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第十九話 共に戦うから

 二人が立てた基本方針は、序盤は上手く個別で奇襲を仕掛けてどうにか敵の数を減らして、中盤は背中合わせでお互いの背後を守りつつ移動せずに戦う。そして終盤は二人で隠れている敵を探りつつ移動し撃破。その最初の目標、敵の数を減らすを実行しようと散開する。


ー本来なら最初から背中合わせで戦いたいところだけど、この物量差で責められたら目の前の敵を処理するどころじゃ無い。まずはリスクを犯してでも、背中合わせの陣形が成り立つぐらいの戦力差に持ち込む必要がある。


 その作戦を立てた理由を思い出しつつ、月美は神名市の南東に位置する建物の壁をすり抜けてその建物の中に隠れ、窓から外の様子を確認する。視界の先に、数多のデビルの姿。その中の浮いた位置にいるデビルを探し、軽くチャージしたチャージショットで射抜く。どうやら敵はそのことに気が付いていないようだ。次の敵を見定めて、同じように撃破。


ーそろそろ移動した方が良いわね。建物の中は敵から見られにくくなるというメリットがある反面、こちらも敵の天井や床をすり抜けた奇襲に気付きにくいというデメリットもある。


 別の窓から外の様子を確認。敵の密集地帯を探し、そこに特大のチャージショットを放って強引に通り道を作って別の建物へと移動する。そこでも窓から外の様子を確認し、浮いた位置にいる敵を探ろうとしたが、月美は「ここは危険だ。」根拠のない確信に従って周囲に目を向ける。床の一箇所に違和感。銃を向けると、床の一箇所が、否、床の一箇所に紛れていたバッタ型のデビルが攻撃してきた。それをなんとか躱しつつ、銃を身を守れる位置に移動させて追撃に備える。危惧していた通り、空気の壁を蹴るように方向転換し、こちらへ追撃を仕掛けてきたのでそれをどうにか銃で受け流す。力の方向を逸らされてそのまま検討外れな方向に飛んで行ってしまったバッタ型の急所に向けて三発の通常弾を撃ち込み撃破。しかし、この戦闘が原因で月美の位置が敵にバレてしまったようで、壁を擦り抜けて四方から何体かのデビルが奇襲を仕掛けてくる。


ー面倒な展開ね。本当なら聖因子を温存したかったけれど、今はそんな余裕なんて無い。


 そう判断した月美は、回転しつつ引き金を引き、四方へ弾丸をばら撒く。それに怯んで敵が動きを止めている間に手早くハンマーを操作してウインドウを出し、「マスカレイド・ルナ」を選択、発動。分身をその場に残して、自分は天井を擦り抜けて脱出。敵は分身に気を取られて月美が逃げたことに気付いていないようだ。


ーそれでも油断は禁物。他の敵に気付かれない内に別の建物に。


 一瞬急上昇して敵の位置を把握。月美は事前に調べていたマップを思い出し、敵の位置と照らし合わせて最適な建物を判断。急降下して目的の建物に潜入。先程の二の舞にならないように周囲を確認し、敵を探す。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


 同時刻。舞は神名市西方に位置する建物に隠れ、月美と同じように浮いた位置にいる敵を狩っていた。


ーこれ、意外と集中力が要るなぁ。


 そんなことを考えていると、背後からデビルの襲撃。前方に気を取られ過ぎていたようだ。襲撃に気付くのが早かったのが功を奏し、どうにか無傷で躱すことに成功する。


ー危なかったぁ‼︎疲れが溜まって、集中力が切れかけてきてるのかも。油断しないように気を引き締めないと‼︎


 彼女は敵の攻撃に当たらないように必死に空を舞いながらハンマーを長押ししてチャージショットを貯める。少し貯めたチャージショットでデビルの心臓部を貫き、他のデビルに気付かれてないか確認。敵がこちらに気付いた様子は無かったので、狙撃体制に入る。何体か狙撃したところで敵に見つかってしまう。ハンマーを操作してウインドウを出し、風遁ノ術を選択。広範囲に防膜を張る。遠隔攻撃をして来た敵の攻撃を吸収。跳ね返しで近接攻撃をする為に近付いて来た敵を撃破。その様子を見て、デビル達は舞への警戒を強めて距離を置く。


