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48 嘘と偽りと聖剣!(8)


「ナゼダ……オマエラ……イキテル!?」


 魔王が怒号を上げると魔物が私たちを取り囲む。攻撃は一度止み、戦闘は一時膠着状態となった。「ナゼダ!」と魔王が詰め寄る。

 キース様は眼鏡をくいっと持ち上げると、種明かしを始めた。


「……クリスの指示で、リディア様に近づく者は、どんな身分の者であれ必ずしっかりと身辺調査をしています」

「ええ!?」


 私以外の面々は「そんなの当たり前」とばかりに頷いている。何それ聞いてない!


「文化祭でリディア様と近づいた貴女も調査対象でした。初めは『問題なし』と報告がきましたが……、私の配下の者がいつの間にか魔物に毒されていた。私はそれに気付かないフリをしながら、改めて秘密裏に貴女を調査をしました。すると、貴女は森に頻繁に出入りして魔物を使役していた」


 サンドラのことをキース様が調べていただなんて……。驚きを隠せない私の横で、お兄様がさらに続けた。


「そこからは気づかれないようにお前をマークしてたってわけだ。そして俺は、キースに言われて、幻術の修行をしておいた。いざという時、お前の配下の『目』に幻想を見せておく為に」


 つまり、キース様とお兄様は、ずっと前からサンドラが怪しいって気付いてたってこと!?

 二人が知っていたってことは、もしかして……。


「すまない、リディ。せっかく仲良くなった友人が敵だと知ったら悲しむと思って……なかなか言い出せなかった」


 しゅんとクリス様が謝る。混乱して何も言い返せない私とは裏腹に、ステラは怒りを露わにした。


「だとしたら、私に報告しておくべきでした! そしたらリディア様を連れ去られるなんて失態を犯さなかったのに……!」

「アランに止められたんだ。ステラ嬢だって傷付くはずだと」

「!」


 私たちはクラスメイトだ。

 文化祭を共に乗り越えた、仲間だ。

 そう、仲間だった。


「うぅっ……!」


 ステラが悔しそうに泣く。私はそっとステラの肩を抱いた。

 もう戻れないのかしら。せっかく友達になれたのに。


「お兄様の剣も、クリス様の模造剣?」

「あ、ああ。そうだ」

「ちょっと貸してくださる?」


 そうして手渡された剣を、流れる速さで構える。


「わたくし、サンドラを救いますわ!」

「「「!?」」」


 宣言し魔王の元へ走りだす。


 一時休戦していたが、阻止しようと魔物が攻撃を放ってきた。剣で振り払いながら進むも、数が多すぎる。「当たる!」と思ったその時、クリス様とステラがそれぞれ魔法を放ち救ってくれた。お兄様とキース様も魔物とそれぞれ戦っている。


「リディを危険に晒したくない……!」

「そんな願いを叶えてくれるような御令嬢じゃありませんよ!」

「わかっている! リディ、気をつけろ」

「行け! 我が妹よ!」

「微力ながら助太刀します」

「ありがとう!」


 四人に守られながら魔王の元へ走る。魔王は何かに苦しみながら空を飛び、無作為に衝撃波を放っている。これが街の中心部ならあっという間に焼け野原になるに違いない。彼女がこの場所を選んでいたのも、もしかしたら──。


「サンドラ! サンドラ! 聞いて!!」

『ギャァァァ!!!』

「わたくしよ! リディア・メイトランド! 悪役令嬢よ!」


 私の名前に反応したのか、「悪役令嬢」というワードに反応したのかわからないが、一瞬魔王がこちらを見た。


「オマエモ、ワタシト、シヌ、ウンメイ……!!」

「!」


 魔物の口の中が光る。その時、クリス様が私を突き飛ばした。と同時に、口の中から光線を放ち、私が先ほどいた場所は焼け焦げた。


「リディ! 怪我は!?」

「あ、ありませんわ。助かりました。ありがとうございます」


 クリス様の顔を見ると、あちこち怪我をしているし、髪や頬は焦げている。彼も命懸けで私を守ってくれた。

 私も、クリス様を守りたい。光線から逃れる為に倒れ込んだので、全身が痛い。痛みに顔をゆがませながら、よろよろと立ち上がる。そして聖剣を構えた。魔王に対してまっすぐに剣を向ける。目線は魔王を捉えたまま、今の素直な気持ちを口にした。


「──クリス様、わたくしは……、貴方のことをお慕いしておりました」

「!」


 視線を向けることなど出来なかった。もう二度と彼をこの目で見れなくなったとしても。それでも、最期に想いだけは伝えたかった。言い逃げみたいになるけれど、それでも彼の心に残りたかった。


「リディ──!」


 思い切り地面を蹴り上げて魔法を展開する。火魔法を応用してジェット機のように下に噴射し、魔王の元へ飛び上がる。落ちるまでが勝負だ。


「サンドラァ! 目を覚ましなさぁい!」


 紅い髪の悪役令嬢が思い切り剣を振り上げた姿が、魔物のルビーの瞳に映った──。


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