ヒトを超えしヒト 3
「イヒヒヒヒッ。そんなにぃ、怯えなくてもいいんだよぉぉ?じぃっくりとオレ様好みの愛玩動物に作り替えてくからねぇぇえ」
天神の下衆な発言に、リンは身を震わせて小さな声でレンの名を呼ぶことしかできなかった。それもそうだろう。この1年、地下深くのシェルターで天人の魔の手から逃れ続けていた2人、特にリンは天人の恐ろしさが頭から薄れていたのだから。そんな中で現れたのはただの天人ではなく、最高ランクの存在。レンも失ってしまったリンには、もうこの天神のペットとして、好きに弄ばれる未来以外には残されてはいなかった。
「さぁぁぁぁあ!楽しい時間の始まりだよぉぉぉ?」
「いゃぁぁぁぁぁぁあ!!!!?」
リンに、ついに天神の指が触れようとしたその時、奇跡は舞い降りる。
「リンに触れるな、ド屑が」
「ァァァァァア?死に損ないがァァァァァア!!なんだってぇ??……ァァア?なんだぁ?その姿はぁ!?」
「レン!!……レン、なの?」
そこに舞い降りた奇跡、既に息絶えかけていたはずのレンは、先ほどまでとは似ても似つかぬ姿へと変わっていた。幼さの残る風貌は変わっていない。ただ、その頭には漆黒の一対の角が生え、背中には正反対の純白の翼が生えていた。
「ボクは、カミを斃す者だ」
「ヘェェェェエ?でもぉ?さっきまで死にかけだったガキにぃ?なぁにができるっていうのかなぁ?」
「それはさっきまでの話だろ?もうボクに傷なんてひとつもないさ。さぁ、第2ラウンドを始めようじゃないか、天神?」
「少しは楽しませてくれヨォ?ガキィ?」
天神とレン?の第2ラウンドが幕を開ける。
第2ラウンドは先ほどまでとは打って変わり拮抗状態を続けていた。天神の攻撃はレンに効いてはいるものの大したダメージには至っておらず、逆にレンの攻撃は傷一つつけられていなかったさっきと違い、着実に天神にダメージを蓄積させていく。
(どうなっているぅぅ?なぜぇ、このオレ様がぁ?ダメージを受けているのダァ?)
天神はレンに悟られないようにしつつも焦り始めていた。それもそうだ。先ほどまでは児戯のように嬲っていたはずの下等なヒト相手にダメージを受けているのだから。しかし、天神もまだ本気を出したわけではなかった。
「キサマのようなぁ?下等なガキにぃ、コレを使いたくは無かったんだがぁ?こうなってはぁぁ?仕方がないなァァア?」
『神権解放』
天神の手には、金に輝く豪奢な剣が握られていた。
「これでぇぇ、キサマをぉぉ?葬り去ってやるぅぅぅぅ!!」
そう叫び散らす天神を前にしても、レンは冷静だった。
「お前が武器を手に取るのなら、ボクも握ろうかな」
『天を墜とせし大鎌』
レンの手に握られたのはその体躯よりも大きい鎌だった。
戦いはいよいよ最終局面を迎える。