ーうっわ。すっごく警戒してくれてる。実際はこの技、聖因子をたくさん使うから多用は出来ないんだけど。


 そんなことを考えつつハンマーを操作し、ウインドウを出しながら敵に急接近。先程と同じ攻撃が来ると判断したデビル達が四方に散る。


ー月美ちゃんが言った通り。警戒されるような動きを見せるだけでも、意外と離れて行ってくれるようだね。このまま樹斬ノ術で一体ぐらい倒しちゃっても良いけど、さっき聖因子を使ったばっかりだし。手の内を見せ過ぎるってのもあまり嬉しくないしね。


 舞は敵の逃げた方向を確認。逃げた敵が少ない方角へ移動する。と、宙へと登る白いチャージショットが目に入った。作戦の第二段階に移る合図だ。舞はチャージショットの出所に向かって、敵に気付かれ無いように建物の中を経由して飛行する。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「お待たせ、月美ちゃん‼︎」


「想定の範囲内、いいえ。むしろ優秀よ。」


 計画通り、二人は背中合わせになって正面の敵を撃破する。そんな中、月美は密かに焦燥感を感じていた。


ー分身を作るのに、予定外の聖因子の消費を強いられた。この量で最後まで足りるかしら?


 そんな危機感を抱きながらも、彼女は冷静に目の前の障害を排除していく。と、彼女の前に亡霊のようにゆらゆらと揺れながらこちらへ移動して来る影を見つける。その存在の正体を、かつて同じ存在と対峙した彼女は一瞬で悟る。


ー三体目の、ヒトガタ…


 二体目のヒトガタとは、高校生になる数日前に戦闘していた。その際、月美が「マスカレイド・ルナ」で生み出した分身に「ムーン・リコレクション」の副次作用を発動させてもヒトガタのオーラ攻撃を突破出来る事が判明したが、月美の聖因子消費が激しすぎる為、現実的では無いという結論に至っていた。月美は前方に乱れ打ちをすることで強引に視界に入る敵をヒトガタ以外全て処理する。そうして作った戦闘以外の行為をする為の時間を使い、振り向かずにヒトガタの動きに警戒しながら肘で舞の脇腹を二回小突く。舞が振り向く余裕が出来るまでの間に少しだけ溜めたチャージショットを放ち、ヒトガタのオーラ攻撃を誘発させる。脇腹に小突かれた感触。月美が取った方法と同じようにして余裕が出来たようだ。月美は「ムーン・リコレクション」を発動。自分の左腰辺りを見ると、舞がバトンを受け取るときのような形で後手で銃を差し出していた。それに向けて銃口を向け、引き金を引く。


「さぁ、バトンタッチだよ‼︎」


 背中合わせをキープしたまま180度回転。向かい合う敵を交代する。月美は新たにやって来た敵の急所を正確に狙撃。ヒトガタと対峙する舞の背中を必死に守る。

 舞は拳銃のハンマーを長押ししチャージショットを溜める。と、前方から急接近してくるデビルの姿が。


「月美ちゃん‼︎」


 舞が呼ぶと、顔の横から銃が。振り向くと、月美が舞に迫っていたデビルを撃破していた。


「よそ見しない‼︎ヒトガタを‼︎」


「ありがとっ‼︎」


 その間に充分溜まっていたチャージショットを放つ。その弾丸はオーラ攻撃を貫通し、ヒトガタを貫く。消滅する直前、建物内に潜んでこちらの様子を伺っていたデビル達が舞に襲いかかる。咄嗟に拳銃のハンマーを操作。ウインドウを出し、「樹斬ノ術」を発動。召喚した枝でデビル達を拘束。首を折って消滅させる。


「舞、今の攻撃で何体落とせたの?」


「5‼︎」


「隙を狙う為とはいえ、同時に行動している勢力。弱い分、多少は知恵が回るようね。厄介だわ。」


「っ‼︎うぉっ⁉︎危なっ⁉︎下から来るなんて、けしからんヤツだね‼︎」


「あなたはズボンだから、気にすることは無いでしょう?」


 下から迫っていたデビルに、伸ばしたままだった枝を槍のように用いて串刺しにする。無理な使い方をした影響で、串刺しにしたデビルと共に枝も消滅する。


「喋り過ぎ。注意力が落ちているわ。集中して頂戴。」


「寂し〜い〜‼︎」


 その言葉とは裏腹に、そこから会話は途切れた。舞の目は鋭く周囲を警戒している。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


ーやれやれ。ようやく彼女の聖因子がここまで減った。これで、ようやく僕も動き始めることが出来る。


 月美の中に潜む何者かが人知れず呟く。二度目のラグナロクの終焉は、少しずつ近付いていた。

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