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異世界の智将  作者: トッティー
第一部 血風編
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第1章第4話 光の勇者、闇の魔王

「あぁーー。散々だった」


 あの事件から二時間。いまだに頬がひりひりする。歯も痛い。そう、俺はあの兵隊さんに頬を思い切り殴られたのだ。バシィン! という効果音と共に。まさか俺の頬からあんな音が出るとは思わなかった。


「ありゃあ、お前が悪いだろ。ただでさえ兵士は気が立っているのに羅啞麺ぶっかけられたら、気の短い奴はキレるぜ」


 いや、でも本当に痛かったんだ。しかも殴られて倒れた上につばを吐かれたんだぜ。確かにラーメンかけちゃったけどあれは酷すぎる。つか、あんなマッチョはどうせ一日中気が立って……ん?


「ただでさえって何?なんかあったの?」


 リッツは露骨に面倒くさそうな顔をした。すいませんね。これが俺の性分なんで。考察好きなんだよなー。まあ、口が達者と言われ近所の不良グループにいじめられた中一の夏の記憶はまだ鮮明なのでいくらか抑えているのだが。


「分かんねえの?陛下の御親征のせいだよ。あいつらは折角の戦争なのに城に残されたからな。不満が溜まっているんだよ」


 折角の? 不謹慎だな。日本でそんなこと言ったらボロクソに叩かれるぞ。


「この国はあんまり戦争しないのか?」


「ああ。前に戦争したのが三年前かな。その前が……七年前か。どちらも内紛の鎮圧に過ぎない。これが実質的に最後の対外戦争かな。今代の国王陛下は戦争を好まれないからなー。そのおかげでカタパルト王国は平和になったが、その分兵士の出世の機会が失われたんだ」


「それで少ないって……。他の国は毎年戦争しているのか?」


「ああ。今は戦乱の世だからな。東の方にある紛争地帯やカタパルト王国以上の大国が群雄割拠している北方では毎日戦争が起こっているよ」


 ふ~ん。戦国時代みたいなものか?


「よくそれでこの国は平和を保っているな」


 そう考えればこの国は平和だ。


「カタパルト王国は南と西を海に囲まれている上に北で領土が接しているフリーダ皇国と同盟しているから。今回の御親征も南のマグナ族っていう民族が反乱したからであって、他国に攻めたことはここ十五年は無いな」


 そういえばジルが「南と西は海」とか言っていたな。地の利ってことか。


「へえ」


 それにしてもこの国が平和で良かった。いきなり戦争が起こって「これが、戦争……」と言いながら敵の兵士を大虐殺! なんて展開にはならなそうだ。いや、まあ俺に魔法の才能があるのかどうか分からないが。魔法使えなきゃ俺ただの一般人だからねー。虐殺なんて出来んよ。


 そういえば、リッツって魔法使えるのだろうか?


「なあ、リッツって魔法は使えるのか?」


 まさか使えないなんてことは無


「使えるわけないだろ」


 え!? 使えないの? しかも「使えるわけない」って……。この世界でも魔法使いは貴重なのか?(元の世界では貴重どころではなかったが。いや、実は居たのかもしれないけどさ)


