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第六話 Goal of fight

 第六話。蛾型デビルとの戦闘。月美の戦闘センスは如何に…

 蛾型の怪物はようやく様子見をしている暇があればリスクを排除すべきだということに気が付いたらしく、月美に向かって襲いかかる。どうやら石の槍のようになった六本の足による近接戦がメインらしく、不規則にその六本の足で攻撃を仕掛けてくる。想像以上に素早く、敵の間合いから逃げる隙が無く、ギリギリで躱すのが限界だ。


ーただ、それもそう長くは保たない。リスクを負ってでも、一旦離脱するしかない‼︎


 そう判断した月美は、一度後ろに下がるような動きを見せる。それは逃すまいと距離を詰める。それが月美の狙いだった。月美はあえて怪物に接近。月美の急な行動に対応しきれなかったものの、怪物の足の一本が月美の背中を抉った。

 現実よりは明らかに薄いであろう鈍い痛みを感じる。しかし、それぐらいは作戦のための必要経費だと割り切っていた。実際彼女は、計画通りほぼゼロ距離まで持ち込むことに成功した。こうすればこちらの射撃はほぼ確実に当てたい場所に当てられるだけでなく、自傷の可能性もあるため敵は下手に攻撃出来ない。

 それをすぐに理解した怪物はすぐに距離を取ろうとするが、月美はその隙を見逃さない。月美は二発の射撃を放つ。月美の狙い通り、一発は敵の体を貫通して羽の付け根にダメージを与え、もう一発は左上の足の付け根にダメージを与えた。機動力と攻撃力が格段に下がる。


ーこれ以上の深追いは厳禁ね。


 月美はそう考えると、即座にいくつかのプランを考える。離れようとする怪物の目に銃口を向けると、想像通り怪物は右上の足でそれを防ごうとした。左上の足は先程の射撃で機能が低下していた為、これで上二本の足は封じたことになり、逃げる隙が出来た。

 防がれなかったら防がれなかったで今後の布石が無くなることを覚悟で目を攻撃しただろうが、そうなったら最終的に舞のスペック頼りになってしまっていただろう。よって、怪物が目を防いだというのは月美にとって好ましい展開だった。

 こうして離脱に成功した月美は出来るだけ距離を開ける。充分距離を取って射撃態勢に入ると、怪物の周囲には砂塵が吹き荒れていた。鱗粉のようなものだろうか。それが少しずつ纏まり、いくつかの先端の尖った岩となる。


ーあるかも知れないとは思っていたけど…一方的な展開に持ち込めないのは厄介ね。


 それでも遠距離戦ならこちらに分があると考えていた。その根拠として、怪物は接近戦が得意としている、又は遠距離戦をするにはデメリットがあるはずだということが挙げられる。そうでなければ、近距離戦に拘る必要がないはずだから。

 こちらに分があるということは、少し余裕が出来たということだ。余裕がある内に、特殊技という自分に配られたカードを確認するべきだと判断した月美は、ハンマーを一度軽く倒す。

 現れたウインドウには、「ムーン・リコレクション」「マスカレイド・ルナ」という技名が表示されている。何故か「ムーン・リコレクション」という名前に忌避感を感じた月美は「マスカレイド・ルナ」を選択。すると、その技の効果が頭に入ってくるような感覚。その後、一瞬鈍い頭痛が月美を襲う。隣を見ると、もう一人の自分が虚な目で月美を見ていた。怪物も驚いていて、様子をを見ていたが、敵が増えたことに対する対応を決めたのか、周囲の岩のトゲの先端を新しく現れた方の月美に向け、一斉放射。そうして新しく現れた方の月美が移動出来ない状態の内に、元からいた月美に向けて特攻する。本来ならこれで牽制している間に接近戦に持ち込む為に接近する作戦だったのだろうが、月美が増えたことによりこのような対応をせざるを得ない状況になったのだろう。


「ただ、悪手ね。」


 簡単に敵の接近を許すわけが無く、射撃で牽制する。特に負傷していて防ぐのが難しい左上の腕辺りを重点的に攻撃することで、より長い時間を稼ごうと考えたが、怪物はその腕の付近の攻撃を受けつつ進んでくる。ダメージを負ってでも、攻撃を成功させる作戦だろう。


「その判断をもう少し早く出来ていたら、結果は少し変わっていたかもしれないわね。」


 横からの銃撃が怪物を襲い、左下の足が使用不可能な状態になる。恐らくもう片方の月美の仕業だろうが、あまりにも早すぎる。怪物の計画だと、まだ岩の対応をしていなければおかしいはずなのだ。しかしその理由を確認する間も無く、一時離脱することを強いられる。鱗粉を飛ばして軽いダメージを与えつつなんとか離脱に成功する。確認すると、もう一人の月美が想定より早く攻撃出来たカラクリが分かった。そもそもこの分身が一回しか使えないとは限らなかったのだ。よって、推測通り二人目の月美はちょうど今怪物の放った岩の対応を終えたところだった。そして、その二人目が作った三人目が横から怪物を攻撃していたのだ。二人目と三人目の月美が消滅し、最初からいた月美だけになる。

