報酬の使い道
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テーブルの上には金貨が数枚並べられている。今回のクエストの報酬だ。金貨は均等な大きさ、厚みで丸みを帯びていた。この目の前にある金貨はクエストの報酬の欄に示されていた額と比べかなり多い。報酬を受け取った時に不審に思い、受付で質問したところ今回の薬草採取は、かなり危険なものであり、他の冒険者が誰も受注しなかったため、今回のクエストクリアに際して依頼主が色を付けてくれたらしい。そんなわけで今目の前には4枚の金貨が並べられていた。どうやらこの世界では金貨1枚は銀貨15枚の価値があり、銀貨1枚は銅貨20枚とレートが決まっているらしい。もちろんこの金はこの街でしか使えず、次の街に行く前に外貨交換のようなことをしないといけないらしい。しかし、当分はこの街に滞在しようと考えている。というのも俺たちはいまだ、まともな装備を持っていない。せめて武器は揃えてから次の街を目指したいと考えている。俺は魔法をメインで使うが、それも杖があると目を見張るレベルで効果が変わるらしい。魔力を集めやすいのだとか。だが魔法は専門性が高いため、それに伴い魔法の使用に用いる杖は剣や他の武器に比べて値が張るのである。なのでカイラには杖は無くてもいいと言ったが、持っていたほうが魔力のコントロールも簡単になり、魔法の威力が上がるから絶対に持っておくべきと言われ、専門書みたいなものかと思い購入することを決意した。なのでしばらくは、この街のギルドでクエストを受けて必要な装備を揃えることを目標とする。
「蓮の杖を買うのにはまだ足りないけど、今日のクエストはかなり良かったね、明日も同じやつ行く?」
「いや、少し違うやつに挑戦したいって思ってるんだけど、どうかな?」
「うん、別にかまわないけど、どうして?」
「いや、今日のはたまたま報酬に色が付いただけで、次も同じようにクリアしても、また同じ量の報酬がもらえるとは限らない。いや実際問題、貰えない可能性のほうが高いと思う。あの受付の人が言っていたように誰も受けないから報酬が上がっただけで、受ける人がいるなら別にそんなことする必要はないって考えるだろ?それに俺たちが受けたクエストにボーナスのようなものが付いたってことはおそらく既に知られているだろうし、明日以降はあのクエストを、金に目がくらんで受ける奴も多かれ少なかれいるはずだ。だから、俺たちは別に危険を顧みず、あんなクエストを受ける必要はない。死んでしまったらおしまいってことを覚えておかなければならない。だから明日は少し報酬が劣っていても別のものを受けようと思うんだけどどうかな?」
死んだらおしまい。そう、あの手が滑った時に死を感じた。あんな目にカイラを合わせたくないし、時間はかかっても安全な道を進むべきだ。自分に言い聞かせるように何度も頭の中で反芻した。
「そっか、それなら別のやつにしようか!」
カイラは翡翠色の目を動かし、斜め上を見ながら少し考えるようなそぶりを見せた。
今日は疲れた。カイラと少し話した後、報酬を手に取って、夕食を食べに宿の外に出かけた。
今日は肉料理を食べようということになった。なので肉料理を提供している店を宿で調べ、そこへ向かった。
店の看板にはいかにも肉を調理して提供していますと言わんばかりのデザインがこしらえてあった。その看板の下をくぐり店の中に入るとジュージューという音が鼓膜を刺激し、荒々しくも、どこか繊細さを感じる香りが食欲を駆り立てた。席に用意され二人してステーキを頼んだ。しばらくして俺たち二人の前には煌びやかに肉汁によって輝く肉の塊が用意された。目が、鼻が、口が、体中の五感がそこに意識を持っていかれたように感じられる。カイラも同様に肉を凝視している。店員が席を離れていった。それを合図のように俺たち二人は肉にかぶりついた。いや実際はナイフとフォークを使って切り分けたものを口に運んでいたのだが、そう表現するに値するほど手が、口が止まらなかった。昼間から何も食べていないためより一層おいしく感じられた。腹が満たされる喜びに浸りながら、空腹は最高のスパイスという言葉は真意だなと思った。そうして食欲を満たした俺たちは最後にコーヒーのような味の飲み物を頼み、くつろいだ後、店を後にして宿に戻った。
報酬に関しては税金などのことは考えないようにします。基本ファンタジーなので税金とかあまりに現実的すぎるものを登場させたくありません。話のテーマにはするかもしれないですが。主人公が税金の計算して源泉徴収がとか控除がとか言い始めたら悲しくなるとおもいます。小説の中ぐらいそんなこと考えなくてもいい世界であってほしいです。最後になりますが今回も読んでいただいた方、本当にありがとうございます。皆さんの訪れを確認するのが毎日の楽しみの一つです。重ねてお礼申し上げます。




