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世界が変わっても所詮、俺は俺  作者: ガルピー
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初戦闘

定番のやつと戦います。

 夜が明け始め、太陽の光が山々に生えている木々の隙間から俺たち二人を照らし始めていた。昨日の夜から歩き続けていたが、肉体的な疲労は感じていなかった。しかし精神的には大変疲れているのが分かる。

 そしてしばらくして太陽が完全に姿を現した。だが一つ気になることがある。あたりの草陰に何かがいる。カイラはさほど気にせず今まで歩いていたが、俺にはそう考えることはできなかった。夜道を歩いている間、何かが動いているのは気づいていたが異世界には携帯や電灯といったものは、街や村といった人が住む場所以外には存在せず、月明りのみが唯一の光だった。火を使うことも考えたが、街を出るときにあの偉そうなやつらに向けてぶっ放そうとした分で魔力をほとんど使ってしまったらしく、焚火の最後に残るような、吹けば飛ぶような火種程度ものしか出せなかった。それでも一類の望みにかけて、火を出したが夜風に乗ってどこかへ飛んで行ってしまった。カイラに魔法は使えないのかと聞いてみたがどうやら彼女や物理攻撃を専門としており、魔法のほうは、からっきしだという。そんなわけで、よく知らない道をよくわからない生き物に囲まれながら、夜道をあるいて来た。さすがに疲れる。

 休みたい気持ちはやまやまなのだがさすがに、昨日の夜からの疑問は無視できない。そう思い、草むらの中をかきわけてみてみるとそこには、ゲームの中では、よく見かける、ゲル状の青い、ドロッとした目も鼻も口もどこについているか分からないような饅頭のような奴がいた。

 スライムだった。

 そう気づくと安心できる。はずがなかった。というかお約束だ。スライムは弱いと思い込み、現地の人間から強いに決まっていると教えられ、自身の軽率な行為を悔やむのは。そう定番なのだ。だから俺は初めから聞く。

 「カイラ、こいつって弱いのか?」

 そう聞くために後ろをふりかえると、カイラは剣を抜いて尋常じゃない様子で構えていた。

 「当たり前!よく見て、そのスライムの中を!」

 そう叫ぶので見てみると、スライムの中には今まさに消化されようとしている人間の指や内臓らしきものがいくつか浮いていた。

 「なあ、あれって魔法とか剣とかで倒せないの?」

 「蓮、あなたには、あれに剣や魔法が効くと思うの?それによく見てよ、あのスライムの中に一つだけ輝いている赤色のプレートを。あれはこの世界の冒険者に与えられる階級を示すもので、赤色のそれは上から数えて五番目の位を意味するんだよ。わかったらとっとと離れて!」

 すぐに跳び退いた。もう魔力も少ないし、カイラの剣技も通用しないとなると、どうするべきだ?

 「危ないっ!」

 その声の波を耳が捉え、信号として脳に捉えたときにはもう息ができなくなった。

 がっは、苦しい、苦しい、息ができない。目も開けられない。何だこれ。顔の穴という穴をふさがれた!やばい、これは本当にやばい。昔プールで足が攣って溺れたときの記憶がよみがえる。本当に苦しいし、酸素を渇望するように顔の周りのスライムをかきむしろうとするが、爪が入った部分からどんどん元の形に戻っていく。だめだ、意識が・・・

 ふいに顔周りのスライムの量が減った。おえっ、咳が止まらない。だが息ができる。なんでだ?。

 どうやらカイラが俺の顔に張り付いていたスライムを、俺の顔の形に添って切り裂いたらしい。そのおかげで抵抗が小さくなったスライムの進行を押し戻すことができた。

 「ねえ、大丈夫!?」

 「何とか、助けてくれてありがとう」

 「いや、礼を言うのはまだ早いよ。見て、あれ」

 カイラが切り落とした部分と俺にへばりついていた部分が合わさり、元の形に戻ろうとしていた。

 どうする?どうすればこの状況を打開できる?

 打開策は無いかと周りを見回しているとふと、自分の爪の間に残ったスライムの残骸が目に入った。その小さくなったスライムは本体、今まさに切られた部分を縫い合わせるように一つになろうとしている部分に戻ろうとしていない。さすがにここまで小さくなってしまうと、意思はなくなり、ただのゼリーのような状態になってしまうらしい。ならば、やることは一つだ。

 俺は残りのわずかな魔力で鉄の網を作り、自身の足元に落とし穴を作った。だがこれは一人では完遂できない方法だ。

 「カイラ、もう一度あのスライムを二つにできるか?」

 「うん、できるけど何か策はあるの?」

 「ある。けど俺一人じゃ無理なんだ。助けてくれるか?」

 「もちろん!一緒のパーティーなんだもん!」

 「よし、俺が合図したらさっきみたいにスライムを真っ二つにしてこの穴に叩き落してくれ」

 「分かった、でもあんまり無茶しないでね」

 「安心しろ、俺は異世界からのチートもちでカイラが心配することなんて何もない!」 

 そう言い、俺はスライムの前まで来た。その瞬間にスライムは俺の顔にへばりついてきた。やはり苦しい、けど今はもう何も焦ることはない。カイラがいる場所まで走っていくだけだ。

 そうして俺はスライムを顔面につけたまま、元いた場所まで走り切った。それとほぼ同時にカイラが先ほど同様、スライムを一刀両断した。切られ顔から剥がれ落ちた部分は穴の中に落ちていった。残った俺の頭にへばりついたほうは、より大きな部分と一つになるために穴の中に自ら落ちていった。それを確認して、カイラは穴の上から鉄の網を落とした。鉄の網によってバラバラに細かくなったスライムを確認した俺は、その小さなミニスライムを風の魔法によって四方に分断させ接合できないようにした。

 それが確認できると、気が抜けたのか俺は地面に倒れてしまった。

ありがとうございました。次はどうしようか迷っています。

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