ヒトを超えしヒト 2
始まった戦闘は、戦いなんて呼べないほどに一方的だった。
「んー?息巻いてるわりにぃ?ザコすぎないかなぁぁ?えぇ?」
「ぐふっ……差が、ありすぎるのか」
「そうだねぇ?まあ、地上にいるうちのザコ相手ならいい勝負できるんじゃなぁい?でも、テメェが相対してるのはぁ、この地球に降り立ったぁ、天人のなかでもぉ?5神しかいないぃ、最高ランクであるぅ、天神なわけでぇ?まだ生きてるだけでもぉ、誇っていいヨォ?」
そう語る目の前の敵を前にして尚も、レンの心は折れてはいなかった。
「そうか。だったら、お前に勝って誇らせてもらおうかな」
「言うネェ?」
しかし、いくら心が折れていないからといっても力の差は戦車に丸腰の人間が挑むようなレベルで開いていた。そうして、徐々に、確実にレンは死へと近づいていた。
「っ…………っ」
「アハァァァァァァア!所詮ヒトの分際デェ?よくやったんじゃなぁい?でもぉ?もう限界みたいだネェ?」
傷一つない涼しい表情をしながら耳障りな話し方で話す天人に、レンはもはや反論する事も、それどころか意識すらも手放しかけていた。
「じゃぁぁあ?キミにはぁ?特別にぃ?このメスがオレ様に無様に弄ばれるザマをぉ、その特等席からぁ?見させてあげるヨォ!」
その声を意識の遠くの方に聞きながら、レンは意識を手放していった。
「……こ、ここは」
「おっ?目が覚めたかぁレン」
「誰だ!?というかここはどこだ!?」
「簡潔に言えばレン、お前の精神世界だな」
「精神、世界?」
「そうだ、あの天神?とか言うやつにボッコボコにされて意識を手放したお前が生と死との狭間に来たことによって開かれた世界さ、ここは」
「な、なるほど。ということは僕はもうすぐ死に絶えるってことか」
「このまま何もしなけりゃな?」
「それはどういう……」
「ホントは説明してやりたいところだが、今はそんな時間はない。から、お前には酷かもしれないが選択を迫るぜ?」
「選択……」
「あぁ。お前に今残されている選択肢は2つだ。1つは、このまま何もせずに死に、お前の愛するリンをあの天神のペットして救いのない未来に誘うこと。そしてもう1つは、」
「もう1つは?」
「このオレと契約して生き返ることだ。ただ、オレと契約しちまったらお前はヒトではなくなるけどな」
「ヒトではなくなる…?」
「そうだ。何になるんだ?って顔してるな。これもとりあえず簡潔に答えてやる。それはな?魔人だ」
「アクマ……」
「そうだ。この道に進んでしまえば、お前はもうヒトには戻れない。人外の存在になっちまう。……さぁ、お前はどうする?」
それは、本来即答できるような選択ではなかった。ヒトではなくなるということはどういうことかは理解しきれていないけれども、天人達のような存在となり得ることが想像できたからだ。でも、レンの答えは明確だった。
「僕は、リンを守るためならば、ヒトであることなんて捨てるよ」
「契約、成立だな」
目の前のヒトではない何かがそう言うと、僕の中を力が駆け巡る。
「さぁ、神の天敵である魔人が目を覚ます時だ」
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何卒…何卒……




