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世界が変わっても所詮、俺は俺  作者: ガルピー
32/54

食事2

よろしければご覧ください。

 店員が席まで来て、何を注文するか聞いてきた。

 「とりあえず、飲み物だけでも頼もうか」

 「そうだね」

 メインで何を食べるのか決めていなかった俺たちはとりあえず飲み物だけ頼むことにした。昼間から、ろくに水分も摂ってなかったため喉がとても乾いている。何を頼もうか迷っているとカイラが先に注文した。

 「すみません、私、これください」

 それを聞いて早く決めなければいけないと謎の焦りが出てきた。

 「それじゃあ、俺はこれでお願いします」

 店員は俺の注文を聞いた後、注文内容を確認してそのまま去っていた。

 「カイラ、何頼んだんだ?」

 「えっと、私は果実酒かな?多分、メニューの名前的にそうだと思う。蓮こそ何を頼んだの?」

 「ああ、えっとこれだったと思う」

 「だったって、自分が頼んだやつでしょ」

 カイラは笑いながらそう言ってきた。しばらくすると先ほど頼んだドリンクを携えて先ほどの店員が現れた。そして目の前に持ってきたドリンクをおいてそそくさと去っていった。とりあえず俺たちは店員を見送って、乾杯をした。乾いた喉に炭酸が染み渡る。この麦を濃縮したような味わい。まさしくあれだ。ビールだ。カイラはグラスに注がれたオレンジ色の果実酒をこくこくと飲んでいた。

 「おいしいな」

 カイラがグラスの半分ほどを飲み切ってそう言った。

 「何食べるか決めよ!」

 「そうだな」

 その後、しばらくメニュー表を眺めた後、何の肉かは分からないがとりあえず適当に頼んだ。それに一応野菜の詰め合わせ的なものも頼んでおいた。他の料理もメニューには載っていたが、隣で他の冒険者が食べる肉の塊の魅力には抗えなかった。やはり体を動かした後はがっつりと食べたいと思ってしまう。

 頼んだ料理が届くと同時にカイラは追加で飲み物を頼んでいた。

 「おいしそうだね!」

 「ああ、そうだな」

 目の前に置かれた肉はステーキのような形で提供されており、その横にソースが添えられている。それに、好みで焼き加減を調整できるように黒い石が音を立てながら、皿の横に置いてある。

 「食べようか」

 「うん、あっ、飲み物届いた」

 そうして酒と肉がそろってようやく、ひと段落着いた気がした。肉自体は普段からも食べるからどうということはないのだが、今日のはやけにおいしく感じる。

 「カイラ、なんかいつもよりおいしくないか?」

 「うん、お酒があるからじゃない?」

 「なるほど」

 その後は、明日の予定をどうするかなど話し合いながら食べ進めた。肉自体は大した量ではなかったのですぐに食べ終わった。そのあとも飲みだけは続けた。

 「でね、でね、蓮はもう少し私を大切にするべきだと思うの」

 「大切にしてはいると思うんだが」

 「ううん、全然してない。してないったらしてない!」

 「ごめん、ごめん、次からは気を付けるから」

 「まあ、わかればいいの」

 数時間前からカイラは少しづつ飲む量が増えてきて、次第に口調が変わっていくのが分かった。今までに何回かタイミングを見計らって、宿に戻ることを提案したが、のらりくらりとかわされてしまった。今日初めて一緒に飲んで気づいたが、カイラはかなり酒癖が悪いらしい。俺にも酒を飲むように勧めてきたが、酔っぱらってるのをいいことに嘘をついて飲まないでいる。既に初めの果実酒のグラスはどこにあるのか分からないぐらい机の上には他の酒の入ったグラスが置いてある。

 「カイラ、もう帰らないか?」

 「ええ?まだ、いいでしょ」

 ここまで酔っぱらうまで飲むなよとは思うが、楽しそうなのでもう何も言うまい。つぶれるまで待つことを決めた。長くなりそうな気がした。しかし、その時は案外早く訪れた。いつ帰れるのだろうかと心配に思ってカイラのほうを見たときに、何杯か追加で飲み干したカイラが突然、席から立ちあがり、おぼつかない足取りでトイレのほうまで進んでいき、姿が見えなくなった。それからしばらく席には戻ってこなかった。そしてしばらくしたのちに、ようやく姿を見せた。だが席を立つまでは、幼子のように赤かった頬の色が、今はもう見る影もないほどに青白くなっている。

 「帰る」

 力なくカイラがそう言い残し、机に突っ伏してしまったまま寝息を立て始めた。それを見て、ようやく帰れると安堵した。お会計を済ませた後はカイラを背中に背負ってギルドを後にした。

 「ごめんねー」

 背中から弱弱しい声が聞こえてくる。

 「いいよ。俺も楽しかったし」

 「うそだ」

 「ほんとだよ」

 「うー、でもありがとね、運んでくれて。でも飲みすぎだよね」

 「そんなことないよ。思えばカイラと飲んだのは初めてだし。カイラの意外な一面が見れて楽しかったよ。」

 そのあとはうめき声のような言葉とは言えない音が聞こえてきた。

 そのあとは夜風を浴びて、少しだけ酔いを醒ました後、カイラを部屋まで送った。

 「送ってくれてありがとね」

 「隣の部屋だから別にいいよ。気にしなくて」

 「うん、でもありがとう」

 「どういたしまして」

 そのあとしばらく無言の時間が続いた。

 「とりあえず、明日はゆっくりして」

 「分かった」

 「それじゃあ、おやすみ」

 「おやすみ」

 そうして扉が閉まるのを確認した後、俺は自分の部屋に戻り床に就いた。

 

読んでいただきありがとうございます。次回もよろしければご覧ください。

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