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魔法使いと黒龍と。  作者: あおばんこ
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第5話

目が覚めるとそこは保健室の中だった。保健室には健康診断で一度だけ来たことがある。体が痛むと思ったら、至る所に包帯が巻いてある。何があったんだっけ。思い出そうとすると頭の奥が激しい痛みに襲われる。そのせいで何も思い出せない。唯一思い出したのは第二王子の顔だけ。それ以外何も思い出せない。

「あらグロキニアさん。目が覚めたのね。」

「…先生?」

声をかけてくれたのは保健室の先生、だろうか。初めて会う先生だ。とても優しそう。

「グロキニアさん。さっき何が起きたか覚えてるかしら?」

先生の質問に首を横に振ってこたえる。すると先生は安心したように笑う。

「まだ、授業の途中だから戻れそうだったら授業に戻ってね。場所はさっきまでと同じホールだから。」

「はい…」

先生はそれだけ言うと走ってどこかへ行ってしまった。時計を見る。授業が始まってからもう2時間は経っている。まだやっているのか。なら、早く授業に戻ろう。思い出せないことを思い出そうとするのは無駄なことだし。確かに気になるか、気にならないかと問われれば気にはなるが、絶対に出来なさそうな無駄であることはあまりしたくない。何も思い出せないわけだし。ベッドから降りて近くに置いてあった自分のブレザーを着る。ホールに行こう。そう思って、保健室の扉に手をかけようとしたとき、私が寝ていた隣のベッドから音が聞こえた。誰かいるのか?少し気になってしまった。好奇心から、ベッドの周りのカーテンの間から中をのぞいた。中にいたのは紫色の髪の男の子。丁度良く起きたみたいで、寝ぼけたその目と私の目が合う。

「こっちみんなブス。」

…は?

「聞こえねーの?早くしめろって言ってんだよ、下民。」

くっそむかつくな、こいつ。ブス?ええ、知ってますけど。知ってますけど、こんな風に面と向かって言われるのはすごく嫌なんですけど。というか、この人第二王子様じゃん。さっき意味も分からず私を睨んできた人。さすがに私も勝手にカーテンを少し開けてしまったし、悪い部分はあると思うけどさ。そこまで考えてから、カーテンを思いきり開けた。

「私はブスじゃなくて!マネア・グロキニアよ!!この半女王子様!!!!!」

後にも先にも第二王子にこんな悪口を言ったのは私だけだと思う。第二王子は、カノンと同じで身目はよく愛想も良いと皆口をそろえて言う。だが、見下した相手、愛想よくする必要もない相手にはすこぶる口が悪い。だが、第二王子が学園に入学してからまだ誰にも口の悪さを見せたことはなく、本当は口が悪いというのは嘘なんじゃないかという噂すら出始めていたみたいだ。これが今朝ルミから聞いた情報。嘘つけ。普通に口悪いわ!!第二王子は私のくだらない悪口に反応して思いきり怒りをあらわにしてるみたいだ。第二王子とちやほやされても所詮は子供。まだまだね、と思う私も同じようにくだらない悪口でこんなに怒っているんだっけと冷静に状況を振り返る。我を思い出しやるべきことも思い出す。いかんいかん、こんなところで何かする前に早くホールに戻らなければ。今もいちよ授業中なわけだし。プイっと第二王子から目を反らし、再び扉のほうへ向かう。...あれ、でもなんでこんなところに第二王子もいたんだろう。さっきまで第二王子も私と同じようにホールにいたはずなのに。一瞬気になったけど、でも第二王子と話したくないという気持ちが勝ちそのまま保健室を出た。


「あら、マネア貴方どこ行ってたの?魔法種を確認してないのは貴方だけよ。」

ホールに戻ると、ルミからそんなことを言われた。さっきまでのことを何も覚えてないから、私だけ確認すらしてなかったのかー、と思いながら席に座る。ちなみに包帯巻いてる私を見てルミが驚いていたのは言うまでもない。今は寮の寮服を配っているみたいで、先生が私が戻っているのに気づくと前に呼び出された。魔法種を確認を行うのかな。前に行くと黒く濁った水晶玉が用意されていてその水晶玉に手をのせる。そして先生に言われた通りに呪文を唱えた。これで魔法種が確認できるらしい。

「リア・アネモネア」

すると水晶玉の周りに風が吹いた。どうやら私の魔法種は風みたいだ。風ということは寮はノービレ寮か。グードシューティヒ寮が良かったから少し残念。でも、風は師匠と同じだからいいか。帰省の時にこれからは魔法も教わろう。先生からノービレ寮の寮服を受け取り、元の席へ戻る。ルミの手元には私と違った寮服が抱かれていた。

「マネアはノービレ寮だったのね。」

「そうみたい。ルミは、その寮服ならグードシューティヒ寮かぁ~。いいな~」

「そうかしら?私としてはエミリアもノービレ寮だったからノービレ寮が良かったけれど。」

エミリアと一緒!その言葉に少なからず舞い上がってしまうも目の前のルミが複雑そうな顔をしたから喜ぶのは我慢した。でも、そうか。これからはルミとは別々の部屋か。少し寂しそうにうつむくルミの手を握る。

「部屋は一緒じゃなくなってもクラスの席は隣だし、ルミは私が一番大好きな友達だよ」

「...そうね。私もよ、マネア。」

別に一生のお別れではないが、しっかりとお別れをしておく。もし、この先二度と会えないお別れをしなくちゃいけない日が来たら私は大泣きせずにはいられないだろう。だって、今既に泣きそうだから。まぁ、そんなことないと思うが。


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