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46 嘘と偽りと聖剣!(6)


「さぁ始まりました! 世界壊滅ゲーム! 我が国の王都だけでなく全域に魔物をばら撒いてお送りしております」

「なんですって!?」

「まずは王都を壊滅していきまーす!」


 サンドラの陽気な解説とは、全く相容れない危機的状況に、私たち二人は青ざめていく。

 サンドラはそれを面白がって、どんなところに魔物を配置しているか、楽しそうに語っていた。


 映像では黒龍が火を吹き、聖騎士団がじりじりと退避している。このままでは王都は火の海だ。


「おおっと! ここでディーン様の登場です!」

「お兄様!」


 黒龍が不気味に空を舞う。空高く昇ったかと思うと、上から雨のように火の玉が降る。兄と修行を積んできたからこそ、その危機的状況が如実に分かる。これは、まずい……!


「お兄様! 逃げてえええ!」


 お兄様が剣を振り上げるも、火の玉が直撃して──。


 ザザザザザザ…………


 黒龍の攻撃のせいなのか、そこで映像が途切れた。まさか、お兄様が……?

 

「ディーン様はゲームオーバー。ディーン様のキャラが違うのもビックリしましたよ。女性が苦手なんて、チャラ男設定だったはずなのに、ふふっ可笑しい」


 サンドラはまだ陽気に喋る。

 やめて、もう、やめて……。


「リディア様がいろいろ改変しているから、貴女が私と同じように前世の記憶持ちだということはすぐにわかりました。貴女のおかげで動きやすかったです」


 私の……せい? 

 絶望する私を見て、満足そうに笑うサンドラ。


「ふふふ。さぁ、次の方はどうやって死んでもらいましょうか」


 画面が切り替わる。

 国民の避難を促しているキース様だ。防空壕のような穴に、逃げ遅れた人を入れて、次の現場へと走っていく。


「キース様も色々作戦を練ってくださってたみたいですけれど。彼についている部下は私の配下の者なんですよ」

「!?」

「避難した国民の皆様共々、キース様にも逝ってもらいましょうね」

「や、やめて……! お願い! やめてちょうだい!」


 その瞬間、キース様が背後から誰かに刺された。そしてそのままドサリと倒れ込む。


「いや! 嫌……! キース様!」


 サンドラに向かい魔法を放つも、跳ね返って自分が吹っ飛んだ。壁にガンッと身体があたり、そのまま倒れ込む。


「リディア様っ!」

「ゴホッ! ゴホッ!」

「魔法は使うだけ無駄ですよ? さて。シナリオ通りなら、ステラ様の選んだ方以外はお亡くなりになる運命。……ということで王太子殿下のお命も狙いまーす」

「いや……や、やめて……」

「わ、私、そんなつもりじゃ……!」


 魔物と戦闘中のクリス様が画面に映る。

 一番会いたいけれど、一番ここに映って欲しくない。クリス様も複数の魔物に囲まれているが、聖魔法で次々と倒していく。


「あら、殿下はシナリオよりも強いんですね」

「……っ! もう、やめて!」


 鉄格子から手を出して魔法を飛ばしてみるが、軽々とサンドラは避けた。不気味なほどの魔力を感じて、全身に鳥肌が立つ。


「無駄ですよ。聖剣があればまだしも、貴女達の魔法じゃこの牢は壊れませんし、私は倒せません」

「聖剣……」


 画面ではやや劣勢ではあるものの、剣を握り振るうクリス様が映っている。袖の中に隠してある彼からもらったブレスレットを握りしめる。どうか無事でいて。死なないで。どうか。届いて──!!

 息を思い切り吸い込むと、私は大声で叫んだ。


「クリス様ーーーー!!!!」

「!?」


 ブレスレットがカッと光を放ち、サンドラ改め魔王が一瞬怯む。次の瞬間にはクリス様が私の目の前に立っていた。ステラは泣き笑い、魔王は驚いた表情をしている。


「リディ!」

「説明は後です! その剣を振って!」


 私に駆け寄ろうとするクリス様を制止し、魔王を指差す。クリス様はあっという間に状況を把握したのか、魔王に向かい剣を向け、私に言われるがまま剣を振ると、牢の柵を壊すことに成功した。やはり──。


「なっ。なぜ牢が……! ふ、ふふ、しかし聖剣じゃない剣では我は倒せんわ!」


 サンドラだったはずの少女は、黒い靄に包まれたかと思うと、次には完全に魔物に形を変えていた。異形ともいえるその姿に少し同情する。もし、日本の少女だった自分が魔王に生まれ変わってしまったら、私はどうしていただろう。彼女のように、他の登場人物を苦しめようとしただろうか。


「……悪いがこれは聖剣だ」

「!?」


 クリス様が聖魔法を展開し、握る剣が光を纏う。クリス様は魔王へと駆け出し、勢いよく剣を振り落とした。


「キャァァァ!!!!」


 わずかに攻撃がそれた。魔王は悲鳴を上げ、洞窟の出口へと逃げ惑う。私たちも逃すまいと後を追い走った。


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