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世界が変わっても所詮、俺は俺  作者: ガルピー
19/54

ダンジョンでの二次試験3

よろしければご覧ください。

 しばらく、と言っても五分も経たないうちにカイラの意識は元の状態に戻った。

 「ありがとう、魔力を分けてくれて」

 「いいよ、今回はたまたま俺が助ける側にいるだけで、いつもは助けられてばかりだし。それに試験も俺たち二人ならクリアできると思う」

 そういうとカイラが少し照れくさそうにしていた。

 「ねえ、それって、私が前に蓮に言った言葉だよね?」

 「うん、そうだよ」

 カイラがかつて俺に言ってきた、少しくさいセリフを言ってやった。やはりあの時の言葉は、本人的にもかなり恥ずかしいものであったと考えているらしく、顔を赤らめながら手で仰ぐような仕草をしている。

 「よし、そろそろ行こうか」

 「うん、絶対にクリアしようね」

 そう言って俺たちは疲れを忘れたかのように前へ前へと進み始めた。

 しばらくすると敵感知のスキルに反応が出た。だがこのスキルが反応することは敵の正体は弱いことを示している。俺の能力は中途半端なものであるため、自分よりも弱い敵にしか反応しない。以前のスライムのような敵は俺自身よりも圧倒的に強く、このスキルが反応しなかったため不用意に近づき死にかけた。この能力を知った時は、雑魚狩りを行うときにしか使えない意味のない能力だと思っていたが、敵がいつ来るか分からない危険な今のような状況で、このスキルが発動することは安心感を覚える。なぜなら、この先にいる敵は自分よりも弱いとスキルが証明してくれているからだ。だが敵の個体名が分かるのではなく単に、そこに存在していることが分かるだけであるため、毒などを駆使する敵に対しては、本体の強さは警戒に値するほどではなくとも、それによって後々に大きな影響が生まれる場合もあり、気を抜いていてもいいというわけではない。だがやはり、この先にいる敵が弱いと分かるだけで心理的負担はかなり軽減される。そうして警戒しつつも順調に足を進めると、先ほど敵感知スキルに反応したやつの姿が、岩陰からわずかに見えた。どうやらウサギのような見た目をしている敵であるらしい。ただ俺が知っているウサギと違い、目は宝石のように赤く、耳は刀のように鋭い、おまけに口から一本の歯が牙のように伸びているのが分かる。

 「カイラ、後ろに下がっていてくれ」

 そういうとカイラは黙って後ろに一歩退いた。それを確認でき次第、俺は魔力を練った。そしてそのウサギどもの足元に魔法陣を発現させ、そこにいた5匹ほどをまとめて焼き殺せるように炎を足元から噴出させた。その瞬間、ウサギの断末魔と思われる叫び声が上がった。だがまだ仕留めきれていない。3匹はその場に倒れた影が確認できたが、残りの2匹がまだ動き回っている。一応こちら側には来ないように目の前に腰ほどの高さの岩壁を作っていたが、俺たちの進行方向には、まだ逃げ道がある。逃がさないためにもさらに火力を上げる。その後しばらくして、もう十分だと思うほど燃やした後に魔法を止め、目の前に広がる火の海が収まるのを待った。そうして進のに問題ない程度に火が収まった後に先ほどのウサギがいた場所に近づいていった。

 「一匹、二匹、三匹、四匹、あれ一匹いない、もしかして一匹、逃げられたの」

 そう、焼けたウサギを数えるカイラの言葉に、まさかあの炎の中から逃げ出せる個体がいるなんて、と言葉が漏れた。確かにいくら自分より弱いとは言え、必ず殺せるとは限らない。今回、逃げた個体は悪運が強かったのだと考えるほかない。それに逃げれた個体も炎による全身火傷と熱された空気によって気管が破壊され、まともに呼吸もできず、そう長くは生きられないだろう。なので実質、全滅させたのと同じだ。逃げた個体が呼吸を必要としない種類なら生きているかもしれないが、多くの生物は呼吸を必要とし、酸素がない状態では生きられない。なので問題ないと思う。確かにこのダンジョンみたいな性質をもった奴だと、また話は変わってくるだろうが、今は気にしていても仕方がない。

 だがこの火を使う魔法は今度から使う場所を考えないといけないと思った。まさに今、意識せず魔法を使ったため、焦げた地面やウサギからでる煙で咳が止まらない。ゴホゴホ言いながらおそらく逃げたウサギが使った道を眺めていた。道は三本ほどに別れていたが、ウサギの血と思わしきものがそのうちの一本に続いている。

