表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/18

ふたりだけの選択

キスを交わしたあの日から、大地とフィーネの間に流れる時間は少し変わったように感じられた。フィーネの笑顔は以前よりも少しだけ柔らかく、そして、大地はその笑顔を見守ることに一層力を入れるようになった。


だが、どれほど笑っていても、心の奥底に潜む現実は変わらない。フィーネがエルフ界に帰らなければならないという事実は、二人にとって避けられない試練だった。


そしてその日、フィーネはついに決断を下すべく、大地に言った。


「大地、私、少しだけ考えたんだ」


「考えた?」


大地はフィーネの表情を見つめながら、心の中で何か嫌な予感がした。


「うん。私、エルフ界に帰ることを選ぶべきか、それともあなたと一緒にここにいることを選ぶべきか、ずっと迷っていた。でも、もう一度言うけれど、私がここにいることで、大地にも負担をかけてしまっているんだよね」


「そんなことない。俺は、お前と一緒にいることが一番大切だ」


フィーネの言葉に、大地はすぐに答えた。その瞬間、フィーネは少しだけ顔を赤らめ、そして続けた。


「でも、エルフ界では私が帰るのを待っている人たちがいる。私はもう長くいられないし、帰らなければならない。それに、私が人間界にいることが、もし続いたら、あなたが……」


「俺が死ぬって言いたいのか?」


大地がフィーネの言葉を遮った。そう、フィーネが言おうとしていたのは、エルフと人間の間に横たわる、どうしようもない差だった。


「……うん」


フィーネは小さくうなずき、目を伏せた。


「エルフと人間の恋愛は、最終的にあなたが先に老いて死ぬことになる。それが、私たちには避けられない運命なんだ。だから、私がここにいる限り、大地には辛い思いをさせてしまうと思う」


大地はそれを聞いて、何も言えなくなった。フィーネの言っていることは正しい。エルフは長命で、人間よりも遥かに長く生きる。そのため、もし二人が恋に落ちたとしても、最終的に先に死ぬのは大地の方だ。そう思うと心が痛んだ。


「フィーネ、でも……」


「だから、大地。私がエルフ界に帰ることを、受け入れてほしい。あなたのことは、忘れない。私の人生の中で、あなたと過ごした時間は一番大切なものだから」


フィーネは涙を浮かべながら、大地を見つめた。


大地はその言葉を聞いて、深い息をついた。そして、決心したように口を開いた。


「フィーネ……お前がどんな選択をしても、俺はお前を応援する。でも、俺はお前が帰ることを、心から納得して受け入れることができない。だから、俺がエルフ界に行く方法を考えてみるよ」


フィーネは驚き、目を見開いた。


「え……大地、君が?」


「そうだ。お前がエルフ界に帰るなら、俺も行く。なんとか方法を探して、エルフ界に行ってお前と一緒に過ごすんだ」


その言葉を聞いて、フィーネはしばらく言葉を失った。そして、少しだけ顔を赤らめながら、震える声で言った。


「でも、どうやって……?」


「それはまだわからない。でも、お前と一緒にいるために、何でもするよ」


フィーネはしばらく黙っていたが、やがてふっと笑顔を見せた。


「大地、ありがとう。あなたがそんな風に言ってくれて、すごく嬉しい」


そして二人は、また何も言わずにしばらくの間、静かな時間を共有した。


大地は心の中で、これからの未来を少しずつ描いていた。どんなに困難であろうと、フィーネと一緒にいられる方法を見つけることを誓った。


「俺たち、どんな未来が待っていようと、乗り越えられる気がする」


その言葉に、フィーネは頷きながら、もう一度強く手を握った。


「うん。私たち、きっと大丈夫だよ」


そして、二人の未来に向かって、少しずつ歩みを進めていくのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