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炎の舞踏会 2


 「野蛮人」の催しが最高潮に達した頃、その惨劇は起こった。


 どんな高貴なお方がこの下品な役を演じているのか、もっとよく見たいと思った招待客の一人が、突然衛兵の持つ松明を奪うと、彼らの側に近寄った。

 「野蛮人」の衣装は、毛むくじゃらの身体をそれらしく見せるために、ぴったりと張り付くほどの生地に無数の細く裂いた布を縫い付け、更に油を滲みこませて乾燥させたものだった。松明の火の粉が彼らに降りかかり、あっという間に燃え出したのだ。鎖でつながれた彼らは、お互いに離れることが出来ず次々と炎に包まれた。


「誰か、陛下を!」

「早く火を消せ!」

「陛下をお助けするんだ!」

 瞬く間に悲鳴と怒号が響き渡り、その中を火だるまになって叫び逃げ惑うという、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。

 そんな中、一人の貴婦人が自分の纏っていたローブを国王に被せ、漸く王は救い出された。


 この出来事は、炎の舞踏会と言われ、後々まで様々な憶測を呼んだ。

 曰く、「野蛮人」の催しを言い出したのは王弟ルイであり、松明を近づけたのも彼である、という噂。また、それとは逆に提案はルイであるが、彼は舞踏会に出席していなかった、松明を近づけたのは彼の部下だったという噂もあった。

 いずれも王弟が犯人であることを示唆しており、彼はまたしても不利な状況におかれることになったのだ。


 そんな中、舞踏会の後も正気を保っていたシャルル6世は、再び狂気の兆しを見せた。

 平穏な時間はわずか数カ月で過ぎ去った。前回と違い、万全の備えをしていたために、国政に大きな混乱は無かったが、日を追うごとに悪化する夫の狂気に、イザボウは失望する。彼は、今度も妻を認識せずに罵声を浴びせて遠ざけたのだ。

 妻を寄せ付けなくても身体の欲求はそのままで、質の悪いことに抑えがきかない。つまり、本能のままに欲をむき出しにする国王に、周囲は一人の女性を宛がった。後に小王妃とまで呼ばれ、王の子を産むことになるの王の馬丁頭の娘、オデット・ド・シャンテボールであった。

 王宮勤めをする者は、下働き以外で平民ということはあり得ない。馬丁とは言え頭という役がある以上、最低でも貴族である必要があったが、決して身分は高くなかった。如何に狂気の中にあるとはいえ、国王は国王。身分の高い女性では、王の寵愛をいいことにその父親が何かと権力を持ちたがる。それを防ぐためにも、敢えて身分の低い者から選んだのだ。


 前回王の回復を願ったイザボウは、今回もまた、必死になって神に願った。医療の発達していない時代、病気や精神疾患は、超常的な力のなせる業と見なされ、祈祷や捧げものに頼るしかなかった。神への祈りだけでは足りないと考え、占いやまじない、巷で有効と言われるありとあらゆる手段を講じた。以前の誓い通りに王女マリーを、莫大な寄付と共に修道女として教会へ送り出したが、結果は芳しくなかった。

 




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