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異世界の智将  作者: トッティー
第二部 紫雷編
34/85

第3章第5話 秘密会議って言うと悪役っぽいよねー

「失礼します」


 ドアを開けて入ると、そこに居たのはジルとギルさんだけではなかった。ブルゴー騎士団長、レーデ内務大臣(過激派代表)、バトン内務大臣、ハンナ大魔導士(第二将軍、閣僚である)、バトン外務大臣。錚々たるラインナップである。カタパルト王国首脳部が一堂に会した感じだ。


「うむ。リョウ、お主を待っていた」


 ジルの言葉。何を始めるのだろうか。執務室にいつもは無い円卓が置いてあり、ギルさんを除き彼らはみんなそこに座っている。もちろんジルは執務椅子だが。一つ席が空いているので、俺は座ってもいいんだろうか。


「座れ」


 座ると、隣のバトン外務大臣に書類を渡された。それは二つの束になっていた。一つはフリーダ皇国軍、カール軍、反乱貴族軍、マグナ族に関するモノ。もう一つはカタパルト王国軍の軍事的な資料。


 数分ほど目を通し、俺はそれを自分の前に置いた。大体俺が知っている情報だと分かったのだ。わざわざ細部を読む必要はない。


「では、秘密会議を始める。これは閣議ではない。今回は事態が事態なだけに、先の戦で勝利に貢献したリョウにも出席してもらっている。異存はないな? では、始めよう」


 今回は形式ばった感じではないらしい。まずレーデ内務大臣が口を開いた。


「さて、今我々は亡国の危機に瀕しております。敵は、北のフリーダ皇国軍、東のカール一族+マクシム軍、南の反乱貴族軍+マグナ族。南は撃退したので善しとしましょう。王国最南端であり、マグナ族の領土と領土が接している貴族達はみな反乱に参加したのでマグナ族とはしばらく戦う必要がありません

それで、北と東どちらを先に対処するかという話になるのです」


 まあ状況確認と言う奴だ。一拍置いて、レーデ内務大臣は自分の考えを述べた。


「私は東のカール一族軍を撃退するのが最善策だと思います。北のフリーダ皇国軍はどうせすぐ帰還するでしょう。反フリーダ皇国連合軍は既に合流を終えてフリーダ皇国領に攻め入ったと聞いていますから」


 成程、そういえば反フリーダ皇国連合とかあったっけ。今でも俺は危惧を抱いているままだが、まあそれなりに仕事してくれるだろう。


「確かに、そうかもしれませんな。そもそも、北と相対するだけの兵力を我々は保持しておりません。もう少し貴族が王城に馳せ参じるのを待てば総兵力三万程になるのですが」


 今国王が保持している兵力は二万人。それだけで賢王ガストンが率いるフリーダ皇国軍四万と戦うのは不安だ。


「私も賛成です」


 バトン外務大臣に続き、ブルゴー騎士団長も賛成の意を表した。ハンナ大魔導士も賛成し、後は俺だけになった。


「俺……私も東のカール一族を先に対処するのには賛成です。ですが……」


「だが、何だ?」


「皆さまは、どのようにカール軍を撃退しようとお考えでしょうか?」


 俺の問いにレーデ内務大臣が答える。


「そりゃあ、大軍を率いて正面から一気に潰すに決まっておろう」


「他の方々も?」


 他の全員が首肯したのを見て、俺は喋り始める。ちなみにジルは全く発言していない。まるで俺に全てを任せているかのように。


「やはり、そうですか」


「やはり、とは?」


「私は、それには反対です」


 みんなが驚く。当たり前だ。それ以外にどういう方法があるというのか、不思議に思っているだろう。


「理由から説明しましょう。私は前国王陛下エドガー様の暗殺、マグナ族との関係の悪化、シャルロワ達貴族の一部の反乱、この全てをフリーダ皇国の陰謀と考えております」


 タイミングが良すぎるのだ。シャルロワは国王が死ぬとすぐ謀反した。まるで、最初から国王が死にフリーダ皇国が攻めてくるのを知っていたかのように。


「確かにそれは私も考えていた。だが、それと何の関係があるのだ?」


「ならば、それほどの陰謀を企み万事抜かりなく成功させたガストン皇王が、反フリーダ皇国連合の発足とその進撃を読めなかったなんてことがありましょうか。確かに、一連の流れが偶然と言う可能性もあります。しかし、その可能性は極めて低い。将たるもの常に最悪の結果を考えなければならないと言うのは知っていましょう?」


 そう、俺にはガストン皇王が反皇連(略称)に対して何らかの処置をしている気がするのだ。


「つまり、フリーダ皇国軍はもしかしたらすぐにはカタパルトを撤退しないかもしれないのです。そうなれば話は別でしょう? 今すぐにでも、まだ完全にカタパルト王国北方を制圧されてないうちに、奴らを撃退する必要があるのです」


