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世界が変わっても所詮、俺は俺  作者: ガルピー
33/54

朝日を浴びて

よろしければご覧ください。

 朝、自然と目が覚めた。昨日はカイラほどではないが、それなりの量を飲んだ気がする。アルコールが抜けきっていない気がするが、幸いなことに二日酔いにはなっていない。だが風呂に入らず寝てしまったため、少々体がべたついている。

 「よし、風呂に入りに行くか」

 自分の決定を再確認するかのように声に出して、部屋から出た。その時に隣のカイラにも、一応風呂に行くと声をかけた。

 「俺、風呂入りに行くけど、カイラも行くか?来るなら待っておくが」

 「いや、私は今はいいや、いってらっしゃい」

 扉の向こうから弱弱しい声で返事が返ってきた。いつもならカイラが先に起きて、俺の部屋に声をかけに来るのだが、珍しいこともあるもんだ。俺のほうが早く起きるなんて。

 木でできた廊下を進んで一階に続く階段を下りて、現在泊っている宿から出た後、少し歩いたところに風呂屋はあった。こんな朝早い時間から空いている風呂屋はこの世界において、特段珍しいというものではない。というのも、この世界の宿には風呂が完備されていないところも多く、汗を流すためには、わざわざこうして風呂屋に出向かなければならない。だが冒険者の多くは、夜は飲んで食って騒ぐ。そのため、風呂屋の営業時間終わりには間に合わず、風呂に入らないまま眠ることになり、朝方になって自身の皮膚にこびりついた汚れを気持ち悪く思い、風呂に入りたいと考える。その需要にこたえる形で多くの風呂屋は朝早くから営業しているらしい。

 汚れを落とすために体を洗った後、ゆっくりと湯船につかった。

 「ふー」

 思わず息が漏れた。

 風呂場はほとんど人がいなく、広い浴槽を独り占めしていると考えると、なぜだか嬉しくなる。風呂場にいる他の者も、そうした気分を味わいたいのか、それぞれが別々の浴槽を使用している。そして全員が何も考えることなく、視点が定まらないといった様子で湯に浸かっている。そんな光景を面白おかしく感じる。俺もそれに倣って、湯船に肩まで浸かり同じよう視点をさまよわせた。

 しばらくの間、湯に浸かっていた。だが途中で喉が渇いてきて、のぼせてきているのが分かったので風呂からゆっくりと上がった。その後、氷で冷やされた水が湛えてあるケースの中から、飲み物を一本購入し一息で飲み干した。

 体を少し冷まし、着替え終わると風呂屋を後にした。

 宿について、カイラに戻ったことを伝えようと部屋の扉をノックした。朝に声をかけてから一時間以上は経過しているため、普段のカイラだと既に身なりを整えて活動を始めている時間である。だが今、ノックに応えるように扉の向こうから現れたのは、昨日から服装も何も変わっていない血色の悪い顔をしたカイラだった。

 「あっ、帰ってきたんだ」

 「そうだけど、大丈夫か?」

 「うん、大丈夫だと思う。でも水だけ持ってきてくれない?」

 かすれた声でそう言われたので、下に行って水を買ってきた。

 「ほら、買ってきたぞ」

 そう言って水を手渡すとカイラはついばむように水をすすった。声に少しだけの潤いが戻ったと思えば、カイラはすぐにトイレに駆け込んだ。その後どこからその声を出しているんだと思えるほど、普段の可愛らしい声の面影を一切感じさせない、野太い声がカイラが入っていた場所から聞こえてくる。

 「頭痛いし、声は枯れてるし、吐き気もするし、今日は休みたい」

 トイレから出てきたカイラは普段の色白な肌とは違う、病的な白さを携えて戻ってきて、取り繕うことなく自分の要望を伝えてきた。

 「ああ、わかった。もとからそのつもりだったし。今日はゆっくりやすんでくれよ。あとで胃薬になる薬草買って持っていくから」

 「分かった。ありがと、それじゃあ」

 そう言って扉を閉めようとするカイラを見て、すこし気の毒に思えた。

 「とりあえず、薬草買いに行くか」

 扉が閉まって人の気配が無くなった廊下に、その言葉は吸収されるように消えていった。

今回も読んでいただきありがとうございます。またよろしければ次回もご覧ください。

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