街の散策2
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スイーツ店から、そう遠くはない場所に目的の店は佇んでいた。扉を開けて中に入ると、店内には幾人かの冒険者と思わしき人々が店内を見て回っていた。
「杖のコーナーは二階だね」
カイラは二階につながる階段の上に、ぶら下げられた案内標識を確認して先に行ってしまった。その背中を見ながら同じ道をたどって俺も二階に進む。二階に上がると目の前には杖や、ローブといった魔法関係のものが目白押しだ。この店の一階は剣や鎧といった剣術関係の品ぞろえとなっており、二階は魔法関係と階ごとに分けられているようだった。
「ねえ、蓮どれがいいと思う?」
無心で杖を見ていると後ろから声をかけられた。だが、そう言われても、どれがいいのか分からない。各杖の説明には違ったことが書いてある。目の前にある、太陽を象ったと思われる球体を先端に付けた全体として火をイメージさせる杖の説明には、見た目通り、火の魔法を強化すると書いてある。その隣にセットで買ってくれと陳列されている、黒を基調とした布地に赤の蛇のような紋様が装飾されているローブもまた、火の魔法の強化と、火に対しての耐性を取得できると記されている。それならばローブを買ったほうが得ではないかと思ったが、杖は攻撃面を、ローブは防御面を強化することがメインの性能であるらしく、ローブの魔法の強化はおまけ程度のものらしい。その点で差別化が図られているようだ。それでも、少しでも攻撃面にバフをかけたいと考えた人がセットで買っていくらしい。この世界においては、一つの属性しか使えない人が大半であるため需要はそれなりにあるとか。だがどちらもそこそこ、いい値段はする。俺は多種多様な属性の魔法を使用するため、このようにある一つの属性のみ強化するものは、あまり好ましく思えない。
「どれがいいんだろ?数が多すぎて決めるに決めきれないな」
「確かにね、剣士用の装備と比べて、種類が多いね。それに蓮はいろんな魔法使うから、今私たちの前にあるような特定の魔法だけを強化するのは、よくないかもね」
そう言ってその場は離れて店内を見て回った。だがこれというものは無い。
箱にセール品と記された茶色く日焼けした紙が乱雑に張られている木箱の中に、複数の杖が箱の容積以上に詰め込まれているのが目に入った。近寄って見てみると、他の立派に飾られている杖とは違い、特に説明もなく置いてあった。
「お前さん、どれか買うのか?さっきから見てるけど」
後ろから急に声をかけられ少し驚いた。だが、その声はこの店の店主のものらしかった。
「そこに挿さってる杖は、もうかれこれ1年以上売れてないんだよ。だから買ってくれるならありがたいんだけど、お前さんどうする?今ならそこに書いてある金額よりもさらに値引きするよ」
指さしながら、そういう店主の目には買ってくれと書いてあるようだった。
「この、杖には店に並んでいる杖と違い、値段しか書いていないけど、どんな効果があるんですか?」
カイラが横から店主に話しかけた。
「うーん、そうだね。あとから詐欺だとか言われても困るから言うけど、ここにある杖は、実は店に並んでいる、ほかのどの杖よりも魔法を強化してくれるわ」
「なら、なんでこんな隅に追いやるようにおいてあるんですか?」
「今からそれを説明するから、最後まで話を聞いてから何か聞きたいことがあるなら、質問してくれない?」
そう諭すようにいう店主に対して、カイラはごめんなさいと慌てたように返した。
「ここの杖はね、さっきも言ったように、効果は他のと比べても頭いくつも抜けたぐらい強いんだけどね、いかんせん、使える人がいないのよ。というのも、ここにある杖は魔法を大幅に強化してくれるんだけど、その強化する種類が多いのよ。それなら別に使えると思うかもしれないけど、そういう杖はどれも癖が強くて、杖が強化できる魔法の属性を全て使えないと、杖は魔法を強化してくれないのよ。それどころか使用者の魔力を吸い取ろうともしてくる杖もあるのよ。今、ここにあるのはそう言った物ばかり。それだから木の棒といい勝負ができるとか揶揄されることもあるんだけど、実際、使いこなせないなら、木の棒よりも使い物にならないのよ。魔力で強化されているからか知らないけど、火で燃やそうとしても燃えないし、折ろうとしても折れない、部品をバラバラにして売り払おうとしても分解できない。だから置いとくしか選択肢がないのだけど、こっちも商売だから売れるなら売りたいのよ。だから今よりも値引きするから買わない?」
今の説明を聞いて、誰が買う気になるのか甚だ疑問であり本当に売る気あるのかと思ったが、俺とカイラは顔を見合わせて喜んだ。
「これ、買います」
「えっ、本当かい?絶対に売れないと思って声をかけたのに思わぬ収穫だわ」
そんなこと客の前で言うなよとおもいつつ、どれを買うか選び始めた。だがどれもこれも高飛車な雰囲気が漂っている気がする。今手に取っているやるなんて、杖の先端に目玉のような模様がある。というか目玉かこれ?
