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想いの行方

フィーネと大地の間には、数えきれないほどの想いが交錯していた。彼女の涙を見たことで、大地の中でもっと強く「一緒にいたい」という気持ちが芽生えていた。しかし、その気持ちをどう表現すべきか、大地は迷い続けていた。


その日の午後、大地は大学の授業が終わった後、フィーネを探しに家へ向かった。先週から部屋に閉じこもりがちだったフィーネは、未だに外に出ていないようだった。大地は心配しながら、自分のアパートのドアをノックした。


「フィーネ、開けてくれよ」


だが、応答はない。大地はしばらくノックし続けたが、それでも返事はなかった。ふと、大地は一つの決断をする。


――今、何かをしなければ、何も変わらない――


心を決めた大地は、ドアを開けると、部屋の中に足を踏み入れた。


フィーネは、ベッドの上でうつむき加減に座っていた。顔を上げた瞬間、彼女の目にはまだ涙が浮かんでいた。


「フィーネ、俺、もう一度話をしたい」


「話……?」


「うん、俺たち、ちゃんと向き合わないと、いけない気がして」


大地は、真剣な眼差しでフィーネを見つめた。フィーネはしばらく黙っていたが、やがてゆっくりと頷いた。


「余も、今は混乱している。でも、大地の言う通りだと思う。私たち、これからどうしたいのか、しっかりと考えなければ」


大地は隣に座り、彼女の手を取った。


「俺たち、どうしても一緒にいたい。でも、君が帰るべきだってわかってるし、それがどんなに辛くても」


「でも、私は……もう一度考え直したい。帰るべきなのか、そうじゃないのか。エルフ界のことも大事だけれど、私がここにいる理由も、もっとしっかりと見つけたいんだ」


「フィーネ……」


大地は言葉を飲み込んだ。確かに、エルフ界への帰還は避けられない現実だ。しかし、彼女が今どれほど、自分にとって大切なのか、それを伝えなければならないと感じた。


「フィーネ、俺も同じだ。君がエルフ界に帰るとき、俺は一人になってしまう。でも、もしそれが君にとって必要なら、僕は君を応援する」


フィーネは静かに大地の目を見つめ、しばらく黙っていた。その後、ゆっくりと話し始めた。


「私がもし、大地のそばにいることで、君を不幸にしてしまうのなら、それは嫌だ。だけど、私は君と一緒にいたいと思っている。エルフ界に帰ることが運命だとしても、少なくとも今は……今は、大地と一緒にいたい」


その言葉に、大地は胸が締め付けられるような感覚に囚われた。


「僕も……フィーネを失いたくない」


ふたりの気持ちは、確かに交わっている。けれど、現実はそれを許してくれるのだろうか。


その時、ふたりの間に静かな空気が流れた。そして、大地は、フィーネの手を握りしめながら、決意を新たにした。


「フィーネ、俺は君のことを、何があっても支える。君がエルフ界に帰る時が来たとしても、君が本当に帰りたいと思う時まで、僕は君を支え続ける」


フィーネは、大地の言葉をじっと聞いていた。そして、最後に微笑んだ。


「ありがとう、大地。私も、あなたのことを大切に思っている」


その言葉に、大地は胸が熱くなるのを感じた。


ふたりは、静かに見つめ合い、無言で手を繋ぎ続けた。それは言葉以上の約束のようで、二人の心を確かに繋いだ瞬間だった。


――そして、その時、大地は決心を固めた。フィーネが帰る時まで、彼女を支え、共に過ごす。それがどれほどの困難であっても、彼とフィーネの未来に向かって、歩き続けると――


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