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第70話 小鬼狩りへの新たな依頼と特別な報酬

 護衛がやってきたことで転移門関連の話題については強制的に終了となった。


 だけどそれで解散とはならない。


 それはエイレインにはまだ他の用事があったからだ。


「あなたの活躍のおかげでカサンディア周辺のゴブリンの掃討は完了しました。経過を観察する必要はありますが、現状ではゴブリンの異常繁殖も収まっているという報告もきていますし、一先ずは安心して良いでしょう」

「お役に立てたのなら光栄です」


 護衛がいるせいか、先ほどよりもお互いに堅苦しい感じで話している。


 まあどちらかと言えば先程が例外であり、これが普通なのだろうが。


 それにしてもカサンディア周辺のゴブリンの掃討が完了したこと自体は非常に喜ばしいのだが、だからと言ってそれで万事解決となる訳ではない。


 なにせ転移門はカサンディア周辺だけで開いている訳ではないのだから。


 それをエイレインも分かっているのか次の言葉が続く。


「ですがそれはあくまでカサンディア周辺だけのこと。他の地域、それもグレインバーグ領だけでもこの件の問題が解決したとは言えません。そこであなたには追加で依頼をお願いしたいのです」

「他の地域でもゴブリン狩りをしてほしい、ということですね」

「その通りです。勿論これは強制ではありません。ただもし受けていただけるなら、今まで以上の金銭以外でも報酬を支払う用意がこちらにはあります」

「金銭以外の報酬、ですか?」


 こちらとしては異世界で使える金を貰えるだけでも有難いのだが、それだけではないようだ。


「あなたと同郷の四人は迷宮に挑んで有用な真言を獲得しようとしている。だけど一般にも開放されている迷宮で有用な真言を手に入れるのは、順番待ちもあるのでかなりの時間が掛かる事でしょう」

「それは仕方がないですよ。魔境では目的の魔物を狙うのは難しいでしょうから」


 大抵の魔境では複数の魔物が生息している。


 その中から狙いの魔物だけを選び抜いて戦うことは困難を極めるのだ。


 なにせ大抵の魔物は人の存在を感知した場合、容赦なく襲い掛かってくるので。


 仮に狙いの魔物以外と遭遇した際には戦わずに逃げるとした場合でも、そのためには相当な労力と時間が必要になる。


 それに真言を手に入れないように、敵を倒さないように逃げる難易度は普通に倒すよりも高いので、今の自衛官達では難しいと言わざるを得ないだろう。


「でしたらこの依頼を受けていただけた際には、私の権限でグレインバーグ家が保有している一般には解放されていない迷宮で幾つかの真言を得られるように取り計らいましょう」

「それは……こちらとしては有難いことですが、本当に良いんですか?」


 貴族が独占している迷宮で真言を手に入れられる。


 真言と真力が大きな意味を持つこの世界において、それはかなり豪華な報酬に思えた。


 実際この言葉に背後で控えていた護衛が驚いたのか目を見開いている様子からして、破格の報酬なのは間違いないなさそうだ。


「構いませんよ。昨今の情勢を鑑みれば、あなたとの協力関係はまだまだ続くでしょうから。それに今後も魔境でゴブリン狩りをするあなたの身を守るためにも、有用な真言はあった方が良いでしょう」


(これは単に心配してるってよりかは俺から情報を得る前に死なれたら困るってところか?)


 それにエイレインとしてはいずれ転移門やゲートマスターの情報についても聞き出すつもりだろうし、その時に協力してもらうための先行投資といったところだろう。


 あるいはそこでの交渉次第では更に追加で有用な真言を得ることも可能かもしれない、とこちらに思わせたいのか。


(まあ相手の思惑がなんであろうとも、有用な真言を得られるのはメリットでしかないんだ。この提案を蹴る理由はないな)


 これで自衛官達が強くなれば、俺以外でも異世界で色々と活動できる人も増えることに繋がる。


 現状では全く手が足りていないので、こちらの負担を軽減するためにも協力者の育成は急務なのだった。


 それもあって俺はその提案を受け入れて、グレインバーグ領内を巡ってゴブリン狩りを行なうことを約束する。


 これで運が良ければ更なる転移門のゲートマスターとなることもあるだろう。


(制御する転移門の数が増えれば新たな機能が拡張されるかもしれないしな)


 なお、遠方への移動手段についてもエイレインの方で用意してくれるとのことで、準備が整ったら声を掛けるとのこと。


「それとこれは提案なのですが、あなたさえ良ければ対ゴブリン用の毒薬の製造方法を学んでみませんか? これがあれば最悪あなたがゴブリン狩りをしなくても、この毒を撒くだけで周辺のゴブリンの数を減らすことも可能となるようですし」

「え、そんな便利な物があるんですか?」


 なんでもその毒薬とやらはゴブリンだけが食いつく代物とのことで、他の魔物や動物は見向きもしないらしい。


 だがその分なのか、匂いを感じ取ったゴブリンはほぼ確実に食らいつくとのこと。


 なのでこれがあれば巣穴を見つけたら、その近くに毒薬を撒くだけでよくなるかもしれないらしい。


 つまりわざわざ俺が危険を冒して巣穴に突入しなくてもよくなるかもしれないのだ。


(毒で巣穴のゴブリンを始末できたかも俺なら『小鬼感知』で分かるしな)


 でもそんな便利な物があるなら何故これまで使われなかったのだろうか。これさえあればゴブリン退治なんて簡単だろうに。


「その理由は第一に素材の値段が高いことです。つまり採算が合わないのですよ」


 高い素材を掛けてゴブリンを倒して魔石を回収したとしても大赤字は確実となれば、余程の理由がなければそれを利用しようとは思わないか。


 少なくとも冒険者個人ではまず利用しようとは考えないと思われる。


 グレインバーグ辺境伯家としては、このままゴブリンの異常繁殖によって各地が荒らされるよりはそのくらいの出費の方がマシという感じだろう。


 貴族の家ならその毒の素材を用意する金くらい余裕であるだろうし。


「そして最も大きな理由が毒薬などで魔物を倒した場合、真言が手に入る人物が毒を撒いた者になるか、毒を作った者になるか分からない点です。だから毒や罠などを使って魔物を倒す際には色々と気を遣わなければならないのですよ」

「なるほど、そういう問題があるんですね」


 だけど今回の場合で言えば、俺がその毒薬を作成できれば問題はない。


 何故なら毒薬を撒くのも、作るのも全て俺となるからだ。


「こう言ってはなんですが、冒険者は字が読めないような学がない者が多く、毒薬の作成など教えても習得するのは難しいでしょう。ですがあなたは文字も読めるようですし、ギルドの資料室を頻繁に利用するだけの賢さも兼ね備えているようですから」


 望む場合は教師役をエイレインの方で用意してくれるそうだし、仮に習得できなくても、それならそれでこれまで通り地道に狩ればいい。


(先々の事を考えて学べるものは学んでおくのが賢明だな)


 そう考えた俺はゴブリン用の毒薬の製造方法を身に着けることに決めたのだった。

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