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第二十話 動き始める影

ー厄介なことになったわね。


 自分の拳銃に付いた砂時計を確認し、心の中でそう毒突いた。想定よりも聖因子の消費が多いのだ。敵に囲まれた際に「マスカレイド・ルナ」を使用したことが主な原因だろう。ヒトガタを撃破するために、「ムーン・リコレクション」を使用したというのも、少なからず影響しているはずだ。

 自分の聖因子の残量が危うい以上は舞に頼らざるを得ないと考えたが、すぐにその考えを捨てる。月美が知っている時点の戦闘だけでも、舞は「ムーン・リコレクション」で強化されたチャージショットと「樹斬ノ術」を一回ずつ使用している。月美ほどでは無いだろうが、聖因子に余裕が無いのは舞も同じだ。


ー敵の一体一体を撃破するのに使う聖因子を出来るだけ節約しなければ、聖因子が底をついてしまう。そうなった場合に何が起こるのか、私は知らない。やはり、聖因子を回復させる手段が時間経過しか無いというのはかなり重い枷になる。せめて、聖因子を回復させる能力を持った仲間がいれば…


 そんな考えがよぎったが、そんなものは無いものねだりだと自分に言い聞かせて、必死に対応策を練る。

 こちらに向かっていた近接戦闘専門だと思われる敵を銃で迎撃せずに、装甲の位置などを確認しつつ待つ。充分接近して来た相手の攻撃を躱し、装甲の薄い部分に向けて銃を短剣のように突き出す。銃の先端がデビルに突き刺さる。苦しんでいる間に引き抜き、拳銃をトンファーのように逆手で握って、肘打ちのような動きでデビルの頭部を殴る。それでも倒しきれなかったので、ハンマー部分で殴って視界を奪い、また肘打ちの要領で敵の喉元に銃口を突き刺すと、少しもがいた後にようやくデビルは消滅した。

 今の戦闘で消費した聖因子の量を知る為に砂時計を確認すると、傷付いた拳銃を修復する為に微量の聖因子が減ったのみだった。そのことを認識したのも束の間、近づいて来ていた別の近接戦闘専門のデビルの攻撃を躱す。聖因子をほとんど消費しなかった分、時間は大量に消費してしまっていたようだ。

 月美はとっさに近くにいたデビルの噛みつき攻撃を躱し、顎部分を蹴り上げる。そうすることで強引に敵の姿勢を変え、喉元を掴む。そうしてそのデビルを盾にして遠距離攻撃を防ぎ、ゼロ距離射撃で盾にしたデビルの喉を射抜く。その一撃でデビルが消滅したのを確認し、それを見計らってこちらに接近してきたデビルの鎌攻撃を、あえて更に接近することで回避。軽いチャージショットを溜め、砲撃。その砲撃は貫通し、奥にいるデビル数体も巻き込む。デビルの影になっている場所で溜めたが故に、こちらがチャージショットを放とうとしていることに気が付かなかったのだろう。残されたデビルも突然の戦況の変化に頭が追いつかず、ただ周りを見渡し浮いている。その隙を逃さず、次々とデビル達の急所を狙い、射撃。最後の一体になる頃になってようやく状況を理解したようだったが、時既に遅し。頭部を撃ち抜かれて消滅する。


「月美ちゃん、こっちの数は充分減ったよ‼︎」


「分かった。最終段階に入るわ‼︎」


「了解‼︎何かあったら上空に二発、だね‼︎」


「お互い、合図に気付けるよう、周囲には充分気を配りましょう。じゃあ、健闘を祈るわ。」


「任せて‼︎」


 戦闘は大詰め。二人は別れ、敵の残党を探しに向かう。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


 舞は敵の分身に包囲されていた。少し戦ってみたところ、四体の内一体が本物で、残りは偽物のようだ。偽物に攻撃しても、弾丸はすり抜けるだけ。舞がハンマーを操作し、ウインドウにタッチするのと同時に敵が一斉攻撃。舞は自分の下と、それまでの攻防で目星を付けていた本体の背後に風の渦を生成し、その渦を通ってワープ。背後に回り込んだ彼女は頭部に零距離射撃を放つ。デビルは消滅。同時に分身も消滅する。


