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世界が変わっても所詮、俺は俺  作者: ガルピー
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魔法で作られた世界

よろしければご覧ください。

 男は何もない世界に閉じ込められていた。そこは視界の端まで雄大な海の水が満ちている場所であった。男は海の中で漂っていた。しかし決して沈んだり、大きな波が男を深海まで誘っていくこともなかった。ひたすらに穏やかな波が男の体を揺らしていた。


 「これが、ホロが言っていた魔法か」

 

 男は霞のかかった記憶を何とか手繰り寄せながら自分が今こうしている原因について思い返していた。


 「にしても、あいつ。カイラたちを本当に殺さないんだろうな」


 男は、男の仲間と思わしき人名を口にしていた。


 「まあ、何とかなるか」


 そう言って男は体から力を抜いた。体が波に揺られる感触が気持ちいいのか男は落ち着いた表情をしている。


 男がこの何もない世界に来たのには訳がある。というのもこの男は魔族に戦いを挑み、そして負けた。その結果が今、男が置かれている状況を作り出した。だが決して生きることを諦めたわけではない。男には確信があった。それは、自分は敗れてしまったが、自分の仲間は勝つということに。だからこそ男はいま、時が来るのをただ待っている。


 「にしても、暇だな。何かしようにも何もできないし」


 そう言って男は目を閉じた。そして考えた。


 魔族との戦闘においては、常に自分が劣っていることを自覚して立ち回らなければならないことを。また魔族は人間以上の身体性能を持っているということを。そして最後に、一人では勝てなくても多対一の形を取れば、勝つ可能性は大いにあるということを。


 しばらく波に揺られていると、今までは規則正しいリズムで男の体を揺らしていた波が次第にその均衡を崩し始めていることに男は気が付いた。真っ白な雲が浮いている、蒼く澄み渡る空にも亀裂が入り始めた。


 男はそれを見て、男の仲間が戦闘で勝利したことを確証した。そしてそれは実際のところ事実であり、この世界を作り出した者が死に絶えたためにこの世界は滅びゆこうとしている。


 時間が経つにつれ亀裂が大きくなっていき、その隙間から暗闇が覗いている。既に男の周りには水が無くなっており、男は枯れ果てた地面の上に佇んでいた。そして何か小さな声が聞こえてくる。その声量も次第に大きく明瞭になってくる。それと同時に男が立っている地面が揺れ始めたが、男は微動だにしていない。だがそれでも世界は、天地を無視して回り始める。そして遂にその魔法で作られた世界は壊れた。


 「蓮、起きて、終わったよ」


 男は肩を揺すられながら次第に意識が元に戻るのを感じていた。


 「ああ、知ってる。ありがと、助かった」


 男はそう言って自分の仲間を見回した後、ゆっくりと瞼をおろした。

ご覧いただきありがとうございました。次回以降は一人称視点に戻します。よろしければ次回もご覧ください。

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