒くもないし、何よりある理由で俺がこの組織を辞められない事を利用して。


「はぁ……」


「ため息を吐かないで下さいます? 目障りですわ」


 こ……このッ! 殺してくれようか?!

現実で襲い掛かっても返り討ちにされているのは目に見えて分かっているので脳内で。

はい、そこチキンとか言わない!


「あー、もう頭にきた! テメーら、表に出ろや!」


「……私も、貴方たちとは一回決着つけたいと思ってた」


「そろそろ、誰が一番なのかを思い知ったほうがよろしくてよ?」


 あの……皆さん、半分変身して、殺気出すの止めてください。窓ガラスにヒビ入って、この部屋もギシギシと危ない音を出してますよ?

 

 俺の思いは伝わらず、彼女達は扉を蹴っ飛ばして外に出て行った。


 あぁ、また大家さんに怒られる……。


 胃が痛いです……。




副題 キツネと第八実働部隊


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