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第八話 今ある景色 未来の景色

 第八話。貴重な日常回となっております‼︎

 いきなりだが、タピオカドリンクという飲み物のを知っているだろうか。タピオカドリンクとは、キャッサバという芋から毒素を抜き、その毒素を抜いたものからデンプンを抽出して作られたタピオカと呼ばれる粒を入れた飲み物である。そんなタピオカドリンクはSNSを通じて若者の間で流行し、ブームを築いた。しかしそのブームの裏では写真を撮ってSNSに投稿したら、ろくに食べずに廃棄してしまうという闇があったりなかったり…


「それで、私達は何故そのタピオカドリンクとやらを買う為にわざわざこんなに長い行列に並んでいるのかしら。」


「うーん。何事も経験だよ。ボク、飲んだこと無かったんだ。」


「私も飲んだことは無いけれど、別に興味も無いわ。」


 二人は神名市にオープンしたタピオカドリンクの専門店の前に出来た行列に並んでいた。

 元々は神名市の図書館で勉強をする為に神名市の駅に集合し、そこから二人で図書館に行く予定だった。そのはずだったのだが、その行き道で舞が行列に気付き、その行列の原因がこの新しくオープンしたタピオカドリンクの専門店だと知った彼女はタピオカドリンクを飲みたいと言い出した。こうして二人はタピオカドリンクの為に行列に並んでいるという訳だ。月美は腕時計を見る。予定より勉強をする時間は短くなりそうだ。月美は普段から予習復習をこなしているのであまり問題は無いのだが、舞はどの程度勉強が出来るか分からない為、正直この状況は好ましくない。


「その割にはちゃんとついて来てくれるんだよねー。」


「まぁ、あなたがいなかったらあの蛾のデビルホロウをあそこまですんなりとは倒せなかったというのは事実。今後もしばらくあなたと二人で戦うことになる訳だし、多少は譲歩するわ。」


 その答えに満足したように微笑む舞。それでもまだ疑っている自分に嫌気が差す。それを知ってか知らずか手を繋ごうとする舞の手を躱す月美。


「ただ、今回みたいにあなたといるとなかなか本題に入れなそうだということは常に意識して行動するわ。」


「あー、そうだよねー。月美ちゃんって、これをするーって決めたら、他のものには興味を持たずにやるって決めたことしかやらなそう。」


「効率的でしょ。悪い?」


 そんなやりとりをしつつ、舞は懲りずに月美の手を狙う。月美は涼しい顔でそれを躱し続けている。まるで行動を読んでいるようだ。


「悪くはないよ。ただ、たまに寄り道してみたら新しい発見とかもあるかもって思ったり思わなかったり。あ、列進んだ。」


 どうやら月美の裏をかくことは不可能らしいということは軽く頬を膨らませつつ手を繋ぐことを諦める。その様子を横目で見つつ、月美は考える。本来なら、別に手を繋ぐことを拒まない。舞が不快な人間でもなければ、減るものでもないからだ。それでも手を繋ぐことを拒む理由。それは、ここが神名市だからである。神名市は金城家のテリトリー。舞を調子に乗らせると何をしでかすか分からない。そして月美は、金城の目が届く範囲で目立つのは出来るだけ避けたい。神名市以外で集まればここまで気を張ることもないだろうが、月美の住む横島市に呼ぶのも、いざというときのことを考えると余り賢策とは言えないし、そのような状況で舞の住む場所を聞くのも良心が痛む。よって、現状唯一の二人の間で中立かつ二人とも行き慣れている場所である神名市を選ばざるを得ないというわけだ。


ーとはいえ、大義名分も無い状態でこう何回も神名市に出入りすれば金城家にあらぬ疑いをかけられる可能性はある。早急に妥協点は見つけるべきね。


 などと考えつつ、舞にスキを見せないように警戒することをやめない。舞の性格上、スキを見せたらまた月美と手を繋ごうとするかもしれないと判断したからだ。その判断が正しい証拠として、列に遅れないように前の動きを確認しつつも、たまに月美の様子を伺っている。以前電車で見ていたときのように、月美にはバレてしまっているが。

 そんな動きの無い、彼女達の巻き込まれた現象とは比べものにならない程くだらない攻防を繰り広げている間に最前列に近付いていた。

 と、月美は何を頼むか決めていなかったことを思い出す。メニューを見て、タピオカ入りのコーヒーを注文することに決める。

 しかしここで彼女は、以前カフェで愛と飲んだコーヒーのことを思い出す。冷ますために、好きでもないミルクや砂糖を大量に入れた甘ったるいコーヒー。ブラックコーヒーを好む月美にとってはただただ不快だったその味を思い出すと、タピオカ入りのコーヒーの味が不安に思える。そのようなこともあり別の味のものに変えた方が良いかと考えている間に気が付けば列の先頭にいた。仕方無く最初に決めていたタピオカ入りのコーヒーを注文する。隣のレジを見ると、舞はタピオカ入りのバナナオーレを注文していた。手早く会計を済ませて商品を受け取り、列から離れる。少し遅れて会計を済ませた舞がこちらへ向かってくる。


