呆気ない最後
よろしければご覧ください。
少女は見つめていた、自分が使った魔法によって身動き一つ取れなくなっている冒険者の姿を。少女には分からなかった。何故自分がこの目の前の小さな存在に、自分自身が扱える最も魔力を消費する技を使用したのかを。
「やっぱりこの魔法、使うと疲れるな」
少女は息を切らしながらつぶやいた。
「それにしても私の名前、褒めてくれてうれしかったな。えへへ」
少女はそんな些細な出来事を思い返す。
「にしのれんって言ってたよね。確かこの人と仲間は殺すなって約束したんだっけ。なら殺さないでおいてあげようかな」
だが少女はその「仲間」がいると思われる地面を見て、わざわざ掘り出すといったことまでは、しなくてよいと考える。
「でも、すぐには出てこれないだろうな。えっとなんだっけ、名前。忘れちゃったな。まあいいか。あの人、仲間を守るために周辺の土を魔力で強化して使っていたから、手で掘って出てくるのは無理だろうな。多分人間は餓死するだろうけど、そこまでは約束してないもんね。私が私の手で殺さないことが約束だし。いいよね?お兄さん」
煙の中で空ろな目をした冒険者に少女は、聞こえていないのを承知で話しかける。
「それにしても本当に疲れちゃったな。そろそろお兄さんのこと殺しちゃおうかな。それとも先にさっきの残り食べちゃおうかな。どうしよう」
少女は今まさに悩んでいる!といったわざとらしい顔をしていた。
「まあ、とりあえず先にご飯かな」
少女はそう言って冒険者の側を離れた。少女にとって食事は魔力を補給する最も手軽な方法であった。食事をすることで、それらの栄養を用いて自らも魔力を新たに生み出すことができる。だが少女が普通の人間と違うところはその食材に含まれている魔力を直接、吸収することができることである。生み出すのではなく、吸い取ることですぐに自身の力として使うことができる。
「どこにしようかなー」
少女はその肉の塊をどこから食べようか嬉々として選んでいる。
「うーん、やっぱり頭かな、それとも内臓、あーお腹減ってるからどこから食べようか迷うなー」
なかなか選べないらしい。お腹が減っているときの一口目は、その時用意される食事の中で何よりもおいしいと少女は考えているから妥協はしない。
「やっぱり、頭かな!」
ようやく決まったようだ。そのあと、少女は小さな手で首を掴み、足を肩にかけて、まるで農作物を抜き取るかのように力いっぱい引っ張った。
耳に残る肉がちぎれる音があたりに響いた。それでも少女は早く食べたくて仕方がないといった面持ちで続ける。そして遂に頭が体と離れ始め、あたりに血が飛び散り始める。その後は早かった。何かきっかけがあればすぐに壊れるのは全ての物において共通のことであり、それは今回も同じだった。
少女はようやく、抜き取った今回の食事を顔に着いた汗と血をぬぐいながら眺める。
「よし、やっと食べれる!いただきまーす」
苦労して手に入れた食べ物を口をめいいっぱい広げて齧りつこうとした。だが、少女の長い長い人生はそこで終わることになった。
少女の視界の先にあった頭が、その小さな手から零れ落ち、それと同じように少女自身の頭も下にずり落ちた。
気が付けば少女の顔は自分の体を下から見上げるような形で地面に転がっていた。薄れゆく意識の中で目玉を動かすと、そこには今しがた自分が倒した冒険者の仲間が立っていた。
「これで、終わりよ」
そこに立っていた少女の首を切断したと思われる女性がそう呟いた。
少女は考えた、何ができるかを。だが結局何も大したことは思いつかなかった。長きにわたるつまらないと思っていた人生が終わるだけで、少女には何も惜しむものが無かった。ああ、でも、もう一度名前を誰かに呼んでほしかったかも。そう思ったがそれもすぐにどうでもいいなという思いになった。
「あの頭、食べたかったな」
少女の人生はその言葉を最後に集結した。
読んでいただきありがとうございます。いつも見ていただき本当に感謝しています。また評価してくださった方、ブックマーク登録してくださった方、心の底より感謝申し上げます。
最後になりますが、次回以降も見ていただけると大変うれしく思います。




