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第66話 強い魔物から手に入る真言とそれに付随する様々な思惑

 この異世界では魔物を倒すことで真言が得られる。


 そしてその真言は魔物の種類によって異なるのはこれまでの事からも分かっていることだ。


 そして一人の人間が手に入れられる真言の数は無限ではない上に、保有数が増えれば増えるほど新たな真言は手に入らなくなっていく。


(だからこそ強い魔物から得られる強力な真言の価値は高い)


 真言が手に入り易い初期の内にそれらを手に入れられれば大きなアドバンテージになることだろう。


 その逆となってしまった俺とは反対に。


 ただしそう簡単に強力な真言は手に入らない上に、真言の入手に関しての物事はそう簡単でも単純でもないのが厄介なところだった。


 例えば強靭な肉体に果てしない再生能力まで揃えている大鬼オーガという魔物。


 こいつはシルバーランクの魔物に分類されているほどの高い真力を有しており、保持している真言も力を増加させる『剛力』に『剛腕』、肉体の強度を上げる『頑強』。

 更には肉体を回復させる『再生』まで兼ね備えているという能力的にも非常に厄介な魔物だそうだ。


 たたでさえ強靭な肉体と人間などとは比べ物にならない生命力を保持している上、真力でそれらを大幅に強化しているのである。


 そのしぶとさは相当なもので首を刎ねるまで決して気を緩めてはいけないとまで言われているのだとか。


(今の俺の真力は16だから真言の効果がなくても勝てそうにない相手だな)


 しかもこちらは肉体を強化する真言がないのに対してオーガはそうではないのだ。


 それを考えれば勝てないどころかまともに相手にならないと思っておいた方が賢明だろう。


 だが逆に言えばそれだけ強力な真言を有しているということでもあり、それを狙う腕の良い冒険者が一定数はいると思うだろう。


 だが実際にはそうではなくオーガもゴブリンと同様に冒険者からは強さ以外からの面で忌避される存在として扱われているのだ。


 その理由は単純。


 何故なら残念なことにオーガから手に入る真言の順番はなんと小鬼と似ており、最初『鈍感』で次が『悪食』だからだ。


 そう、これらはどちらも第一階梯の真言な上に使い物にならないとされている真言である。


 勿論その後からは『剛力』や『再生』など強力な真言が続いていくのだが、それらを手に入れるために二つのゴミ真言で貴重な枠を埋めなければならないとなれば話は違うというもの。


 強くなるために強力な真言を手に入れたいのに、その前にゴミ真言が手に入るのでは意味がないのである。


 ただオーガの肉体の一部は貴重な薬の材料になるとかで、そういう意味では狙う意味もあるらしいが。


 まあそちらの狙いの場合は倒した際に魔石しか残らない迷宮では意味がないので、自然に生息しているオーガが狙われるとのこと。


(つまり真言の入手という観点から見れば魔物が保有する真言も大事だけど、その上で手に入る真言の順番も大切になってくるってことだな)


 異世界では魔物や真言について長い時間を掛けて研究されており、冒険者ギルドなどでもそういった情報はある程度までは開示されている。


 だから調べれば『剛力』や『再生』が最初に手に入る魔物も存在していることは分かるし、そういった魔物が出現する迷宮の場所も分かる訳だ。


 だからこそそれらの真言を得るために、わざわざオーガを狙わなければならない理由はないことも理解できる。


 そしてそういった貴重な真言が手に入る迷宮を管理、あるいは独占している貴族や王族の力が強いことも納得できた。


(それに真言の肉体強化は力が強くなる以外でも効果があるのか、生命力とかも強化するみたいだからな)


 雷電蛙との戦闘で転移門の話では現実世界だったら生命に関わる状態になっていた俺だが、真力のおかげでこちらではそこまでの重体ではなかったことからもそれは間違いないだろう。


 あるいは免疫機能なども強化されて病気になり辛い可能性などもあるかもしれない。


 まあその辺りの小難しい話については今後、その分野の研究員や医者などが派遣されて調査が進められるそうだ。


 今のところは電子機器などが持ち込めないのにそんな調査が可能なのかは疑問なところだが、そちらは俺が考えることではないので気にしないでおこう。


 それよりもまずは自分に割り振られた仕事をする方が重要なのだから。


「そのためにも自衛官を鍛えて安全を確保できるようになっておきたいと」


 今の与党や総理大臣が野党などの反対にあっても自衛官を異世界に派遣することを決定したのはそういった理由もあるらしい。


 ちなみにこういった考え方は日本だけでなく世界中で同じだろうとのこと。


 もっと言えば真力や真言などを現実世界で利用できないか考える輩も絶対に出てくるという話だ。


 これだけの力なれば軍事利用するのは勿論の事、それ以外の分野でも色々な事に活用できるのは目に見えているのだからそれも当然だと思う。


 そしてそのために必要な転移門とその管理者であるゲートマスターの存在は大きな意味を持つことになる。


 世界中でゲートマスターの数は徐々に数が増えているそうだが、どう考えても世界中の国々が満足できる数ではないし、増えるペースからしてもそうなるのはないと思われるとのこと。


(つまり俺の身が狙われる可能性は依然として消えないどころか、益々高まっていることだな)


 異世界でならそれなりの力を付けたので物理的に狙われてもどうにか対処はできると思う。


 少なくとも逃げるくらいはできるだろう。


 だとするとやはり危険なのは現実世界に戻っている時か。

 あちらでは俺はただの若造で無力に等しいのだから。


 そのことを改めて意識しながら俺は次に自衛官に取らせる真言を何にするか、冒険者ギルドの資料を見ながら考えるのだった。

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