第1章第6話 秘書って頭良さそうな感じするよね
「おい、起きろ。起きろってば。おい!」
ん~?うるさいなあ、誰だよこんな朝早くに。今日は学校無いだろう。もうちょっと遅く寝てもいいじゃないか。
「ほらリョウ!王太子様がお呼びになっているんだぞ!」
そうだ。俺、異世界に来たんだっけ。すっかり忘れてた。くそ、起きたくねえなぁ。
「わーったよ。分かった」
眠気を抑えて起きると、目の前にはリッツとギルさんがいた。何の用だろうか。そういえば、ギルさんが昨日朝にまた来るとか言ってた気もする。
「それで、何の用、ですか?」
何故敬語にしたかというとギルさんがいたからである。
「王太子様が呼んでおられるから、執務室に来てもらいますか」
仕事。昨日勢い任せで見栄を張ってしまったが、日本の知識は役に立つのだろうか。そもそも仕事だるい。だが今更遅い。黙ってギルさんに付いていくしかないな。なんとかなるでしょ。そう考え、部屋を出る。
「じゃあな」
どうやらリッツは来ないらしい。護衛の仕事無いのか?
そして二の丸から本丸(?)にレッツゴー。階段を上り、執務室に来た。てか、相変わらず豪邸だなぁ。ま、人口が一千万人くらいの国の王様だから仕方がないのかもしれないが。
そして、ギルさんが扉を叩き「ギルバートです」と言う。しかし、答えが返って来ない。少しばかり眉をひそめたギルさんが同じことを繰り返したが、これも無視。居ないんじゃね? って思ったらギルさんが静かに扉を開けた。こころなしかギルさんが怒っているように見える。
そして、謎が解けた。そう、ジルはあの豪華な椅子に座っていた。隣にはあの美人秘書さん。ジルの机には前回より若干多めの書類があり、一枚の書類を眺めながらペンを回している。へー、ペン回しってこの世界にあったんだ。
しかし、ジルの名誉の為に言っておくと彼は決してギルを無視していたのではない。そう彼は……
「ジル様。起きてください」
寝ていたのだ。つか寝ながらペン回しって、何気に凄くね。
「……ジル様」
怖ッ。俺怒りの対象じゃないのに鳥肌立ってきたよ。すると、ジルは目を開けた。
「あ、ギルバート。おは
「太子たるもの臣下より早くに起きるのは当然。それも執務中に寝るなど言語道断でございます」
意訳:ぶっ殺すぞてめえ寝坊すんなボケ
「は、はい。すいませんでした」
気圧されたジルは相手が家来であることも忘れて敬語を使う。お前次王様になるんだろ?そんなんじゃダメでしょ。威厳が無いよ。
そしてギルさんは隣の美人秘書さんにも牙を剥く。
「リディー殿も君主を寝坊させるとは、臣下の心得を全く理解しておりませんな。これからは気をつけてもらいたいものです」
「いえ、ジル様を寝不足の状態でそのままにしておくよりは寝た方がいいかと」
しかしリディーという名前らしい美人秘書さんはこの殺気(むしろ呆れ)に平然と応対する。この人大物だ。
しばらくバチバチと目線での攻防を繰り広げた二人だが、バカらしいとでも思ったのかギルさんが苦笑した。そして、ギルさんの怒りが収まったと判断したジルは俺に話を切り出そうと体を前に乗り出す。
「リョウには僕の秘書をやってもらいたいんだ」
秘書って、俺に合わない気がする。もっと頭のいい人の方がそれっぽいでしょ。キャラ違ぇ。
「秘書って何すればいいの?」
「具体的には来客の接遇、予定の管理、調査、書類の管理をして欲しい。詳しいことは第二秘書のリディーに聞いて」
「オ、分かった」
オーケーって言おうとしたんだけどな。横文字は通じないんだよなー。面倒だ。
「君には専用の秘書室で働いてもらうから」
「おう」
「じゃ、リディー。頼んだよ」
「分かりました」
やべ、テンション上がってきた。しかも専用の秘書室で二人っきりでしょ。これはもう××××ルート真直線間違いなし!これぞ男の夢!
