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世界が変わっても所詮、俺は俺  作者: ガルピー
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回想1

回想です。

 あの日、珍しく俺は学校に誰よりも早く着こうと考えていた。だが特に部活もやっておらず朝練なんてものもない。それなら授業での課題を仕上げるためかと言われるとそうでもない。友達も、ましてや彼女もいなかった転生前の俺には放課後は時間が豊富に用意されていた。だがそれだけの時間があっても何か自己鍛錬に勤しむわけでもなく、ずっとゲームとネットサーフィンの繰り返し、そして出された課題を早々に片付けていた。そういうわけで朝早く学校に行く理由なんてほとんどないのだが、二月に一度ぐらい謎の自分でも説明できないような気分になり、学校に朝早く登校していた。なんというか、自分に酔っていたのだろう。誰もいない教室に我が物顔で到着し優雅に時間を過ごしている。そんな感じだった。今思い返すと本当に恥ずかしい奴だな、俺は。だが異世界に来た日だけはいつもと違った。何というか事故にあったらしい。そう聞かされた。実際に自分で事故にあったことを確認したわけではない。そりゃ死んでしまったから当たり前なのだが。

 通りを歩いていて角を曲がった瞬間車が牛のように突っ込んでくるのが分かった。その2秒にも及ばない時間が過ぎた後、視界が暗闇に包まれた。

 次第に暗闇の中に人影が浮かびあがってきて、そこにいたのが俺をこの異世界に連れてきた、いや連れてきてくれた張本人であり、俺に真相を教えてくれた女神様だった。どうやら女神様の話によるとこの異世界では、魔王と呼ばれる奴が世界を支配するために日々画策しているらしい。そこで現地の人間は、異世界から人を呼び勇者として魔王を討伐してもらおうと考え召喚の儀式を行うことを決め実際に行ったらしい。だが突然一つの世界から人が消えるのは世の理に反するらしく帳尻を合わせるために元いた世界ではその召喚の対象に選ばれた人間が何らかの原因によって死を迎えるといったことらしい。それで俺は事故にあって死んだらしい。それを聞くと事故を起こした相手が不憫に思えるが、どうやらその召喚による死に関与する人間は元いた世界では犯罪に手を染めていたり、人としての道を踏み外した奴が対象となるらしい。それを聞いて少し気が楽になった。

 そうして俺は異世界「バカラ」に来ることになった。そしてもちろんお約束のご褒美タイムもあった。何か特殊な能力を授けると、目の前にいる銀髪女神様は言ってきた。それを聞いた瞬間、俺は飛び跳ねてしまった。やはりそういうことには憧れが無かったといえば嘘になる。だが一つとなると選ぶに選べない。すべてが良く見えてしまって、どれを選べばより快適に異世界での生活を過ごすことができるのか分からなかった。選択肢の中には「豪運」「剣豪」「錬金術」「魔法使い」「賢者」「肉体超強化」「誘惑」「心眼」「幻惑」などいくつもの言葉が並んでいた。女神さまにどれがいいか質問したが、若干はにかむだけで答えてくれなかった。あまりそのあたりのことは詳しくないのかもしれない。その後も悩みに悩みまくった。それはもう今まででは考えられないくらい頭を使っていた。すると突然女神様がボソッとつぶやいた。

 「とっとと選べよ、童貞が・・・」と。

 耳を疑ったが、顔を見てみると明らかに暗闇の中で始め見た慈愛に満ちた、それでいて異世界の勝手な都合で死んでしまった俺を優しく慰めるような表情ではなかった。

 あんなに影がかかっていたか?と自分の目や感覚を疑いたくなるような様子だった。

 それを見てさすがに焦ったので、早く決めないといけないと思い再度渡された紙に目を走らせた。だが考えれば考えるほど、どの能力も捨てがたかった。そんなことを思っていると後ろから貧乏ゆすりのような音が聞こえてきた。いよいよやばいらしい。

 そこで、俺は思い切って聞いてみた。この全ての能力を全て半分ぐらいの能力値でいいのでくれないかと。

 すると女神は、「別にかまいません、端から一つと伝えておりませんし」と淡々と言ってきた。次の瞬間俺はまばゆい光に包まれた。

 そして目を開けると、目の前には俺を召喚した召喚士のような風貌をしている奴らが6人俺を取り囲むように立っていた。足元を見ると魔法陣のようなものが描かれていた。あたりを見回していると荘厳な装飾が施されていた。そして呆然と周りを見ていると後ろの扉がギ―っと音を立てて開いた。

その瞬間周りに立っていた召喚士たちとその後ろに立っていた神父のような姿をしている奴が膝をついた。当然そんな状況になったので驚いていると扉から明らかに周りの奴らとは位が違うやつが出てきた。頭の上には王冠が乗っていたし。この国の統治者であった。そいつから女神から概要だけ聞いた話をより詳しく説明された。だが要するに魔王を倒せという命令だった。こういう立場の人間は自分が一番偉いと考えているからこちらに発言権など渡すわけもなく、こちらの考えを伝える隙は全く無かった。

 しばらくして王が何かの名前を叫んだ。すると横の扉から、銀髪の綺麗な女性が出てきた。背は俺よりも低いがその銀髪の髪の間からは鋭い眼光が見受けられ、胸にはご立派なものを二つ携えておられた。声もかわいらしく気を抜けば一目ぼれしてしまいそうな容姿だった。だがそれ以上に感じたことがある。この女は俺よりも強いってことだ。今この場で少しでも馬鹿な行動をしようものなら、またあの女神にあうことになるだろう。まだ首と胴体はお別れさせたくなかった。この子たちは相思相愛なのだから。

 どうやらこの女は俺のパーティーのメンバーらしい。どう考えても現状俺のほうが弱いのだがリーダーは俺だ。なぜこの女が俺の旅に同行することになったのかは、俺がこの世界の常識を知らなさすぎるからだと偉そうに伝えられた。女の名前は「カイラ・アーグネス」というらしい。まぁこのときは名前も聞けなかったのだが、あとで聞いたらそう言われた。

 話が進むにつれて、基本の装備や金は支給するが、それ以降のことは自分でどうにかしろと言われた。どうやら魔族が暴れまわっているらしく、あまり費用がかけられないらしい。ならその頭の上に載っている王冠を質屋に入れて金に換えてこいと言いたかったが言える雰囲気ではなかった。それでも一日本の家庭に生まれた俺からすると大金といえるぐらいの量の金貨がもらえた。国というか世界の命運がかかっているのに対して出資しないのは俺にそれだけ投資するだけの価値が無いと考えていたんだろう。

 そうして話は終わり俺は早速旅に出ようとした。しかしカイラに止められた。まずは勉強だと。

あと一回か二回ほど続きます。

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