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13 思い出したのに、婚約!(6)

 孤児院のボロボロになった扉を開けると、子どもたちが飛びついてきた。サニーの姿もありホッとする。


「リディアおねえちゃぁぁあん!!」

「よくぞご無事で!」


 院長先生は、サニーを止められず申し訳ないと謝罪し、サニーを助けてくれてありがとうございますと涙しながら何度も何度も頭を下げてくださった。サニーはこれからこっぴどく叱られそうだ。


「怪我をした子はいますか? 私が治癒いたしますわ」

「まぁ! リディア様が? なんということでしょう!」


 治癒魔法の使い手はなかなかいない。院長先生は大変驚きながら、逃げる途中転んで怪我をした子数名を連れてきた。私が聖石を使い怪我を治すと、その度に子どもたちが歓声を上げた。孤児院の皆は運良く素早く逃げた為、小さな怪我ばかりで私は大した魔力を使うことなく治癒できたのだった。


 その後、私は街の怪我人を次々と聖石で治癒していった。殿下も手伝うと申し出てくださったが、聖石を使用したことはないだろうし、殿下を働かせたとバレたらお父様に叱られそうな気がしたので固辞した。


 殿下は私の後についてまわり、私が治療する間、他の患者をトリアージしたり、励ましたりと色々動いてくださった。


「リディア様に傷を治していただけるなんて!」

「聖女様なのでは?」

「リディア様、ありがとうございます!」


 感謝の言葉を直接もらえるのは嬉しかった。


 お父様とお兄様が魔物を討伐して街へ戻ってきた頃には、たくさんの怪我人を癒した後だった。


 聖騎士団の皆さんは他にも魔物が潜んでいないか確認し、結界魔法を展開するため領地に残ることになった。私とお兄様は馬車に乗り込み、一足先に王都へと戻って殿下を王宮まで送る。


「……驚いた」


 ずっと黙っていたクリストファー殿下が、馬車が出発して随分時間が経過してから、ボソリとつぶやいた。

 

「クリス?」

「君たちは魔物を討伐するのに慣れているのか? リディア嬢が聖魔法まで使えるなんて……驚いた」


 そりゃ驚くだろう。

公爵令嬢が剣を振り回し、火魔法で炎出しまくって聖魔法まで繰り出して、ワイルドボアを一人で倒したのだから。


「わたくし、魔物を倒すのは、今日が二回目でした」

「!」

「俺は森に出て少し練習していた。……近年魔物が出没する機会が増えているからな。鍛錬してる」


 お兄様が魔王復活のことは言わず、少し誤魔化して言った。国王陛下には、魔王復活の予言を私が聞いたのだと話してあるはずだが、クリストファー殿下は知らないということだろうか。


「しかしリディア嬢まで」

「我が公爵領で起こったことですから。私も加勢するのは当然です。万が一にも殿下の御身に何かあってはいけませんもの」


 完璧令嬢モードで淑やかに返す。今更だが猫をかぶってしまう。


「私は、リディア嬢は剣など握らぬと思い込んでいた。魔法も防御魔法程度なのではと。まさか聖魔法の使い手だとは。恐れ入ったよ」


 普通の令嬢は殿下の想像通りだと思いますー! 規格外で申し訳ない! だから私以外のご令嬢と婚約してね!


「はしたないところをお見せいたしました」

「……いや。戦う貴女は……美しかった」

「「はっ!?」」


 お兄様と二人、予想外の殿下の発言にギョッとした。


「リディア嬢が放つ炎の聖魔法も美しい。貴女のその美しい赤色の髪によく似た、綺麗な光魔法だった」

「へ、へぇ?」

「それに比べ、私は護衛に守られるだけで何もできなかった。申し訳ない」


 ゆっくりと殿下が頭を下げる。殿下が頭を下げるだなんて!!


「あ、頭をお上げください!」

「クリスが気にすることじゃない。リディアも言った通り、公爵領で起きたことだし、クリスに何かあればそれこそ国の損失だ。クリスに怪我がなくて良かった」

「そう言ってくれて、ありがとう」


 その後は、クリストファー殿下は少し沈んだ雰囲気で黙り込んでしまった。きっと私がとんでもないお転婆だと知って、失望していらっしゃるのだわ! 嫌われてしまったに違いない。胸の奥が何故か少し痛むけれど、これで、ヒロインの恋の応援にきっと専念できるはず。アラン様ルートを見学させてもらいますからね!

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