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21 アギレラ王と王女の末路


そっとメルリーシュに自身の白いマントをかけ、ルートヴィヒは立ち上がった。


伸ばした手で四つん這いになって逃げようとするブリジットの髪をつかみ、そのまま持ち上げる。

ブチブチと髪が抜けた。


「ぎゃぁああ!!痛い!!離してっ!!離しなさいよ!この恩知らず!!」

ジタバタともがき、髪をつかむ手を必死に引っ掻く。

ルートヴィヒの手の甲にいくつも切り傷ができるが、ルートヴィヒは全く動じない。


「貴様だけは…絶対に…許さん………」


ルートヴィヒの顔は呪詛があった時より遥かに魔王らしく見える。

食い縛った歯を剥き出しにし、光る目でブリジットを睨み付けた。

ジュゥゥゥと音をたて、ブリジットの顔の皮膚がやけただれていく。


「ぎゃあああ!!やめて!!やめてぇえええ!!」

「貴様ぁあ!ブリジットを離せ!!」


アギレラ王が腰の剣に手をかけようとすると、鋳造中の鉄のように剣が溶けて流れ出した。

燃える鉄が、アギレラ王の衣服を燃やす。


「ぎゃあああ!!熱い!!」


アギレラ王は地面に転がり必死で火を消した。

顔が焼けただれたブリジットを、ルートヴィヒは蹴り倒した。


「あ……いた…ぃ…いた…い…。」

「…ただで…死ねると…思うなよ……!!」

「ぎぁあああ!!」

肉が真っ赤にめくれあがった顔を足で踏みつけるとブリジットが殺虫剤をかけられた虫のようにのたうち回った。


震えながら壁にへばりつくアギレラの従者のもとへ、ノルベルトが歩み寄った。

穏和な王太子は今だかつて誰もみたことがないほど怒りの表情だった。

彼もまた『魔王』と呼ばれてもおかしくないほどの恐ろしい顔だ。


「ひ……。」

「お前、国に戻ったら、ここで見たことを事実と一切(たが)えず、お前たちの国の民に報告しろ。お前たちの愚かな国王が、裁定者の逆鱗に触れて、お前たちの国が滅びたとな。まだ国境沿いと王都のあたりが灰になったぐらいだろう。生き残った民は多くいるはずだ。」

「は…ひ…。」

「いいか?事実を少しでも歪曲すれば……。」

ノルベルトは従者の首に、呪詛を刻んだ。

「ひ…ぐ…やめ…」

「貴様は喉が裂けて死ぬ。私が課したこの義務を怠ってもな。」

「ひ…ひぃ…そんな……お助け…」

「わかったら行け!!」

「はいぃいいい!!」

転げるように、アギレラの生き残り従者は出て行った。


バルシュミーデ王が恐怖にわななくアギレラ王の前に立った。

「バルシュミーデ…王…頼む…!助けてくれ…!」

「この者たちをつまみ出せ。地下牢で好きなようにいたぶって構わん。」

「バルシュミーデ王…!」

「ひ…ひぃい!!」

「助けて!痛いぃ!死んじゃう!助けてぇ!!」


ザイードが国王の指示に頷き、近衛兵たちに号令を出した。

痛みで喚き散らすブリジットと泣き叫ぶアギレラ王は近衛兵たちに部屋の外に乱暴に引きずり出された。



ルートヴィヒがメルリーシュのそばに、べしゃりと崩れ落ちた。



音もなく王妃が動いた。


その場の人々に言葉もなく手で招き、来賓客たちを破壊されていない別室へと誘導する。


あとに残ったルートヴィヒにかけられる言葉など、誰も持ち合わせていなかったからだ。





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