1 これが流行りの婚約破棄
新しい長編始めました。更新は不定期になるかと思います。
まだ小説書き初心者にて、拙い文章となっているかと思いますが、よろしくお願いします^^
「レディーア・オーリン! そなたとの婚約を破棄させてもらう!!」
高らかにそしてはっきりと告げられた言葉。
会場中に響き渡るほど通りの良い、特徴的な声。
しかし、その魅力的な声で告げられたことは、あまりにも衝撃的すぎる内容だった。
しんと静まり返る会場に、誰一人として身動きが取れないでいる。
そう。告げられた私でさえも、瞬きすらできずにただ立ち尽くしている。
「なに。どうしたんだ。それが君の望みだったんだろう?
君からは告げられるはずもないのだから、僕から告げたんだ。
なぜそんなに呆然と立ち尽くしているのだ。心の中では喜んでいるのだろう?
一言くらい返事したらどうなのだ。」
あまりにも不遜気に言い放つ王太子。
えぇ。彼がこの国の王太子、ベリーツ・ユフ・サガール殿下です。
しかし、一国の長となることが約束されている立場の人間から、このような言葉が発せられるとは皆信じられない気持ちでいっぱい……というわけでもない。
彼とともにその横に並び立つ女性に、視線が釘付けになるのは致し方ないのだ。
王太子が最近、密かに通じていると噂の女性がそこにいた。
このような場でも並び立つのが許されるほどの人物なんだと、周囲は勝手に理解している。
周囲だけではない。
婚約者である私も、王太子殿下はこの女性との結婚を望んでおり、今こうして私に婚約破棄を言い渡しているのだと理解している。
そう。つまり私はフラれたのだ。
あんなに努力して、王太子殿下に相応しくあろうと、王太子殿下に気に入っていただこうと行動していたのにもかかわらず。
その隣に並び立つのは彼女であるのだと、このように人が集う場所で、そう宣言されたのだ。
絶望せずにはいられないではないか。
「……殿下。わたくしの事は、もう必要ないのですか?」
「あぁ。そう言っているじゃないか。」
「……そう、ですか。」
これが今、巷で流行っている婚約破棄というものか。
まさか自分が体験することになるとは思いもしていなかった。
小説や噂だけの産物ではないのか、と疑いたくなる気持ちをぐっとこらえる。
長年慕い続けあれほどまでに努力したにもかかわらず、彼は私以外に最愛を見つけたのだ。
現実を直視しなければならないのだろう。
ふっと瞼を閉じて、今までの彼との出来事を振り返る。
幸せなひと時とサヨナラするカウントダウンが始まった。