 「どうする?あのウサギの生き残りを追う?」

 「うーん、どうだろ。それでもいいと思うし、別の道でもいいと思うよ」

 そう言われ迷った。だが事態は刻一刻と変化する。そのことを俺たちは身をもって経験することになる。

 ウサギが逃げたと思われる道から、叫び声が聞こえてきた。それに反応して、その声の元へ走っていくと、先ほど逃げたウサギがいた。いやウサギだったものがいた。胴体と四肢はつながっておらず、それに群がる黒い群れ、そして頭の一部がかみ砕かれたかのような形で崩れていた。その先には、悲鳴の出どころであると思われる、俺たち以外の受験者の姿が確認できた。あれはどうやら、ダンジョンに入る前に楽しそうに談笑していた四人組のパーティーのようだ。そしてパーティーを囲うようにしている獣が今回の試験課題、ブラックウルフであった。そのためここで、彼らがその群れを先に倒してしまった場合、俺たちは別のブラックウルフを見つけなければならなくなるのだが、問題はそこではない。問題は、今、目の前にいるブラックウルフの群れの数が多すぎることだ。どう考えても四人では手に余る数が彼らを取り囲んでいた。それに、彼らの後ろ側にもブラックウルフがいるらしく、彼らは四面楚歌のような状況になってしまっていた。見る限り、彼らの背後から来たと思われる、ブラックウルフには剣で切ったような傷があり、おそらくあれが本来、彼らが倒すと決めた群れなのだろう。だがパーティーの一人が腕から大量のどす黒い血を流しているところを見ると、作戦どおりにはいかなかったのが容易に想像できる。仲間の一人が大きく負傷してしまい、今回は諦めようと戻ってきたところを先回りされ囲まれたという感じだろう。ブラックウルフに限らず、普段からダンジョン内で生活するやつらは、ダンジョン内の構造を俺たちよりも遥かに詳しく知っているのだろう。今日初めて、来た奴らを囲い込むことなんて簡単だったのだろう。その証拠にあのパーティーがおびえる姿を観察するかのように、ぐるぐると周りを取り囲んでいる。いつでも殺そうと思えば殺せるだろうに殺さないところに悪意を感じる。それを見て、獣も魔獣も魔族も、大した差など特に無いのだろうなと思えた。

 「ねえ、蓮、あれどうする?助ける?普段なら間違いなく助けると思うんだけど、今は試験だし、それに私は全力で動けないからどうすべきかな?」

 「カイラはどうしたいの?」

 「私個人としては助けてあげたい、だけど実際に助けるとなると、蓮が戦うことになると思うから、どうするか蓮に決めてほしい」

 そう言われたが、正直迷っている。試験の課題として示されたブラックウルフの討伐数は二人合わせて10体でいい。だが今、目の前にいる群れの数は50はいるように思える。それにブラックウルフがおびえる彼らの姿に飽きて、彼らを襲い始めた隙に十匹ほど横から殺してしまえれば、それで試験はクリアできるはずだ。そしてそれが最も楽で危険の少ない方法だろう。彼らに襲い掛かっているとき、ブラックウルフの意識はそちらに向くだろうから、俺が少しばかり殺しても気にも留めないに違いない。所詮、獣の頭だし。だがその方法を選んだ場合、おそらく彼らは無事では済まないだろう。あんな数の獣に襲われて無事であるはずがない。それにカイラの気持ちを考えるとこのまま彼らを見殺しにすることは避けたい。だが、彼らとは特別関係があるわけでもなく、ましてや今日、偶然にも同じ日に試験を受けただけである。それに彼らのことはこっちが一方的に目にしただけで、彼らは俺たちのことなど微塵も知らない。果たしてこのような場合どうすべきか、判断に迷う。だがあまり時間もないようだ。彼らを囲っている群れから唸り声が聞こえ始め、いよいよ時間が無くなってきていることを知らせてきた。どちらの方法を取るにしても、そろそろ選択しないといけない。そう思い、俺は岩陰から体を出した。

久しぶりに3000字越えになりました。3000字書いたときは心なしか、普段よりも楽しく書くことができたと感じます。次回からは試験課題との戦闘になります。これまた端的に結果のみを書くか、それなりに文章を用いて書くか迷っています。ですが、どちらを選んだとしても悔いのないようにしたいと思います。誤字脱字等がありましたら教えていただけると幸いです。また感想も一言いただけると執筆の励みとして大変、大きな力となります。ただ皆さんに読んでいただけることが最も励みになっていることは言うまでもありません。最後になりましたが、今回もご覧いただき本当にありがとうございます。次回もよければご覧ください。

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