「この国に魔法使いって何人いるんだ?」


「七千人。魔法使える奴なんて千人にひとりも居ないんだぜ」


 つーことは人口は一千万人くらいってことか。日本より全然少ないな。


「リッツより強い魔法使いって何人居るの?」


 よく考えてみれば、護衛なのに魔法使えないんじゃ駄目じゃん。暗殺者に魔法使われたらどうするんだよ。


「魔法戦士は三千人ほど居るが、俺と同じくらいが三十人位。俺より強いなんて五、六人しか居ないぜ。そもそも、魔法は戦闘にはあまり使われないからな」


 どんだけ~~。魔法使えね~。


「リョウは使えるのか?」


「さあ?」


「さあ?って……」


 魔法かぁ~。使えれば良いんだけどなぁ。そうだ! 測ろう。(異世界召喚もので)よくある魔力計測器を使えば良いじゃないか。


「俺魔法のこと知らないからさ。魔力を測れるモン無いの?」


 案の定ある様だった。だがリッツは難しい顔をしている。


「いや、あるんだけどさ……魔法戦士の屯所だから、あんまり行きたくないんだよ。」


「何で?」


「まあ……なんていうか、性格がとても個性的な人がいるんだよ」


 個性的って……要するに変人ってことか。変人耐性の強い俺には大した問題でもないな。


「いいからいいから。俺は気にしないぜ」


 まあ、リッツが気にしているんだけどな。だが俺にはあまり関係無い。早く魔力を測定したいのだ。期待大。

 そう思いながら俺が立ち上がると、リッツも渋々といった様子で立ち上がる。


「ま、後になってから文句言うなよ」


 そう吐き捨てるリッツ。つか、そんなにヤバい人なのかよ。


 リッツいわく個性的な魔法戦士がどんな人なのか想像しながら、魔法戦士の屯所に向かった。このとき俺は後々後悔するとは思いもしなかった。








「どーも、リョウっていうんですけど。魔力測ってみてもいいですか?」


 どうやら魔力計測器を使うには、大魔導師であるハンナさんに許可をとらなければいけないらしい。この人をリッツは苦手にしているようで、「一人で頼みに行け」と俺に言った。自分は物陰に隠れるようだ。それにしてもハンナさんか……。どっかで聞いたような名前だなぁ。


 でも、ふたを開けてみればただの陽気なおばさんだった。歳は恐らく四十代後半かな。白髪の生え始めた黒髪にパーマをかけている典型的なおばさんだった。内心『人を弄ぶのが好きな美人お姉さん』を期待していたのだが、やっぱりおばさんだった。まあ、俺にそんなルートがあるはずないか。


「あんた、皇太子様に召喚された坊やじゃないか。どうしたんだい?」


 そういえば、ジルが言っていた気がする。もう一人俺の誤召喚に立ち会っていた人が居ると。この人だったのか。


 つーか、人前でんなこと言うなよ。リッツに聞こえたかも知れないだろ。


「今やること無くて暇なんで、折角だから魔力を測ってみようかな、と思ったんで」


 すると、ハンナさんはその目に好奇心を浮かべた。


「面白そうだね。あたしも見ていいかい?」


「面白そうとは?」


「まあ、お前さんが知らないのも当然か。異世界から来た人間は魔力が大きい上に伝説の属性『光』もしくは『闇』を使える可能性が高いらしいんだよ。北には王が死ぬたびに異世界から人間を召喚する国もあるし、カタパルト王国の初代国王も一説には異世界出身らしいけどみんなこの条件に当てはまるんだよ」


 なるほど。まあ俺の属性は多分光だな。隣には超人幼馴染なんて居ないから闇ってことは無いだろう。


「じゃあ、案内してください。見てもいいんで」


 すると、ハンナさんはにっこりと笑った。もしハンナさんが三十年生まれるのが遅ければ見とれたかもしれないが、所詮はおばさん。その笑顔に攻撃力は無い。


「ほれ、リッツ。お前さんがそこに居るのは分かっているんだよ。出てきなさい」


 すごすごとリッツが出てくる。耳良いんだな。って、今の会話聞かれたなら俺が異世界召喚されたのばれちゃったのか? そう思いリッツを見たが、たいして驚いてもいないようだった。


「うへぇ、見つかっちまった。それにしてもリョウ。お前異世界から召喚されたのか。執事長から『殿』付けで呼ばれていたから何か秘密があるとは思っていたんだがなぁ。まさか異世界人とは」


 ギルさん、執事長だったんだ。


「じゃあ、行くよ」






 ここは屯所の一室。薄暗いこの部屋に、お目当ての魔力計測器があった。丸く、青色なそれの真ん中は透明色である。


「ここに現れた色が属性を示すのか」


 さっきハンナさんに説明を受けた。基本的に魔法の属性は五つあるらしい。火属性、水属性、雷属性、風属性、土属性の五つだ。それぞれ赤色、青色、黄色、緑色、茶色で示される。他に伝説の属性として光属性と闇属性があるが、それぞれ虹色と黒色で示される。

 また、魔力量を示すのは透明色の部分の下にある線である。この魔力線というらしい線が横に一メートルほどあり魔力量に応じて属性色で示されるのだ。(温度計のようなものだと考えればいい)この線も、通常時は透明である。


「どうすればいいの?」


「上部にある鏡に手を当てて。それだけで測れるから。簡単だろ?」


 言われた通りに手を当てる。すると、透明色だった部分が虹色に発光し始める。


「これは……光属性」


 そして、下の魔力線を見るとそれは




「……、――――ッ」




 透明のままだった。

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