表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/35

31 解呪


「メル……いいか?」

ルートヴィヒがメルリーシュの頬に手の甲をすべらせてささやいた。

やっと聞きなれたルートヴィヒの本来の声は耳元でささやかれるだけでゾクゾクする。

まばたきで落としても瞳にいっぱいたまる涙でルートヴィヒの美しい碧い瞳が見えない。


いいに決まってる。

愛するルートヴィヒに求められて、断る理由がどこにあるだろうか。


コクンと頷くと同時にルートヴィヒが覆い被さり、優しく唇が合わさる。

ルートヴィヒは緊張でカチコチになり瀕死の小動物を思わせるメルリーシュが、たまらなく愛しかった。


切ない吐息、潤んだ瞳、恥じらい必死にひきむすばれる唇、寝台に広がる緑金のフワフワの髪。


どれもこれも、メルリーシュの全てのシーンを切りとって壁に敷き詰めたいほどに。


これほどの想いを抱く存在に出会えた喜びに、ルートヴィヒは打ち震えた。


メルリーシュもまた、自身のルートヴィヒへの想いの大きさに耐えきれず涙が止まらなかった。

ルートヴィヒの手が、唇が、宝物に触れるように自分に触れる。

その度に、幸福感が全身を駆け巡った。

まるで、楽園に駆け上がったかのような幸福感。

それは母が与えてくれた愛という名の祝福の、枯渇した中身を一気に埋め尽くし、溢れ出すほどだった。


「メル……私のメルリーシュ……愛してる…。」

ルートヴィヒの言葉に、虹色の光がメルリーシュをブワッと包んだ。


「…っこれは…!?」

パラパラと剥がれ落ちるように、両足の呪詛が消えていく。

()()()()()()呪詛はシーツにたどり着く前に湯気が蒸発するように消えた。

あとには、メルリーシュの白い足。

「メル……解呪だ……。」

抱き寄せたメルリーシュに口づけ、顔をのぞきこんだら呆然とした緑の瞳。

ルートヴィヒはメルの耳元に顔を近づけ、ささやいた。

「愛しいメル。呪いが解けたよ。」

ルートヴィヒの目から涙があふれ、メルリーシュの頬の上にポタポタと落ちるとメルリーシュの瞳に光が宿り、口もとをほころばせた


「ずっと…長いこと…この祝福を恨んでいました…。これがあるから死ねない、これがあるから余計に辛いと…。」

「…うん。」

メルリーシュの苦しみに寄り添うように、ルートヴィヒは黙ってメルリーシュを抱き締めた。

「けれど…今日…初めて…この祝福に感謝します…。ルー様の呪いを…解くことができた…。こうして…生きて…愛しあうことが…。」

「ああ…。私も…心から君の母君に感謝する。私の宝がこうして無事に、命を取り戻したことに…。」

ルートヴィヒはメルリーシュに口づけた。

するとメルリーシュの全身から力が抜け、ルートヴィヒの腕の中ですぅっと眠りに入った。

永遠に見ていたいほどに愛しい、満たされたその表情を眺めているうちに、いつの間にか部屋に朝日が射し込んできたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