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世界が変わっても所詮、俺は俺  作者: ガルピー
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出発の日

旅にでます。

 広間に入って一番最初に目が引き付けられたのは、少しばかり周りより高い位置に設けられた玉座の後ろに見える、陽光に照らされ美しく光輝いているステンドグラスだった。その前のひげを伸ばした偉そうなやつはいらないが。

 王の前まで連れてこられ頭を下げさせられた後、少しして顔を上げるように言われた。そしてそれに続いて判決が司教らしい恰好をしたやつが口を開いた。

 「転生者西野蓮、貴様は今後この街に足を踏み入る権利は無く、次にこの街に訪れてもよいのは、魔族を滅ぼしその報告をしにこの街に来るときのみである」

 は?なんて言った、あいつは今。なんで助けてもらう側の奴があんなに偉そうな態度を取れる?勝手にこちらの世界に呼び出しておいてその態度は何なんだ?

 さらに言葉は続けられた。

 「聖騎士カイラ・アーグネス、貴様も管理不行き届きで同罪とし、西野蓮と同じくこの土地から去ってもらう」

 えっ?一瞬何を言っていいるのか分からなかった。なんでカイラも? 

 「おい、それはおかしいだろう」

 「うるさい、口をはさむな。お前が発言する権利はこの場において存在しない。黙って聞いていろ」

 そう言われて、叩きのめしてやろうと思いこぶしを握った。だがそれを制するように横にいたカイラが司教に対して処罰を受け入れるとの返事をした。本人がそういうならもう何も言えない。握った手をほどき、残りの話を右から聞いて左に流すように何も考えずただこの時が過ぎるのを待っていた。

 そうして、街から出ることになった。あの後カイラも俺についていくと言ってきてくれたので快く了承した。

 「あの時は、ありがと」突拍子もなくカイラがこちらを向きそういった。

 なんのことか分からず、困惑した顔をしている俺にカイラは言った。

 「私がこの街に居れなくなったときに起こってくれたでしょ?」

 「あーいや、それは、うーうん」

 曖昧な返事をする俺にカイラは笑顔でこちらを見ていた。だが実際あれは本当にたまたまだったのだ。あの時俺はどんな判決でも受け入れるとか、かっこつけていたが実際に偉そうにいわれると腹が立ち目の前にいたやつらをぼこぼこにしてやろと考えていた。そこに偶然都合のいい出来事が起こっただけというわけなんだ。まあそのことは胸の内にしまっておこうと思う。カイラ可愛いし。

 「ねえ、街を追い出されたわけだけどこれからどうするの?」

 「そうだな、とりあえず近くの街に行こうと思うんだけどどうかな?」

 「うーん、いい考えだと思うけどこの近くに街は無いよ。確か山を三つか四つ超えないとなかった気がする」

 それを聞いて少し顔が引きつった。山三つ四つだって?遠すぎないか?だけど、もうこの最初の街にはいられないし、行くしかないのか」

 そうやって、考えている間にカイラは俺の前に来てこういった。

 「蓮と私なら別に問題ないでしょ?」

 その言葉を聞いて確かにそうだなと思った。よくよく考えてみればこんな美少女と二人で旅だなんて、この世にいる男の夢じゃないか。何を悩んでいたんだ。馬鹿らしい。もしかしたら旅を通してカイラともお近づきになれるかもしれないし。そんなことを考えると今のこの状況を悲観することなんて、本当にあきれるほど愚かなことだった。

 そうと決まれば早速進もう。カイラにそう告げるといたずらっ子のような幼い顔をして俺の手を引っ張った。やめてくれ、俺のことを好きだと勘違いしてしまう。だけど今はこの手のぬくもりを全力で感じ取ることに決めた。

 それでもやっぱり、こうなった元凶の偉そうなやつらは、ムカつくから火の玉を6発とその横に風の球を出す魔法陣を計十二個作り、手をあいつらがいた場所に向かってかざすと、頭をひっぱたかれた。

 「やめなさい」

 そうカイラに言われ魔法陣を消した。

 ふと上を見ると、時は既に星が輝く夜の時間で夜風が優しく吹いており、周りからは虫の鳴き声が聞こえてくる。この世界に来てから初めて星空を眺めたが、本当に今まで見たことがないぐらいの星が、空一面に敷き詰められていた。

 「きれい」

 「きれい」

 二人してそう同時につぶやいたことに気が付き、互いの顔を見て笑った。そのあと前を向きなおし、二人で次の街を目指すためにゆっくりと進んでいった。

 こうして武器も装備も現金も何もないが俺とカイラの旅はようやく始まった。

次は何か倒すと思います。

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