ーこの風遁ノ術ってやつ、すっごく強いけど聖因子の消費が激し過ぎるんだよなぁ…


 確実に減っている自身の聖因子を確認しながら、舞は周囲を確認する。一番の難所を超えたと考えてはいるものの、気を抜いて手痛い損害を受けた場合、ラグナロク終了後に月美から注意を受けてしまいそうなので、なるべく細かく周囲を確認しながら考える。


ーこれが終わったら、三人目のヒトガタの人にも話を聞きに行かなきゃだよね。ただ、意識が戻るのがいつになるか分からないからなぁ。二人目の人は何の情報も持ってなかったし。二人目の人が特殊なのか、一人目の人が特殊なのかは分からないけど。ヒトガタが現れるのに周期とかあるのかな?聖因子をたくさん使うのは嫌だから、次に戦うのはもうちょっと先だと良いんだけど…


 建物に隠れようと中を確認すると、デビルと目が合う。そのデビルは遠距離型のようで、氷の触手を伸ばしてくる。


「バッカルコーン⁉︎」


 その触手をなんとか躱し、射撃で応戦。弾を防ごうとした触手が砕け散る。


ーさっきの分身出したのもそうだったけど、ラグナロクのデビルにしては結構強いや。油断したボクらを無傷で倒す為に、こうやって隠れて機会を伺ってたのかな?


 そう考えつつ、敵を観察。氷で出来たクリオネのような見た目。バッカルコーンのような触手は、少し時間が経ってから修復される。即時回復は無いようなので、まずは触手の処理が先だと判断。複数の触手による一斉攻撃を、銃撃で破壊。触手の半分を攻撃に、半分を防御に回しているようで、流れ弾が運良く敵の本体にダメージを与えるという淡い期待は潰える。


ーあぁ、もう‼︎めんどくさい‼︎さっき風遁ノ術を使って無かったら、迷わず樹斬ノ術で攻めれたんだけどなぁ‼︎


 このまま守り切られ、攻撃用の触手が再生する時間を稼がれるのが一番面倒だと判断し、特効。それに対し、デビルは防御用の触手を攻撃に用いて迎撃を開始する。それによって生まれた隙間を狙い、引き金を引く。正確に狙う為に一瞬止まった為、触手攻撃が掠る。しかし、ダメージを食らった分の収穫はあった。敵の本体にダメージが入ったのだ。触手の速さは目に見えて落ちている。これを好機と見た舞は更にデビルに接近。迫り来る触手を掴み、トンファーのように持った銃で殴る。儚い音を響かせて、触手が崩れ去った。


ーただの真似だしぶっつけ本番だったけど、なんとかいけた‼︎


 その流れで周囲の触手を破壊。どうやら触手の再生速度も落ちているようで、もう防御がガラ空きだった。頭部に銃口を向け、引き金を引く。下に躱そうとしたが、距離が短かった為それも叶わずに銃撃を受ける。溶けるように少しずつ消滅するデビル。と、窓の外に連なる二つの白い光が見えた。月美の銃弾だ。


ー月美ちゃん‼︎


 すぐさま向かおうとすると、背後から鉄の針が飛来し、舞の肩に刺さった。針が飛んできた方角を元に敵の居所を探すが、どうやらよほど遠くから狙ったらしい。


ーあぁもう‼︎こんな忙しいときに‼︎


 敵の居場所を、大体の方角と勘で予測し、先程のように風遁ノ術でワープ。長距離移動をした為、かなりの聖因子を消費したが必要経費だと割り切る。ワープ先で周囲を見回すと、視界の端にこちらから離れようとするデビルの姿。距離的に通常弾だと届かないと判断した舞は、全速力で飛んでデビルを追いつつ、チャージショットを溜める。確実に敵に届く距離になった瞬間、チャージショットを発射。デビルを撃破する。


ー時間が無い‼︎無駄使いとか考えてる暇も無い‼︎


 舞はまた風遁ノ術を発動。白い光の出所へとワープする。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


ーあと少し。あと少しだ。影山月美の聖因子はかなり減少している。これで、僕もやっと動き始められそうだね。


 月美の中で、何者かが機を伺う。二人の運命の分岐点は、着実に近付いていた。

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