第二十二話 外れ値
オオクリ村へ帰る途中で野宿をしている時のことだった。
「……ベクタ。ベクタ。起きてください。ベクタ」
「んぁ……?あっ、シン様」
俺はまたしても暗い空間の中で、シン様と二人きりになっていた。
「ベクタ。嬉しいお知らせです。貴方の妹は、無事に邪気から逃れ、新たな危機からも逃れました。貴方は死の運命を見事に歪めることができたのです。オオクリ村に寄ったのは大正解でしたね」
「おお!マジですか!やったー!」
「オオクリ村に寄ったことで、メリアさんが邪気に殺される未来は消え、貴方がベルディアとの戦いでランガルを使ったことで、メリアさんがベルディアに殺される未来は消えました。もう安心して大丈夫ですよ」
「良かった……」
「ところで、今日倒したベルディアという者は魔王軍幹部なんですけど……知ってましたか?」
「聞きましたよ、本人の口から」
「本人の口から?」
「ええ、本人の口から」
「そ、そうですか……。それでですね、ベクタさん。一つ、お願いがありまして」
「魔王軍を滅ぼしてくれ……とか?」
「あら、まさか言い当てられてしまうなんて」
「前世のカン、ですかね」
「……貴方は前世の記憶を持つ、珍しい人間です。いわば、超能力者なんです。そして超能力者は、この世界において考慮されていない存在なんですよ。ランガルも、この世界には本来あり得ない存在、あり得ない力なんです」
「なるほど、俺はバグだと」
確かに、ランガル無しではこれまでの危機は乗り越えられなかっただろう。
「言ってしまえばそういうことです。……魔王は非常に強大です。この世界の外から突如として現れた、食物連鎖から治安から何から何までを乱す存在。……そして貴方は、最も魔王討伐に近い存在……どうか、お願いしたいのです」
「外来種には外来種をぶつけるってことですね」
「……はい。勿論、報酬は約束します。例えば……貴方の前世について、その世界のことも含めて、全部教える……とか」
「良いですね、それ。ランガルの存在を思い出してから、俺が俺になる前の俺ってどんな感じだったんだろうって、気になってたんです」
「では、引き受けて頂けるということでよろしいですか?」
「まあ……俺は良いんですけど、今は仲間もいますから。パーティメンバーに相談してから決めます」
「分かりました。また決まったっぽくなったら声かけますね」
「そんな感じでお願いします」
そこでシン様との交信は途切れ、俺は目を覚ました。
そして翌日。
オオクリ村へ戻った俺達は、エルキアさんとメルさんに、山に住まう魔王軍幹部を倒したと報告を済ませる。
そして俺達四人の身体に邪気が入っていないことを確認した後、六人で礼拝堂に座り、話を始めた。
「ありがとうございます。確かに、邪気は消えていますね。とても助かりました」
「まさかオオクリ村が狙われてたなんてねー。ベクタさん達が来てくれていなかったら、私達、死んじゃってたかも」
「そうですね。この度は、本当にありがとうございました。どうか、今晩はここで夕食を食べていってください」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「じゃあ、腕によりをかけて準備しなきゃね!私、今から食材買いに行ってくるよ!」
「よろしくお願いします、メルちゃん」
どうやら、料理をするのはメルさんらしい。
俺達はメルさんを待っている間、エルキアさんと、これまでの冒険についての話をしていた。
「なるほど……皆さん、今まで大変だったんですね」
「まあ……色々ありましたよね」
「私、いつも移動は馬車で……他の教会に出張するくらいしか無かったので、冒険らしい冒険はしたことが無かったんです。旅の話を聞くと、心が躍りますね」
「楽しんでもらえたなら良かったです」
「何だかんだ、ベクタの巨大なゴーレムには助けてもらってばかりね」
「そんなこと無いよ。皆のおかげで動かしやすかったし、フェルドールの時なんか、逆に俺が助けてもらいっぱなしだったし」
「お兄ちゃんのゴーレム、すごい珍しい形してるよね」
「妾を打ち破ったゴーレムじゃ。味方になるとここまで心強いもなのじゃな」
「ランガルは、俺が憧れたロボットだからね」
「ろぼっと……?って、何じゃ?」
「ゴーレムみたいなものだよ」
「そういう言葉があるんじゃな」
「うん」
「ベクタさん、ゴーレム使いなんでしたよね」
「そうです。一応、これでも元Sランクパーティだったんですよ」
「お兄ちゃん、とっても強いんですよ!ね、お兄ちゃん!」
「ふふっ。メリアさんはお兄さんのことが大好きなのですね」
「当然です!昔から、難病を患っていた私のためにエリクサーを探してくれた……命の恩人ですから!そうじゃなくても、大好きですけど!」
「メリアさんは、お兄さんのどんなところが好きなんですか?」
「優しくて、仲間想いなところ!」
「まあ、素敵なお兄さんですね。ね、ベクタさん?」
「なんか照れるなあ」
「あと顔も好き!」
「もっと照れるなあ」
「エルキアちゃーん!ただいま!食材買ってきたよ!」
俺の顔が真っ赤になる前に、ここでメルさんが食材を入れたカゴを持って帰ってきた。
「おかえり、メルちゃん」
「じゃあ、お料理始めるね!もう少し待っててー!」
そして、俺達はメルさんがご飯を作っている間、再び話を始めた。
それから全員で食卓を囲み、メルさんが作ってくれたキノコご飯と焼き魚に舌鼓を打ち、その晩は修道院に泊まることになった。
翌日。
俺達はエルキアさんとメルさんに見送られながら、オオクリ村を出る。
出発前に買っておいたお米は、これからの旅路で役に立つことだろう。
次に向かう先は、ここからさらに北部に位置する「フェズリオ町」。
名物の「フェズリオステーキ」をメリアに食べさせるため、俺達はフェズリオ村を目指して、歩みを進めるのであった。




