光る爪
過疎の村「黒羽」は静寂に包まれていた。しかし、この静けさは不気味な影を孕んでいた。最近、この村では人々が次々と変死するという恐ろしい事件が起こっていた。村人たちはしばらくの間、笑顔を絶やし、耳を澄ませて夜の静けさを恐れ続けていた。
最初に見つかったのは、村の端っこに住む老女だった。彼女の身体は引っかかれ、一部が破損しており、まるで何かに捕まえられたような有様だった。「熊の仕業だろう」と村人たちは噂したが、その後も同様の事件が続く中、熊はこの地域では目撃されたことがなかった。
警部補の早野圭介は、この奇怪な事件の捜査に乗り出した。村を訪れるやいなや、彼の目に飛び込んできたのは、黒猫だった。何度も言われていることだが、この猫は問題を抱えた村の象徴のようだった。
「またあの猫が現れたな」と、村人のひとりが早野に耳打ちした。早野はこの村に伝わる昔話を探るため、郷土史研究家の田中を訪ねた。田中は、かつてこの村で大量の猫が殺処分された歴史を語った。村人たちは猫を忌避し、無惨な運命を背負わせたという言い伝えがあったのだ。
その話を聞いた早野は、もしかすると猫の霊が何かを求めているのではないかと考え始めた。悲しい悲劇が繰り返されるこの村に、供養が必要なのかもしれないと強く感じた。早野は早速、村人たちを集め、猫のための小さな供養祭を開くことにした。
夕暮れ時、黒木の集落の真ん中に小さな祭壇を立て、多くの人の手が協力して供養の準備を進めた。祭壇には、猫のための花やお菓子、そして黒猫の形をした飾りが並べられた。村人たちは集まり、静かな祈りを捧げ始めた。その瞬間、空に浮かぶ月が不思議な光を放ち、まるで猫たちの霊が天から微笑んでいるかのようだった。
供養祭が終わると、村の空気が穏やかに変わり、まるで悪霊が取り払われたような安心感が漂った。その後、村での変死事件は途絶え、黒猫の姿を見ることも少なくなった。
早野は、村が再び穏やかになることができた理由を理解した。過去を抱えた村とその住人たちが、愛情を持って猫たちを送り出したからこそ、平和が戻ったのだ。この小さな村「黒羽」は、静けさの中にある温もりを取り戻し、再び笑顔が戻る場所となったのである。




