再開
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肌を撫でるように心地の良い風が吹いている。時間はだいたい昼頃だろうか。周りの雰囲気が朝とは違い、活気にあふれている。道行く人々が前を通り過ぎるときに、様々な香りを運んできては消えていく。眠いな。
「蓮、どうする?」
大きなあくびをして涙目になっている。
「そうだな、どうしようか」
質問に質問で返すような形になったが、カイラは特に気にしている様子ではなかった。
ギルドの外に出て、仲間を探すことに決めたが何も収穫はなかった。よくよく考えてみたら当たり前のことだが、そもそも他の冒険者はこの時間であれば依頼をこなしているか、ギルドにいるかのどちらかの場合がほとんどであった。そのためギルドの外に出てから、冒険者といえるような様相の奴らは、俺たちしかいなかった。視界に映る多くの人が、冒険者以外の職業についていることが身なりから予想できた。実際、微かな希望を抱いて声をかけてみたりもしたが無駄骨だった。
そんなわけで今は、街中に設置してあったベンチに腰かけている。
「おい!あんたら、何しょぼくれた顔してんだ?」
俺たちを見下ろす形でその男は声をかけてきた。
「誰だ?あんた」
仲間集めが上手くいっていないこともあり、多少喧嘩腰な口調になったがその男は気にも留めず俺の横に座ってきた。
「俺だよ、俺、覚えてないのか?」
「だから、誰なんだよ」
そう言って顔を見てみると確かに見覚えがある顔がそこにはあった。それでも誰か分からない。ただ見たことがあることは確かだった。
首をかしげて、考えていると横からカイラが「あっ」と声を出した。
「蓮、あれだよ。確かこの街に来るときに出会った。盗賊?の親玉だった人だよ」
「盗賊じゃねーよ!奴隷商だよ!俺の仕事は!」
「あっ、そうだっけ?」
カイラが悪気なく笑った。俺としてはどっちも似たようなものだと思うが、どうやら違うらしい。
「思い出してきたぞ、あの時襲われていた奴か」
口に出してみると、次第に頭の中の霧がはれていくのが分かる。
「久しぶりだな。どうしたんだ?」
「それはこっちのセリフだ。どうしたんだ、こんなところで?」
「いや実は少し問題があってだな」
「ん?それは何の問題なんだ?」
「いや、言っても解決しないと思うから。別に気にしないでくれ」
そういうと不服そうな顔をしたが、すぐに朗らかな顔になった。こんな顔もできるのかと肝を抜かれた。
「そうはいっても、あんたらには助けてもらった恩もあるし、何かできるかもしれないだろ?聞かせるだけ聞かしてくれよ」
カイラの方を向くと、少し間をおいて頷いた。
「分かった。話す」
「そうか!解決できるか分からないが聞かせてくれ」
そうして俺たちの今の状況を話すことになった。人数が足りないこと。誰も仲間になってくれないこと。話を途中で遮ることは無くその男は最後まで黙ってただ黙々と何かを考えるように頷くだけだった。
「なるほどな。状況は分かった。だが俺自身にできることは何もなさそうだ。すまない」
そう言って頭を下げる姿を見て、申し訳ない気持ちになった。
「いや、別に気にしなくていい。そもそも俺たちの行いが原因だしな」
呟くように吐き出した。
「それじゃあ、俺たちはもう少し人をあたってみるから、またな」
そう告げて、立ち上がろうとしたときに腕を引っ張られ、再び男の横に座りこむことになった。
「さっきの話だが、俺自身があんたたちに何かをしてやることはできない。だが少し考えがある」
「考えって?」
カイラも座りなおし二人でその男の話を聞くことにした。
「いや、知っていると思うが、俺は奴隷商でな」
「ああ、さっきあんたから聞いた」
「それでだ、あんたらには恩もある。だから、そのさっき言った考えってのは、俺の店で買わないかって話なんだ。もちろんこうやって提案するわけだ。それなりに安くする」
「それは奴隷を買って、仲間にしたらどうかってことか?」
「ああ。俺にできることはそれぐらいだからな」
カイラの方を見る。何も言わない。俺が決めろってことか。
実際のところ、奴隷を買うことに対して抵抗感があり、男の提案はあまり良いものとは思えない。だがここまでのことを考えると、俺たちに協力してくれる奴など、この街にはいないことは十分分かる。
「ちなみになんだが、回復魔法を使える奴はいるか?」
「すまんが、それは分からん」
「そうか。分かった。とりあえず一度、店に連れて行ってもらっても構わないか?」
男は頷き、立ち上がった。
「ついてきてくれ」
そう言って歩き出した。その後ろを俺とカイラが追っていく形となり、昔遊んだゲームに、確かこんな隊形で移動するやつがあったなとか考えていた。
しばらく歩いた後、店の前に着いた。店の外観はシンプルな一軒家のような形であった。想像していた店の様子とあまりに違ったため、本当にここが奴隷を売買できる場所なのかと思った。
「ここだ、入ってくれ」
そういうと男は入り口の扉を開け、俺たちに中に入るように促した。だが、扉の向こうに今までに感じたことのないような雰囲気が漂っている気がして、入るのを躊躇った。
「どうしたの?蓮。入らないの?私、先に入るよ?」
「あっ、待ってくれ」
俺はカイラの背中を追いかけるように店の中に入ることになった。
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