ダンジョンでの二次試験2
よろしければお読みください。
階段を降り、ダンジョンの中に入ると地面にドリルで穴をあけたような道が広がっていた。どの道に進むか迷って、停滞していては意味がないので、とりあえず適当な道を一つ選び進むことにした。しばらく特に何もない道が続いていた。不思議なことにダンジョンの壁はオレンジ色に薄く光っている。
「カイラ、ここの壁なんで光ってるか知ってる?何か明かりでも埋め込まれてるのか?」
「うーん、よくわからないな。確かになんでだろうね」
そんな他愛ないことを話しながら少しづつ進んでいた。だがいまだ生きている生物を見ていない。それに先に入った受験者の声を聞こえない。ダンジョンの壁は土でできているため、それほど声が響かず吸収される。そのこともあり本当に、ここに俺たち以外の生き物がいるとは思えないほど静かである。
「なあ、いつモンスターが出てくると思う?」
「さあ、何時だろ、でもそのうち出てくると思うよ」
初めから、都合よく目の前にモンスターが現れてくれるとは考えていなかったが、ここに入って十分程度歩いているが、未だ何とも出会えていない。周りは通路を照らす光る土の壁に大小様々な石が転がっているだけだ。あまりの変化の無さに今、自分が進んでいるのか、分からなくなってくる。だがここで少し事態が変化した。戻ってきてしまったのだ。階段の前に。
「カイラ、これって入り口だよな?」
「うん、そうだと思う」
俺とカイラの顔に焦りが出てきた。
「まさか、適当に道を選んでいたら戻ってくるなんて。それにこれあまりにも帰りが遅いと強制的に試験官が俺たちを迎えに来て、失格になるんじゃないか?」
「試験官もそれなりに時間がかかることは、分かってると思うけど、あまりに時間をかけすぎると蓮の言うとおりになるかもしれない」
「まだ、そんなに時間は経っていないけど、少し急いだほうがいいかもしれないな」
そう言って俺たちは当初とは違う道を選び、再び進んでいった。
時間が経ち、少し疲れが出てきた。だがおかしい。ここに入ってからそんなに時間は経っていない、にも関わらず疲労が出てきた。それに俺だけでなく、カイラですら少し息が上がっている。なぜだ?だが考えても答えは分からないため、そのことについては無視して進んだ。
「カイラ大丈夫か?おそらく戦いになったらカイラが前衛で俺が後ろから魔法でサポートする形になると思うけど、疲れていないか?」
「うん、少し疲れたけど全然問題ないよ!」
「なら、いいんだけど」
だがそういうカイラの顔は明らかに疲れていた。もちろん俺も疲れている。だが、このダンジョンに入ってからは大した魔法も使っていないのにここまで疲れるのは明らかにおかしい。それにカイラのほうが俺よりも疲労しているように見える。
「少し、休もうか」
「えっ、早く倒さないと合格できないよ?まあ、蓮が休むって言うなら付き合うけど」
「なら、そこで少し休もう」
そして壁に寄りかかるようにして二人で座り込んだ。にしても何なんだ。この変な感じは、常に魔法を使っているような気になる。だが、気にしていてもしょうがないので、意識しないことにした。しかし当然カイラ音を立てて倒れこんだ。
「えっ、おい、カイラ大丈夫か!?」
「うん、大丈夫だよ」
そう言うが、その言葉はあまりに弱弱しい。
「大丈夫だって、気にしないで眠いだけだから」
俺の言葉を聞かず虚ろな様子でそのように言う。それにしても眠い?こんな時に?まるで初めて魔力を使いきった時の俺のようだ。以前気を失ったことがあるが、あれは睡魔に襲われ、抗うことができずに気絶してしまうって感じだった。
ん?もしかして、このダンジョンはダンジョン中にいる者の魔力を使って今の状態が作られているのか?そういえば、階段を下りているときに使っていた魔法の炎が、少しダンジョン側に揺らいでいたような気もする。そう思い、試しに炎を出してみると、炎は四方八方に細かく揺れた。そして魔法を解くと、炎は壁に吸い込まれるように消えていった。
なるほど。普段魔法をメインに使っている俺は無駄な魔力の放出を抑えようと体が自然にそうしてるが、普段魔法を使わないカイラはその制御が上手くできないのだろう。だから俺以上に体から魔力が吸い取られ魔力が枯渇した状態になっているのだろう。そうした場合、魔力をカイラに注げば動けるようにはなる。だがカイラが自然に制御できるようにならないと、分け与えた分だけ外に出ていくことになって意味がない。だがすぐに会得できるようなものでもないだろう。こういう体質的なものは、普段から魔法を使って地道にならしておかなければならない。ならここからどうする?いやもう答えは決まっている。今日このダンジョンを出るまで俺がカイラに魔力を注ぎながら進むしかない。それにもし合格できなかった場合、カイラは自分のせいで合格できなかったと考えるだろう。だがカイラにはいつも助けられている。今度は俺が助ける番だ。
「カイラ、今から俺の魔力をカイラの中に入れる。そしたら少しは動けると思うから、二人でこの試験を無事に終わらせよう」
「うん、わかった」
寝ぼけたような口調で、そういうカイラの額に手をかざし魔力を注いだ。手と額の距離は空けないほうがよさそうだ。その間からダンジョンに吸い込まれる。だから最低限、動けるようになるまでは直接魔力を送りこむ。その後は少し距離を取りながら送り続けることにする。多少ダンジョンに魔力を吸われるのは仕方がないと割り切ろう。
絶対に二人で合格すると心に誓い、魔力を送り続けた。
そろそろ肌寒くなってきました。インフルエンザも猛威を振るい始めているそうです。体調に気を付けながら生活していきたいこの頃です。さて、今回もここまでお読みいただきありがとうございます。まだ何も倒していないのですが、今回も楽しく書けました。もう少し続けようと思います。また次回もよろしければお読みいただけると幸いです。