「では、リョウ殿。付いてきてください」
「は、はい」
リディーさんと目が合って俺は顔を赤くした。いや、美形でも童顔でもない奴が赤面してもきもいだけ、なんて言うなよ。だってこんな美人と目合うと誰だって恥ずかしくなるでしょ。リッツみたいな美形ハーレム野郎は別として。
「では、ジル様。失礼します」
意外と執念深いという自分の新たな一面を自覚した俺は、リディーの後を追い、部屋を出る。
秘書室は執務室と一つ階が違う、つまり六階にあるようで、階段を一つしか降りなかった。途中巡回兵の人と会ったが、目つきが怖かったなぁ。「誰だコイツ」って目で見られた。
「この部屋です。覚えておいて下さい」
無理無理! こんなでかい城の地理なんて覚えられないだろ、jk。リディーさんの印象を悪くしたくないので、肯定的に答えることにするけどさ。俺って単純だわー。
「善処します」
冷たい視線で見つめられた。どうやら俺の答えがお気に召さなかったらしい。どっかの悪徳政治家みたいな回答だから満足されるとは思っていないが。
「では、仕事の説明をします。さっきジル様が仰っていましたが、あなたの仕事は来客の接遇、予定の管理、調査、書類の管理です。しかし、異世界出身であり秘書の仕事をしたことのないあなたに全てを任せるのは心許ないのでしばらくは私の行動を見ていてください」
ホント俺に対する言動が刺々しい気がする。ツンデレ? ツンデレなのか? それならいいけど、違う気がするのは気のせいだろうか。
「はい」
「まず来客の接遇についてですが、基本的に来客者が来た時にはまず秘書室に連絡が入ります。秘書室に誰もいなかった場合は執務室に。そして、来客者には三つの種類があります。会わせなければならない人、会わせた方がいい人、会わせない方がいい人の三つです」
「はい」
「会わせなければならない人は、分かりますよね。国王陛下や皇族の方や他国からの使者や大臣の方々、つまり要人です。会わせた方がいい人か会わせない方がいい人かは微妙ですので、秘書の裁量に任せます。また、会う場合はジル様と同席する可能性が高いです」
とりあえず、偉い人には会わせればいいのか。
ただ、秘書の裁量に任せるって言われてもなー。裁量も何もねーよっていう。
「はい」
「では、予定の管理に移ります。予定はこの予定表に書いてあるので、予定が入ったらこの手帳に書いて下さい。
あとは、調査ですね。調査とは、ジル様に命令を受けた場合のみならず仕事に必要だと思ったら実行してください。調査するのに人手が足りなければ私に言って下さい。秘書室役員は二十人いるので」
調査って、アンケートとかかな。よく分からんが。
「はい」
そのうち分かるだろ。
それにしても、秘書室役員二十人って凄いな。流石は王太子様。三千五百万人の次期トップなだけある。
「最後に、書類の管理ですが。書類にも、見せなければならないもの、見せた方がいいもの、見せなくてもいいものがあります。見せなければならないものは、要人からの手紙や重要な仕事の案件です。見せた方がいいものか見せなくてもいいものかは秘書の裁量に任せます」
来客の接遇と同じだな。
「はい」
「また、その書類は種類別に保管して下さい。後々使うこともあるかもしれません」
プロファイリングか。俺、整理苦手なんだけど。いつも部屋は散らかしっぱなしだったし。
「はい」
「まあ、仕事は大体そんなところです」
そして、一連の説明を終えたリディーさんはふう、と息をつき椅子に座る。俺も促されたので向かいの椅子に座った。そして、気まずい空気がこの部屋を支配する。くっ、悔しい。折角美人と二人きりなのに、話しかけずらいよこの人。もっとさ、軽い雰囲気出そうよ。
コンコン。
「失礼します」
ここまで読んでくださいましてありがとうございました。トッティーです。
実は僕最初は亮のことを軍師にしようとしました。しかし、何故秘書なのか。
その理由は、作者の適当なストーリー作成です。ここらへん、書き始めた時はまだ考えていなかったんですよ。さっさと戦争始めるつもりだったのですが、そうにもいかず、クッションを挟まざるを得ないんですよねこれが。
そして使用人と言ってしまったからには軍師みたいに偉そうな仕事をさせるわけにもいかず、だからといって美少女成分も無いのに雑用させてもつまんないだろうなぁと思いまして。