「うわっ、こっち見た!蓮それはやめよ!」
カイラが俺の手から杖を引きはがし別の奴を取り繕って渡してきた。
「これなんてどう?星空みたいで綺麗じゃない?それになんだが二人で冒険を始めた時に見た、夜空みたいだし」
確かにそう言われて見てみると、それにほかの杖に比べて落ち着いた様子も伺える。素材は木で作られており、杖先に着いた蒼い球体の中に星を散りばめたようなものが付いており、それを三方向から囲うように本体の木が加工されている。
「これにしよう」
「えっ、いいの?ほんとにそれで?適当につかんだ奴を渡しただけなんだけど」
「うん、これがいい」
「そう、それならそれにしよっか!」
「あんたら、仲いいのね」
「そうですか?」
と二人同時に店主のほうを見て答えた。少し可笑しそうに店主は笑っていた。
「まあ、いいわ。その杖を買うなら、値段はこれぐらいになるんだけど大丈夫かい?」
そう言われて、示された金額に驚いた。まさかの1万程度の値段だった。
「それと、値引きするって言ってたから、それも考えると7500でいいわ」
もっと安くなった。
「そんなに安くていいんですか?ほかの杖は15万は最低でもしてたのに」
そのカイラの質問に対して、店主は応えた。
「損益で考えるなら、仕入れ値よりも安い値段で売ることになるけど、店としては売れないものをいつまでも抱えるより安くても売ってしまったほうがいいのさ。だからこれだけ値引きしてるんだよ」
商売というものはよくわからない。そんな顔をカイラはしている。
「よし、これでこの杖はお前さんのものだ。持っていきな」
「ありがとうございます」
そう言って杖を受け取った。ようやく手に入った。といっても当初予定していたよりも遥かに早く入手できたし、費用も抑えれた。
「あっそうだ、あんたら、名前はなんていうんだい?ずっと店に置いてあった杖を買ってくれたんだ、教えてくれよ」
素直に応えた。
「西野蓮」
「私の名前はカイラ・アーグネスって言います」
俺に続いてカイラも名乗ったが、俺がそっけなく答えたこともあり、カイラが偉く真面目に見えてしまう。
「蓮、カイラ、うんいい名前だね。お前たち二人の名前は覚えたよ。また装備を買うときは私の店に寄ってくれよ」
そう言って店主は奥に入っていき姿が見えなくなった。
「いい杖が見つかってよかったね」
「そうだな」
「次も装備買うときはあの店に行こうね」
「ああ、そうしよう、絶対に来よう」
そんな話をしながら、そろそろ俺たちのプレートも用意できた頃だろうから、戻ることを提案しようとしたが、カイラも同じように考えていたらしく、特に口にすることもなく、俺たちはギルドがある方面へ足を進めた。
今回も見ていただき、ありがとうございます。次回以降もよろしければご覧ください。タイトル変えました。




