ヒトを超えしヒト 1
レンとリンが潜んでいるシェルターは、地下深くに存在しており、さすがの天人達でもその存在を認知することすらできていない……はずだった。
「私たち、いつここから出られるかなぁ」
「うーん、日本に現存するヒトが僕達2人だけっていうことを考えると、まだしばらくはこのシェルターで暮らさないといけないかなって思うけど、先人のおかげで住むには困らないここでの暮らしもまぁ悪くはないんじゃないかな」
「まあ、私はレンがいてくれたらそれだけで……」
そう話していた2人の下に現れ、この非日常的なここ1年の日常を壊したのは、希望ではなく絶望だった。
「ようやぁく見つけたぞぉ?下等なヒトどもぉ?」
現れたのは、ランクがいくつか存在しているといわれる天人の中でも最も高いランクに位置する、ヒト型天人だった。
今までシェルターが見つかってこなかったのは、地上にいる天人が低ランク(天人はランクが高ければ高いほど人に近い見た目、大きさに、低いほど化物のような見た目、大きさになる)だったため、人1人入れるだけの入り口が視認されていなかったというだけだったのだ。そもそも、低ランクの天人ですらヒトは太刀打ちできなかったため、高ランク帯は地球に降り立つこともなく高みの見物をしているはずだった。ただ、今この時、その定説は最悪な形で覆されてしまった。
「このシマに唯一反応が消えないヒトをいつまで経ってもうちのザコどもが見つけられないからさぁ?痺れ切らしちゃってさぁ、オレ様が出張ってやったってわけぇ、なんだけどぉ?上手くカクレテタネェ?ありゃたしかにぃ、あいつらじゃあ見つけらんないわけだわぁ」
そう話す天人を前に、レンとリンの2人は微動だにすることができていなかった。
「てかさぁ?せっかく見つけたってのにぃ、まさかこの島最後のイキノコリガァ、こんなガキどもだとはオモわないよなぁ?拍子抜けもいいところだぜぇ」
尚も動けない2人を見定めるようにしながら話す天人。そして、次に話した言葉は2人をそれぞれ動かすこととなる。
「でもさぁ。さすがは生き残ってるだけあってぇ?メスの方はいい見た目してんじゃぁん?オレ様の愛玩動物にしちゃおっかなぁ?」
その瞬間、リンは恐怖に染まる表情で後ろへ退がり、それに反するようにレンはリンの前に立った。
「たとえ天人だとしても、リンは渡さないし指一本触れさせない」
「活きのイイガキだねぇ?いいよぉ?じゃぁぁ、オマエをズタボロに痛め付けてから、じぃぃっくりとそのメスを堪能させてもらおっかなぁぁ」
絶望しか見えない戦いの火蓋は、切って落とされる。




