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世界が変わっても所詮、俺は俺  作者: ガルピー
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充実した一日

よろしければご覧ください。

 腹を満たした後、俺たちは適当に街を練り歩き目についた店に入った。その店は普段着するような衣服が売られておりカイラは店に入ると目を輝かせていた。


 「ねえ、これどう思う?」


 売られていた服を手に取って体にあてがい質問してきた。


 「うん、可愛いと思うよ」


 「知ってる!」そう満面の笑顔で言ってきた。


 その後は手に取った服を元の場所に戻してまた歩き始めた。それから何回か同じようなやり取りがあったが、カイラは特に何かを買うのではなくただ見て回るのが楽しいという感じだった。


 「ねえ、蓮。服、選んであげようか?」


 唐突にそのようなことを言われて少し申し訳ない気持ちになり、それが顔に出ていたらしい。


 「いや、違うよ。勘違いしないで!別に蓮のセンスが何とかって言う話じゃなくて、蓮普段から、同じような服ばかり着てるでしょ?それが悪いってわけじゃないんだけど、せっかくなら別の服も着たらいいのにって思ってね。それに別の格好も見てみたいし」


 最後の方は聞き取れなかったが、確かに良く考えてみると俺は普段から同じような色の服ばかり着ている。それもこだわりがあるとかではなく、服に対して興味がないため、一回体になじんだものをずっと着続けているというだけだ。


 「確かにいつも同じようなものばかり着ている気がするな。選んでくれるなら有難いが、本当にいいのか?」


 「うん!服は見てるのも楽しいけど、人の服を選ぶのはsも好きなの。そうと決まったら早速色々見て回ろ!」


 そこからはカイラに手を引かれて何件も服屋をはしごすることになった。それすらも今まで経験したことが無いことだった。今までだったら服が着れなくなってから服を買いに行って、その買いに行った先で全て揃えていた。そんな俺が何件も店を見て回ることなどしたことがなく、楽しい反面疲れてしまった。


 「蓮、疲れた?」


 いくつかの店をまわりカイラに見繕ってもらった物を数着購入した後、俺たちは広場の噴水の周りにあるベンチに腰かけていた。


 「少しだけ。でも、普段あんなに店をまわって吟味して買わないから新鮮で楽しかったよ。すごく充実してた」


 「そう。ならよかった!あっ、そうだ少し待ってて」


 そう言ってカイラはベンチから立ち上がりどこかに歩いて行ってしまった。


 しばらく時間が経った後に、何か冷たいものが頬に触れるのを感じた。少し驚いて振り返ってみるとそこには、悪戯な顔をしたカイラが何か飲み物をもって立っていた。


 「はいこれ、あげる」


 カイラの両手にはアイスティーが二つ握られていた。手渡された方を手に取り、口をつけると火照った体に染み渡っていった。


 「美味しい?」


 「ああ」


 「よかった」そう言ってカイラが微笑んだ。


 飲み物を飲み終わるまで俺たちは一言も話さなかった。だが特に会話が無い今の状況も心地よかった。


 「そろそろ、夕食でも食べて宿に戻る?」


 カイラがそう提案してきたが、俺はデートをすると決まった時から行きたい場所があった。


 「夕食を食べるのはいいけど、そのあとも、もう少しだけデートを続けたい」


 変な独り言のようになってしまった。その口調にカイラは少し吹き出した。


 「何、その言い方。どこか行きたいところでもあるの?」


 「うんあるよ。カイラとデートするって決まった時に、そこだけは行きたいって思いついた場所があるんだ」


 そう真剣に語る俺の言葉をカイラは茶化したりせずに聞いてくれた。


 「分かった。それならそこに行くことにしよ。どこに行くかは分からないからエスコートしてね」


 カイラの依頼に頷いて答えた。


 「とりあえず、夕食、何か食べに行かないか?」


 「そだね。何食べる?」


 その問いかけに二人とも特に答えを持ち合わせていたわけではなく、二人して首を傾げることになった。


 「まあ、今日は行き当たりばったりのデートだったし最後も同じようにしていいんじゃない?」


 「そうだな。歩いているうちに気に入った店にでも入るか」


 既に陽は落ちており辺りは薄暗くなり、街灯の淡い光が足元を照らしていた。また街には昼間とは異なる種類の声が聞こえるようになった。仕事を終えた職人や冒険者などが続々と戻ってきており、今日の一日の疲れを癒す場所を探してうろついている。


 「行こうか」


 「うん」


 俺たちは広場に設置してあったゴミ箱にアイスティーが入っていた容器を捨てて広場を後にした。


 その後しばらく店を探したが結局、予約もしていない状態で小綺麗な店に入ることはできなかったため、普段クエスト終わりに食べるような焼き鳥のようなものを食べることになった。


 「美味しかったね」


 「ああ」


 俺たち二人は満足していた。いつもとほとんど変わらない食事のはずなのに「デート」という言葉がその味を増しているように思えた。


 「それじゃあ、そろそろ行こうか」


 「うん」


 そう言って俺は目的の場所までカイラを連れて行った。時間は既に経っている。街の中には陽の名残は完全に消え去っており、空には既に月が昇っていた。


 「そろそろ、着くと思うから少しだけ期待してて」


 「分かった」


 五分ほどすると目的の場所が見えてきた。そこには塔がそびえたっており、中の階段を登りきるとようやくつけた。

 

 「着いた」


 「わー!すごい!綺麗!」


 そこは街全体を見渡せる場所だった。街は大小様々な建物から零れ落ちる光によって飾られ地上の星空を作り上げていた。上を見ても下を見ても満天の星空のようだった。そんな景色をカイラに見てほしくてここまで来た。満足してくれていると嬉しいが。


 「気に入ってくれた?」


 「うん!とても!あの街に来てから結構経つけどこんなに大きかったんだね。知らなかったよ」


 「俺もこの場所を知るまで見たこと無かったな」


 「蓮、こんな素敵な場所良く知ってたね」


 「いや偶然だよ。たまたま寝れない日に外を歩いていたら見つけれたんだ」


 「そうなんだ。でも本当にいい場所だね」


 「だな。俺も夜景を見るのは初めてだしこんなに綺麗だとは思わなかった」


 「えっ、見たこと無かったの?」


 「ああ、前来たときはもっと遅い時間だったから街は真っ暗だったよ」


 「そうなんだ」


 「でも、今日ここに来れてよかったよ。こんなに綺麗だなんて知らなかった」


 「そうだね」


 カイラのその言葉を最後に俺たちは再び街を見下ろした。


 「よし、そろそろ帰ろうか」


 二人でひとしきり街の夜景を眺めた後そう言った。


 「そうだね。明日からはまた四人でクエスト受けるから帰ろっか。今度はフガとサーラも誘ってこようね」


 そう無邪気にいうカイラを見ながら俺は「そうだな」と一言だけ返した。

 

 二人はその後階段を降り、先ほど見ていた夜景の一部に呑み込まれるように宿に戻っていった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。ここ数週間ほど体調を崩しておりました。まだまだ寒い季節が続くと思いますので、皆様も体調に気を付けながらお過ごしください。前回と今回は閑話休題という感じで書きました。また次回から話を進めていこうと思います。よろしければ次回もご覧いただけると幸いです。

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