何気ない日常
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魔族と初めて対峙したあの日から三日ほどが経過した。俺たちが魔族を倒した知らせを受け、ギルドはすぐにダンジョンの二階層以降の開拓を進めるための依頼を出し続けた。その内容は未発見の魔鉱石の発掘であったり、魔獣の討伐があったりとバラエティに富んでいた。
「どうしたの、蓮。ぼーっとして」
気が付けばカイラが隣に立っていた。
「なあ、カイラ。そもそも魔族ってどれくらいの数いるんだ?」
ふと疑問に思ったことを聞いてみた。そもそもこの世界に連れてこられたのは、魔王含む魔族や魔獣の殲滅を目的としてのことだったはずだ。だが、ここに来てから結構な時間が経ったにも関わらず、俺が倒したのはつい先日のあの魔族だけだった。このことを思うと、全ての魔族の殲滅なんて無理なのではないかと思う。
「うーん。どうだろ。でも気にしなくていいんじゃない?もし今、私が達成できないような数を伝えたら蓮はやめるの?この冒険を。やめないよね。だったらそんなこと気にしなくていいじゃん」
そんなことを親が子どもに説諭するかのように言ってきた。その瞳には反論を許さないといった意思すらも感じ取れるほどの物だった。
「分かった。気にしないことにする」
「うん!いい子、いい子!」
今度は包み隠さず子ども扱いし背伸びをして、頭を撫でようとしてくる。だがどう見ても届かないので少しだけ膝を屈めた。
「ところでカイラ、あの二人は今どこにいるんだ?」
「あの二人?」
「フガとサーラのことだよ。今日までは自由にしてくれって言っておいたから別にいいんだが、あの二人宿にも戻ってないだろ?」
「確かにそう言われると、この三日間見てないね。多分二人でデートでもしてるんじゃない?別に二人には結構な金額渡したからお金がないってことはないだろうし」
カイラの口から耳を疑うような言葉が発せられたのを俺は聞き逃さなかった。あの二人がデートだって?確かにそう言った気がするが俄かには信じられなかった。
「デート?」
「うん。デート」
こっちの目を見ながら真剣な顔でオウム返しされた。そうだったのか知らなかった。まあ誰が誰と付き合おうが知ったことではないし、これ以上詮索するのもよしておこうと思う。
「だからね。蓮。今から私たちもデートに行かない?」
「は?」
「だから、デートに行かないって言ったの。実は、私そういうの一回もしたことないからしてみたいの。デートを」
カイラは少し恥じらいながらも、こちらを力強く睨みつけるように見ていた。
「ああ、カイラが良いならデートしようか」
「うん、決まりね。それじゃあまた一時間後に宿屋の前で集合ね。それじゃあ!」
そう言ってカイラは外に出て行ってしまった。それにしてもカイラの口からデートなんて言葉が出てくることに驚きを隠せない。いつカイラの好感度を稼ぐことに成功していたんだ?無様な姿だけはいつも見せていたと思うが、好かれるようなタイミングなんて無かっただろう。そんなことを色々考えているうちに良く分からなくなってしまった。
それに、俺だってデートなんてしたことないんだよ。どうすればいいんだ。そんな空しい叫びが頭の中を反響している。
とりあえず一時間の猶予があるので、頭の中を整理しよう。
そう思って、ギルドを後にした。
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