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世界が変わっても所詮、俺は俺  作者: ガルピー
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風呂

風呂にします。構造などは良く知らないので大目に見てください

 今、俺たち二人は森の中を歩いていた。幸いにもそこは普段から行商人が商品を運ぶのに使っている道らしく、ある程度の道幅が保証されていた。が、舗装は甘く足元に注意しておかないと転びそうになる程度には地面がぼこぼこであった。カイラの話によると次の街まではもう少し時間がかかるらしい。それは別にかまわないのだが、一つだけ問題がある。今のところ、食事、睡眠、運動は問題なくできている。だがここまで言えば分かると思うが、一つ足りないのだ。日本人ならば必ずと言っていいほど、するものができていないのだ。そうあれだ。その日の終わりに、人によっては数回、必ず行わないと気になって夜も寝られないというやつだ。俺は普段は一、二回しか行わないのだが、街を追い出されてからは次の街に行くことを最優先に考えていたため、どうしても足を止めてまで、することではないと思っていた。現状俺たちのパーティーは応急セットや食料といった冒険に出るのならば必ず必要になるものを持っていない。その場にあるものを活用しながら、どうにか進んでいるということもあり、早く街に着きたかった。だがもう我慢の限界だ。カイラも口には出さないが我慢できない様子だ。そう汗が気持ち悪いので風呂に入りたいのだ。

 今目の前には小さな川が流れている。一応この流れている水をせき止めて簡易風呂は作ることができるのだが、早く進むべきなのではないかと考えている。いつ昨日みたいなモンスターが出てくるか分からない。もし入浴中に襲われでもしたら、たちまちに全滅してしまう。そう思うとこの場で風呂に入るのはリスクが高いのではないかと思えてくる。

 「ねえ蓮、何を考えているの?」

 いまここに立ち寄ったのは水を確保するためである。俺の魔法で水を出してもよいのだが、こうして自然の水があるならばそれを飲むのに越したことはない。それになんか自分の魔法で作ったものを自分で飲んでもう一度体の中に戻すのは気持ちが悪い。

 「いや、この川を少しばかり、せき止めて風呂を作ろうかと思ったんだけど、さすがにやめたほうがいいかなって考えてた」

 「えっ!そんなことないよ!絶対するべきだよ!」

 食い気味にそう言われた。こうした旅には慣れていると言っていたが、慣れているからと言って、体が汚いままでも気にならないということではないらしい。カイラの綺麗な銀髪の隙間から見える翡翠色の瞳には、早く風呂に入りたいという思いがありありと映し出されていた。

 「よし!俺も汗を流したいし風呂作るか!」

 そう言って、俺は川の流れの一部を地面の形を変えることで、あらかじカイラに切ってもらった、均等な形の木を組み合わせた風呂を作った。はじめは川の流れをせき止めてしまって水を溜めようとしたが、川の下流で生活している人がいるかもしれないと思い、少しの間、川の流れの一部を変えて、作ることに決めた。足を延ばしたかったのだろうか、カイラはかなりの数の木を切っていたため、それらをつなげるとかなりの大きさの風呂が出来上がった。

 しばらくして水が溜まってきた。どう考えても一人分の大きさの風呂ではないが特に水漏れ等の心配もなく完成した。そして襲われないために、風呂の周りの地面をあたりに生えている木よりも、少し高いぐらいの位置まで上昇させた。そのあと、川の水を浄化する意味も込めて火の魔法を使い水を一度沸騰させ、それがちょうどよい温度になるまで待った。またこのままでは一つの風呂に二人で入ることになるため、間に仕切りを立て長方形の風呂が二つ並んでいるような形になった。入る前はどちらか一方が監視をするという話だったか、無理な話だった。湯気が立ち上る暖かいお湯、そして襲われないため地面を周りよりも高くしたことによって生まれた絶景。そう無理なのだ。我慢することなど無理だったのだ。そのため同時に入ることになったのだが、さすがに同じ風呂に入るのはまだ無理だとカイラが言ってきた。なので俺は仕切りを作った。残念だ。

 だが一度入ってしまうと体中から疲労が流れ出るような感覚に襲われた。

 「カイラ、そっちのお湯の温度はどう?」

 「うん、特に問題ないよ」

 そんなのんびりした口調でぼーっと何も考えず湯につかっていた。

 「次の街まであとどれくらいか分かる?」

 「うーん、全力で走っていくなら、半日くらいかな」

 「なら、風呂からあがった後は全力で走って次の街まで行くことにしない?」

 「うん、私はそれでいいよ」

 よし、決まった。今日中に何とか次の村までは付けそうだ。だが鳥の声や木々の葉が風で揺れる音などを聞いていると眠くなってくる。ウトウトしかけていたと時に、隣、カイラのいる側からバシャという音がした。どうやらカイラが風呂からあがったらしい。俺もそろそろ上がるとするか。そう思い風呂から出て、着替えようと服を取りに行った。着替えを終え、カイラと合流した。カイラの顔がポカポカと紅潮しており、いつもより可愛く見えた。

 「すっきりした!気持ちよかったね」

 「うん、作ってよかった」

 そう言いながら地面が元の位置に戻っていくのを、足からの振動で感じていた。

 「それじゃあ、次の街に行こうか」

 「うん、蓮、準備は大丈夫?」

 「もちろん」

 身体強化の能力発動と風の魔法を自身にかけて走り出す準備は完了した。おそらく今日の夜9時ごろには着くことができるだろう。カイラに置いていかれないようにしないとな。

 「それじゃあカイラ、行こうか!」

 「うん!」 

風呂っていいですよね。

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