「お待たせ〜。」


「別に。さぁ、行きましょう。」


 これ以上会話する意思はないことを示す為、ストローに口を付ける。コーヒーはブラックではなく微糖。タピオカ自体の甘さも控えめとなっている。長い行列が出来ていた理由として、ただタピオカが人気であることと、オープンしたばかりだという理由だけでなく、このようにそれぞれの味に合わせたタピオカを選ぶという手間に時間がかかっていたという理由もあるのかもしれないと推測。と、どうやら考えごとをしながら飲んでいたためスキを見せてしまったようだ。いきなり肩を組まれ、ツーショット写真を撮られる。睨みつけるが、舞はそれを気にせずに写真を確認する。その写真を少し見て、彼女は何故か笑い始める。理由が分からなかった月美は舞のスマホの画面を覗き込む。そこには、驚いた顔でカメラに目を向ける月美と、急いで撮ったからかイマイチキメきれてない舞の姿。それに軽くブレてしまっている。


「…次からは私の許可を取りなさい。」


「それって、これからもボクと一緒にいてくれるってこと?」


「当然でしょう?聖因子を持っているのも、デビルを知ってるのも、アースを除けば二人だけだもの。出来るものなら、良好な関係を築きたいと思っているわ。」


「ふーん…月美ちゃんって、やっぱり優しいね。優しい、……きだ。」


「ん?何かしら。」


「いや。何でもないよ。」


 そう言い微笑む舞の姿が、どこかこれ以上の会話を拒んでいるように見えて。月美はもう一度、ストローに口を付ける。先程よりも甘く、不快な味に思えた。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「あぁ〜、分っかんない。」


 気怠げに呟く舞。彼女の性格上、ここが図書館で無ければ大声で叫んでいたかもしれない。そんな彼女を横目に見つつ、自分の課題を進める。


「あなた、この時期にそんな状態で志望校に合格出来るの?」


「いやね、ボクだって分かるところはちゃんと完璧に分かるんだよ。ただ分からないところがボロボロなだけで。」


「言い訳しないの。そういえばあなた、志望校はどこなの?」


「神名西。」


「ちょっと、神名西って、神名西大学付属高校のことよね…間に合うの?」


 気まずげに目を逸らす舞。頭を掻いてまた教科書に視線を移す。しかし、そんな彼女のペンはなかなか進んでいない。そんな彼女の様子を見ていられなくなった月美は軽く溜息をつく。


「それで、どこが分からないの?」


「へ?あぁ、ここなんだけど…」


 舞は戸惑いながらも月美に自分が分からない点を伝える。すると月美はその疑問について、的確なアドバイスを与える。それでその続きも分かったようで、次々とペンを走らせる。そんな様子を見てもう大丈夫だと判断した月美は、自分のノートに視線を移す。しばらく無言でそれぞれ勉強していたが、ふと舞が口を開いた。


「ねぇ、月美ちゃん。ボク、思うんだ。ボクらが感じてる今って、とってもかけがえのないものなかもって。」


 月美は口を挟まない。仮に口を挟んだら、今舞が伝えたいことを伝えきれなくなってしまうと思ったから。一度月美の方を見て、話を聞いていることを確認してから舞は少し考えて自分の思いを伝えるのに適した言葉を探し、ゆっくりと話し始める。


「ほら。ボク達しか知らないことだけどさ。今流れてる時間って、本当は二度と進まなかったかもしれなくて。そう考えると、ボク達はこれから高校生になって、大学生になって…今日行ったタピオカ屋さんみたいに新しいものなんかも出来たりして、世界ってどんどん変わっていく。だから、今ある世界が当たり前って思っちゃいけないんだなって。」


 そうは言いながらも、舞は納得のいっていない表情をしていた。それでもまだ何かを伝えようと考えているようで。そんな彼女の様子を見ながら月美も考える。例え舞が伝えたかったこととは違うとしても、時間が止まったことを通じて『今ある世界が当たり前って思っちゃいけない』ということを月美も再認識したということに変わりはない。

 月美の考えていることを知ってか知らずか、「はい、この話はもうおしまい。」と言い締めくくり、月美に一つの問いを投げかける。


「そういや、月美ちゃんはどこの高校に行く予定なの?」


 月美は黙ってしまう。教師からも何度も言われてきたことだった。


「…まだ、決めていないわ。」


「…もし仮にそれが本当だとしたら、ボクより重傷じゃないかい?」


 少し前の舞がしたように、月美は黙って目を逸らす。


「じゃあさ、月美ちゃんも一緒に神名西に行かない?」


 この言葉に、月美は揺らいでしまう。舞と同じ高校に通うことは、正直都合が良い。そうすればデビルが現れた際、簡単に合流することが出来る。しかしデメリットとして、神名西大学付属高校は全寮制ということが挙げられる。常に神名市に滞在するのは、理由が無い限りはなるべく避けたい。逆に神名市に拠点を移す場合は神名西大学付属高校に通うのが良いだろうと考える。


「まぁ、選択肢の一つとして頭の片隅に置いておくわ。」


「ありがと。」


 腕時計を見る。2人で勉強や会話をしているうちに、思いの外時間が経っていた。ひとまず短時間で出来そうな範囲を決めるように舞に指示する。


ー今ある問題を解決するだけでなく、未来を見据える…


 考えつつペンを手に取る。参考書の問題を問いたが、いつもより内容が頭に入って来なかった。

 パッと見たときにはただの日常回に見えるかも知れませんが、実は今後の伏線がある…かも?


 次回は12月1日更新予定です‼︎

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