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第24話 転移門の管理者と帰還

 あれから色々大変だった。


 俺が我に返った時には既に警察が来ていて、狂ったように笑い続けた態度や持っていた短剣などからおかしな薬を吸った異常者のように思われてしまったからだ。


 いやまあ、俺も第三者の立場からあんな態度を取るやつが居たら頭がおかしいと思うのでのそれに文句はない。


 いくら元の世界に戻れたことが嬉しかったとは言え我を忘れ過ぎた。


 もっとも幸か不幸か俺は警察に逮捕されてはいない。


 それどころか思わぬ展開になっていた。


「異世界との門を管理する存在、転移門の管理者(ゲートマスター)ね」


 異世界に飛ばされたのが俺だけでなかったように、飛ばされた異世界から戻ってこられたのも俺だけではなかったのだ。


 そしてそういった人の中には異世界に繋がる門――通称転移門――の開閉などのある程度の操作ができるようになった人がいる。


 そう、何を隠そう俺もそのうちの一人だ。


 真言を得た時と同じように感覚で理解できる。


 自分がその転移門の管理者であり、それを操作できることが。同じ感覚を覚えるということはやはり転移門も真言や真力が何か関係しているのかもしれない。


(実際戻ってきた人の中でも転移門の管理者(ゲートマスター)になれなかった人は異世界で真言を得られてなかったって話だし、真言や真力を有していることが条件なのかもな)


 その上で転移門を通ることも必要だと思われる。転移門を通らずに転移門の管理者(ゲートマスター)になった人はいないことからもそれは最低条件なのだろう。


 それ以外にも条件があるのかもしれないが現状では分からない。


 なにせ俺を含めて日本の転移門の管理者(ゲートマスター)は三人しかいないというのだから条件を検証するにしても数が少な過ぎるのだ。


 こういった情報を教えてくれたのは政府の役人だ。


 警察に保護(あるいは確保)された後に異世界から戻ってきたということが本当かを確認されて真言やら真力について話したら、怪しまれていた態度が急変して病院で各種検査をやらされた後に日本政府の役人と面会させられたのだ。


 現在、日本だけでなく世界各地で転移門が開いていること。


 そのせいで何人も行方不明になっていると思われること。そんな中、自力で異世界から戻ってくる人が少数いることなど先ほどの転移門の管理者(ゲートマスター)の話も含めて。


 その上で迂闊に周りに自分が転移門の管理者(ゲートマスター)であることを吹聴して回らないようにと注意された。


 俺以外の転移門の管理者(ゲートマスター)が戻ってきた時に色々とあったらしい。


 だがそれ以上の詳しい話は後日となった。


 体が重くて思っていた以上に疲労していたことと、家族に会いたいという願いを役人が聞き入れてくれたからだ。


「ご家族にはこちらから連絡をとってあなたが無事である事と、ある程度の事情を説明しておきました。ですのでご家族を含めてくれぐれも他言無用でお願いしますね。少なくとも後日、こちらからの詳しい事情の説明があるまでは」

「はい、分かりました」

「あと何か体に異常が起こった場合はすぐに連絡してください。検査で異常は出ませんでしたが用心に越したことはないので」


 こちらの体調を気遣ってなのかわざわざ人目につかないようにと車を用意して送ってくれている。


 替えの服も用意してくれたのでそのまま帰るように言われるかもと思っていたのだが。


(さっきの話に嘘がなければ門の開閉ができる転移門の管理者(ゲートマスター)は現状では俺を含めて三人だけ。これからどのくらい増えるか次第かもしれないが、現状では希少で替えの効かない存在ってことなのか?)


 少なくとも俺が管理する門から異世界に行くには俺の許可が必要だ。それを把握しているのなら政府としてはこちらの協力を望むのかもしれない。


(まあそういう面倒なことはあとで考えよう。今はとにかく家に帰りたい)


 帰って家のベッドでゆっくり寝たい。


 いや、その前に米を食いたい。冷たいジュースだって飲みたいし、エアコンの効いた快適な部屋でダラダラするのも捨てがたい。


 そんな風にやりたいことがいくらでも頭の中で浮かんできていたが、家の前まで来た時点でそれらのことは頭の中から消え去った。


 家の前で父や母、妹だけでなく結婚して家を出ているはずの姉までいる姿を見たら。


(ああ、俺は帰って来れたのか)


 魔物なんて超常の存在が蔓延っているあの異世界から。


 騒ぎにならないように家の中まで入ったところで俺は大泣きしている母親に抱きしめられた。


 普段は生意気な妹も泣きながら腕にしがみついてきていて、姉も目に涙を浮かべて頭を撫でてきている。


「おかえり、司」


 少し離れた位置で父が安堵した様子で声をかけてくる。


 その何気ない言葉に俺は心が温まるのを感じながら万感の思いを込めてこう言った。


「……ただいま」


 気付けば俺の目から涙が溢れていた。

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