 となれば、カール軍と戦っている余裕はない。つまりは、そういうこと。


「確かにな……。我々は多少楽観視していたのかもしれん」


 ブルゴー騎士団長が納得した。他の人々も苦虫を噛み潰したかのような表情で頷いた。


「では、どうするのかと申しますと、やはりカール軍を放置する訳にはいかないので、戦います」


「それでは、さっきの我々の意見と変わらないではないか」


 バトン外務大臣が呟く。


「いえ、我々は少数、それも二、三千人でカール軍を速やかに撃破します」


 みんなポカンとなる。驚いているようだ。俺は説明を加えた。


「この兵たちには、魔法をかけて超素早く駆けれる馬に乗らせます。もちろん、全員に。歩兵には戦場近くで馬から下ろさせますが、これで大分到着が早くなるでしょう。また、鎧や武器などは別途に運ばせます。そうすればより到着が早くなるでしょう。速度重視で東に突き進めば、敵の想定外の早さで到着します。北のフリーダ皇国と戦うと宣言して大軍備を整えている最中に出撃すれば尚更です」


 王城に到着するまでに考えていた案だ。敵はいきなり現れた俺達に驚くだろう。要するに奇襲だ。


「まさかそんなに早くに来るとは思っていないカール軍は大慌てでしょう。ジュネ将軍と力を合わせて挟撃すれば、烏合の衆である奴らはすぐに撃破できると存じます」


 カール一族軍八千とマクシム軍は行動を共にしている。体裁ではマクシムの方がカール一族総領より立場は上だが、命令中枢は全く異なる。烏合の衆だ。


「これで東の軍勢は撃破できるでしょう。どうでしょうか?」


 他には不確定要素である裏切り。反乱貴族の一部はシャルロワ軍の大敗を聞いてどちらに付くか迷っているはずだ。そいつらに裏切らせれば勝利の可能性は大幅に高まる。


「成程」


 レーデ内務大臣が頷く。シャルロワ軍に勝ったあの分断作戦の功績で、少しは俺も信頼されているらしい。続いてブルゴー騎士団長も賛成する。


「細かいところは詰めねばならんが、確かにその案は興味深いな。で、どの部隊が出撃し誰が指揮するのだ?」


 そこまでは考えてなかった。どうしよっか。


「私は陛下御自ら出撃すべし、と考えております。一度シャルロワ軍に勝利したとはいえ、まだ静観を決め込む貴族も多い。そこで陛下がご自身で二度目の勝利を収めれば、貴族からの信頼は上がり、静観しそうだった貴族がこちら側に付く、なんてことも起こり得るのです。次善策としては、ブルゴー騎士団長」


 基本ジルに功績を回すべきなんだよな。


「だが、それを実行するのは難を極めるぞ? 誰かが国王陛下の不在に気付く可能性は高い」


「それでも、です。配下の者に破らせるのと自ら打ち破るのでは周りからの評価は違います。前回は囮を用いて勝利したので、ジル陛下にはまだ勇猛という印象はありません。是非、国王自ら戦うべきだと」


「そうだな、私は賛成しよう」


「私も」


「私もだ」


 と皆が賛成した所で、ジルが、初めてではないだろうか。口を開いた。


「異存はないな? 無いなら次の方策に行くぞ」


 俺の意見が採用されたようだ。続いての議題は、フリーダ皇国に対する方策だ。


「どう戦うか、だな」


「カール軍を撃破すると同時に進軍する。これはつまり、二万人程度で相対しなければならないということだ。何か策が無いとな。リョウ殿は何かあるか?」


「いえ、まだ何も」


「今すぐに貴族諸侯へ檄文を書けばよろしい。さっさと来い、とな。フリーダ皇国との会戦に間に合わせればいいのだ」


「まあレーデ殿が言うようにそれしか無いだろうが、そんなことで大して兵力が増えるかと考えれば否だ。裏切り工作などが効く筈もないだろうし、出来ることは少ない。姦計抜きに単純な会戦で勝負を決するしかないだろう」


 最後にブルゴー騎士団長が締めてフリーダ皇国に対する方策は決まった。決まったと言っても特に何かをする訳ではないが。


「では、他に何か意見のあるものは居るか?」


 ジルが仕切り直す。俺は挙手し、意見を述べた。


「まず、カール軍に対して謀略を仕掛ける必要があるかと思われます。カール軍はカール一族軍と反乱貴族軍の二種類に分かれておりますし、反乱貴族の一部を寝返りさせることだってできるでしょう。さすれば、より楽にカール軍を撃破することができます」


「うむ、それは考えておる。案ずるでない。国王直属の諜報機関がしっかりやってくれているよ」


 次に手を上げたのはブルゴー騎士団長だった。


「フリーダ皇国軍との会戦、その作戦はどう致しましょう? 陛下はお考えになっているでしょうか?」


「いや、まだだ」


「では、後日開く軍議までに配下の者に少しは作戦を考えておけと通達しておきます」


「分かった。他に何かある者はおるか?」


 何もない。これにて秘密会議は閉会となった。

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