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世界が変わっても所詮、俺は俺  作者: ガルピー
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回想3

回想最後です

 初めの合図とほぼ同時に、みぞおちに衝撃が走った。気が付くと俺は吹き飛ばされて、壁に打ち付けられた。なにが起こったのか気が付つけたのは、さっきまで目の前にあったカイラの顔が見えず、足元のみが遠くに見えたときだった。カイラが摸擬戦用の剣を使っていたからよかったものの、真剣ならば俺は今、小腸や大腸といった内臓を地面にぶちまけていることになっていたと思うと汗が背中から噴水のように吹き出した。

 そのあと何とか立ちなおし、もう一度剣を構えた。すると少し離れたところにいたはずのカイラが目の前にいた。とっさに先ほど打たれたところをかばうように防御の姿勢を取ったが、カイラは再び同じところには打ってこず、今度は顎先に鈍い衝撃が走り、俺は宙を見上げることになった。というか体ごと打ち上げられ、妙な浮遊感に襲われつつ、そのまま地面に頭から着地することになった。その時、鼻血はもちろん出ていたし、体中には強く打たれたおかげで体の血管が損傷し紫黒くなっていたし、頭や腕や足からは出血もしていた。今まで大したケガもしたことが無く、せいぜい幼い頃に転んでできた傷や捻挫が大きなケガだと認識していた日本生まれ日本育ちの俺にとって、その時の状態は人生で一度も経験したことがないような耐え難い痛みを伴うものであり苦痛に顔をゆがませることになった。

 そんな状態になって始めて、目の前にいるカイラのことを敵としてみなした。

 ここまでは、訓練の相手だと言ってもこの一年間で仲良くなったカイラを相手に全力など出せないと考えていた。それに俺だって一応男だし、女に対して、相手を傷つける力を使うのはどうなのかと考えていた。

 だがそんなことを心配したりしている余裕なんてものは無かった。いくら俺が少しばかりこの世界にいる人間とは違う力を持っているからと言って、一年やそこら鍛えた程度では、到底追いつけない差があることにようやく気付けた。そりゃそうだ。いくら力があるからと言っても戦いに対しての心構えが違う。実戦経験も違う。世界を支配しようとしているやつらと命のやり取りをしようとしている時点で、肉体も精神も今、目の前にいる彼女は俺よりも遥か遠い場所にいる存在だった。

 そう思い、カイラを倒すと決意し、俺のその時、持てる力を全て使った。ますは、圧倒的に速さが足りない。そのため肉体強化魔法を使う。今この場は、俺の力を確認するため、魔法等の使用が可能になっていた。実戦で試すのは初めてだが、できないとは言ってられない。肉体強化後、体の周りに風の魔法で追い風を作り出した。それだけでなくカイラ自身の速さを制限するために、彼女の周りの地面を液状化すると同時に周りの重力を少し強め負荷をかけさせた。加えてあまり意味はないだろうが彼女の周りの風を彼女に向かって吹くようにした。これでもまだカイラのほうが早い。だが少しでもあがくために、できることはすべてやった。その時の体力や魔力量ではそれが限界だった。仕上げに風を巻き起こし砂埃をたて、視界を制限した。それに紛れて俺はカイラの後ろを取り、全力の一振りを彼女の頭にたたきつけた。はずだったのだが、それは俺の妄想でカイラは剣を構えると彼女を中心とした半円状に、とてつもない速さで剣を振りまわし砂埃をかき消した後、俺を視認するやいな、彼女立っている足下の地面がひび割れほぼ同時に、俺の頭、みぞおち、脛、足先の四点に剣が撃ち込まれた。そこで俺は意識を失うことになった。

 目が覚めると、俺は救護室で目が覚めた。ベットの横には椅子に腰かけたカイラがうたたねをしていた。俺が目を覚ましたのに気が付くと体をいたわるようなことを言ってきた。そこで俺は少し皮肉めいて「こうなった原因はお前なんだけどな」と言ったがカイラは笑って流した。

 そしてしばらくして、意識がしっかりと戻ってくると、今回の訓練の意図についてカイラが教えてくれた。どうやら、俺が今の段階でカイラに勝てる要素はほとんどなく負け戦だったらしい。それなら、なぜあのようなことをしたのか聞くと、俺が勝てない相手に出くわしたときにどのような行動をとるのか確認すること、そして何よりもこれから旅が始まることで、訓練とは違う、場合によっては命を失う可能性もあることを認識してもらうためだったらしい。それに俺は少し天狗になりやすいのが、これまでの訓練で問題であると告げられていたらしく、その鼻を折るためにも今日の訓練を実施したのだとか。こんな状態になるのなら、天狗になるなんてことなかったのにと思った。

だが明日から実際に冒険の日々が始まる。今日の結果を見て明日から冒険に出てもすぐには死なないだろうと判断されたらしく、ようやく訓練や勉強の日々から抜けられる。そう思うとうれしく思うと同時に少し悲しくもある。学校での卒業式の日みたいな感じだった。だがこれでようやくこの世界に来た意味があると思った。

 そう思いながらその日はそのままベットに沈めるように意識を落とした。

次から進み始めようと思います。

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