ループの先
気がつくと見覚えのあるショッピングモールのフードコートの入り口に立っていた。
休日なのか多くの家族連れで賑わっている。
__ここから逃げなくては__
なぜかふとそう思った。
フードコートを左に進んでいくとお店もなく、人気のない細い通路に出た。
前からピエロのような格好をした男性が歩いてきた。
近づくにつれこの人から逃げていたような気がして、立ち止まってしまった。
立ち止まった瞬間に男性と目が合った。
目が合ったと思ったら、男性は息がかかるほどの距離に来ていた。
__まだ離れていたはずなのに__
そう思ったとき目の前が真っ暗になった。
そして気がつくと、見覚えのあるショッピングモールのフードコートの入り口に立っていた。
休日なのか家族連れで賑わっている。
__この光景をさっきも見たような気がする__
フードコートを左に進んでいくとお店もなく、人気のない細い通路に出た。
前からピエロのような格好をした男性が歩いてくる。
__この人に近づいてはいけない__
そう思いくるりと後ろを振り返るとスーツを着た男性が目の前にいた。
その男性を認識した瞬間に目の前が真っ暗になった。
そして気がつくと、見覚えのあるショッピングモールのフードコートの入り口に立っていた。
休日なのか家族連れで賑わっている。
__気のせいではなく確実に同じ時間を繰り返している__
時間をずらすためにフードコートを彷徨い歩いてから左の通路に向かってみた。
相変わらずお店もなく人気のない細い通路だが、通路を塞ぐように重そうな大きな石のテーブルが置いてある。
テーブルの隙間は男性が横向きに歩いてかろうじて通れるかと言うぐらいしか空いていない。
前からピエロのような格好をした男性が歩いてくる。
__時間をずらしたのにこの人が来ると言うことは後ろにスーツを着た男性がいるはずだ__
走ってテーブルの横を通るふりをして下に潜り込んだ。
男性二人は追いかけてきて、テーブルの横で止まっている。
ピエロのような格好の男性はテーブルの隙間を通ろうとしているようだ。
そのすきに下を抜けてしまおうと四つん這いで進んでいると、後少しでテーブルを抜けるというところで足に何かが絡みつき動けなくなってしまった。
見るとスーツの男性が足に絡みついたロープをテーブルの足に固定しているところだった。
急いでロープを外そうともがいていると、ピエロのような格好の男性がいつの間にかバケツを持ち頭上に立っていた。
ピエロのような格好の男性はニンマリと笑いながら、バケツの中身をひっくり返した。
中身はオイルか何かだったようで、油のような匂いがした。
全て私にかけ終えるとピエロのような格好の男性はどこかに歩いて行った。
スーツの男性が私の頭上に近寄ってきた。
__火をつけられる、でもまた戻るはず大丈夫__
必ず戻る保証はなかったけれども、確信があった。
スーツの男性だけでも巻き添えにしてやろうとオイルまみれのままだきついてやった。
男性は離れようともがいていたが意地でも離さないと、しがみつき続けた。
揉み合っているうちにピエロのような格好の男性がマッチを持って戻ってきた。
息を呑んだ時に手の力も緩んでしまいスーツの男性に逃げられてしまった。
ピエロのような格好の男性とスーツの男性が何かを小声で話している。
少しでも逃げられないかともがいていると、マッチをする音が聞こえた。
目を向けると火のついたマッチを持ったピエロのような格好の男性と目が合った。
『さ よ う な ら』
声は出していなかったが、確実にそういっていた。
火種を投げられ、オイルまみれの私は瞬く間に火で包まれた。
__熱い、暑い、熱い!お願い早く戻って、お願いだから!耐えられない!__
叫びながらそんなことを思っていた。
人気がないとはいえ離れたところには他の人もいる何故誰も気づかないのか、何故今回はなかなか戻らないのか。
暑さと痛みに耐えながら段々と意識が遠くなっていき___。
「死んだ?」
ピエロのような格好の男性が呟く。
「今回こそ死んだはず。」
隣でスーツの男性が言う。
二人の目の前には燃やしたはずなのに石像のような灰色になったものが転がっている。
「こいつ殺すと時間が戻るとか訳がわからない。」
スーツの男性がオイルに塗れた上着を脱ぎながら言う。
「今んとこ戻んないけどこいつが死んでなくて戻んないのか、今回こそ殺れたのかどっちだ。」
ピエロのような格好の男性はダルそうに呟く。
二人の目の前に転がっている奴を殺すたびにこの二人も同じ時間に戻っていたようだ。
その時目の前の光景に変化が現れた。
なんと転がっているものが呼吸しているように胸部が動き始めたのだ。
先ほどまでは完全に脈も呼吸も止まっていたはずなのに。
ピエロのような格好の男性が脇を掴んで持ち上げると微かな呻き声が聞こえた。
ぼんやりと男性が会話している声が聞こえる。
前は何も見えない。
燃やされてどうなったのだろう。
戻ったのだろうか。
それにしては何かが違う気がする。
周囲を見渡そうとすると、左目から何かがパラパラと落ちていった。
その時誰かに脇を掴まれ持ち上げられたような感覚がした。
体には力が入らずにされるがままになっていると、誰かと目が合ったような気がした。
「!おい!」
そんな声が聞こえて____
気がつくと見覚えるあるショッピングモールのフードコートの入り口に立っていた。
休日なのか家族連れで賑わっている。
それを認識した途端、右に向かって走り出した。
もうあんな思いはしたくない、あの場所には行きたくない。
どれぐらい走っただろう。
どんなに走ってもショッピングモールからは出られなかったが、あの二人とは会わなかった。
呼吸を整えるために通路の角で息を整えているとコツコツという足音とカツカツという足音が聞こえた。
__あの二人だったらやばい__
動き出した瞬間肩に手を置かれた。
「みーつけた。」