 「マスカレイド・ルナ」は自分のダミーを作り出す技。そのダミーは月美本体より少し劣る程度の思考能力を持ち、最初に込めた力の分だけ自律して活動することが出来る。更に、常に月美の意識とリンクしており、命令することで言うことを聞かせることも出来る。そして込められた力を使い果たしたらこのように消滅する。

 また1対1に戻った今が好機だと認識した怪物は、鱗粉の砂塵を前面に纏って月美を強襲する。ここで、月美は怪物が遠距離戦を好まない理由を理解した。砂塵が最初より明らかに少ない。つまり、本物の蛾の鱗粉に限りがあるのと同様で、怪物の鱗粉にも限りがあるのだろう。それでも鱗粉を使い切ろうとしているので、本物の蛾とは違い、失った鱗粉を再生出来る可能性は大きいと判断。敵としては仕方のない判断なのだろうが、月美に注目し過ぎた。


「今‼︎」


「待ってました〜‼︎」


 怪物の背後から緑色のエネルギー弾。舞の装備も完成したようだ。想定より時間がかかったことを考えると、先程の精神体を破棄して、本体の付近に新しい精神体を作る必要があったのかもしれない。アースが作った月美の精神体が仮のものだったのはその辺りが関係しているのだろう。

 怪物は月美しか見ていなかった為、砂塵による防御は前面のみ。無防備な背面からの攻撃はしっかりと突き刺さる。


「お待たせ‼︎月美ちゃん‼︎」


「いいえ。ちょうど良いタイミングよ。」


 短い会話を交わし、二人が並び立つ。


「決着を決める布石はもう打ってある。あなたは奴の動きを射撃で牽制して。」


「分かった。カッコよく決めようね‼︎」


 そう言い舞が怪物を銃撃する。それを槍でなんとか防ぐが、そちらに気を取られている間に月美を見失ってしまう。探す間を与えないように射撃を続ける舞。どうやら射撃の腕は月美より少し上のようで、怪物も少しずつ被弾している。と、気付けば真後ろに月美の姿。怪物の頭部を狙う彼女の銃口には、巨大なエネルギー弾と三日月の紋章。対応に悩む怪物。決着はすぐについた。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「なんとも解せない。」


 怪物の体が少しずつ崩壊していくのを見ている際に不意に呟いた舞の言葉に、月美が眉をひそめる。それに気付いた舞は、何が解せないのかの解説を欲しがっているのだと気付き、月美の無言の要望に応える。


「いやさぁ、月美ちゃんの最高にカッコいいところは良いんだよ。ボク得だから。でも気になることがあるんだ。あの怪物、最後の攻撃は防ぐことが出来たはずだと思って…」


「あぁ、それね。あなたは怪物との戦いを、どの辺りから見ていたの?」


「なんか月美ちゃんが二人から三人に増えたぐらいから。」


「なら分からなくて当然ね。じゃあ教えてあげる。単純な話よ。私は状況を大きく動かす際、決まってフェイントを仕掛けたわ。それは相手が短調な戦法しかとれないと予測したから。そして最後。私は奴の頭部に銃を向けた。」


「で、怪物は必死に考えた結果、正直に左側に残った最後の足で顔を防ぐか、それまで月美ちゃんに騙され続けたから足で胴体を防ぐかの二択を迫られて、胴体を選んだ結果月美ちゃんにやられちゃった、と。」


「大枠はそうだけど…あなたも、引っかかってるわよ。」


「え?」


「あなたはあの怪物の選択肢が二つしか無いみたいに言っているけど、怪物には様々な選択肢があった。強引に方向転換して、比較的使える足が残っている右側で受ける。私は近くにいたから、相討ち覚悟で強引に槍で攻撃する素振りを見せて、それを警戒して下がった隙に簡単に躱せるほどの距離まで退避する…あなたからのダメージをくらうリスクを負うだけで、奴にはそれが出来た。ただ私がそれまで二択を与え続けたから、奴は今回も頭部を守るか胴体を守るかの二択だと思い込んだ。」


「…なんか、すごい。」


 明らかに内容を半分も理解していないような目で月美を見つめつつ呟く。そんな二人の元に近づく人影。


「盛り上がっているところ悪いが、そろそろ情報の整理を行いたい。」


 そう言い、光の中から現れたアース。二人は彼の方を見る。舞は信頼の視線を、月美は疑惑の視線を彼に浴びせた。

 という訳で、無事初勝利です‼︎見ての通り、月美は戦闘自体の能力が高いというよりかは、自分が有利になるように敵を誘導するのが得意といったイメージです。舞の活躍は…まぁ、またいずれ‼︎

 次回は11月1日に投稿予定です‼︎

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