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第十七話 りめいん・どりーむ

 5月中旬。月美と舞は、氷を纏うワニ型のデビルと対峙していた。


「じゃあ、試してみるわよ。」


「うん。お願い。」


 舞が敵を牽制している間に、月美がハンマーを倒してウインドウを出す。「ムーン・リコレクション」を選択し、舞の拳銃を射抜く。射抜かれた拳銃は、緑色に輝く。


「さて、この状態で通常攻撃をしたらどうなるのかな‼︎」


 引き金を引く。安易と氷を砕き、敵の装甲の薄くなった場所に突き刺さるのを防ぐ為に必死に逃げる。


「かなり効いているようね。」


「でも、一発一発で消費する聖因子は普通に撃つより多いから、消費する聖因子とダメージの割合は変わらなそうだね。」


「だとしても、時間短縮出来るのは大きいわね。それが知れただけでも大きい収穫よ。さぁ、逃げた敵を追いましょう。」


 二人が追うと、必死に逃げる敵の姿。装甲が崩れたのはかなりの痛手だったようだ。


「ボクが縛るから、月美ちゃんが決めて。多分装甲がない部分を狙えば、チャージショットじゃなくても行けると思うよ。」


「分かったわ。拘束は任せる。」


 月美が銃弾で逃げ道を防いでいる間に、舞が「樹斬ノ術」を発動、敵を拘束する。そのうちに敵に接近し、ゼロ距離射撃で敵を射抜く。舞の予想した通り、チャージショットを使わずに撃破することが出来た。二人は砂時計を軽く打ち合わせた。


「君達も、随分と慣れたものだな。」


 天空から、光。それが収縮し、アースが顕現する。


「戦い方の型のようなものを作れたのが大きいわね。」


「特殊技の使い方もいろいろ考えたしねー。」


「それで、あなたが呑気に世間話を始めたということは敵は完全に消滅したと見て良いようだけど。まだ時間を進めないのは、話したいことがあると見て良いわよね。時期からして、ラグナロク関連かしら。」


「あぁ。結界が限界を迎えるのは、恐らく6月中旬。精密に言えば、6月15日〜6月20日のどこかになるであろう。」


「つまり、ラグナロク前に戦うのはあと1回かしらね。」


 月美は考える。決して、自分達が準備を怠っているとは思わない。ただ、それで確実に勝てるとも限らない。


ーそれに、聖因子が無くなったら私達はどうなるかが分からない。下手に聞いても今のアースとの協力関係が崩れかねない。聞きたいといえば…最近行ったばかりだけど、「彼」にも会うべきかしらね。


 そんなことを考えていると話を終えたアースが時間を進めようとしていた。軽くアースに目配せをする。きっとそれだけでは意図は伝わらないだろう。だが、それで良い。何かあると感じ、上空から月美を監視してくれることが目的だから。時間が進む。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


 時間が進むと、そこはホームルームが終わった教室。


「月美ちゃん、お疲れ。」


「お疲れ様。あなた、確か今日は部活よね。じゃあ、また夜に。」


「う、うん。また夜に。」


 こうして二人は別れれる。舞は文芸部に所属している。そもそも、彼女はこの文芸部に入る為に神名西を志望したのだ。


ー月美ちゃん何があったのかな?


 そう考えながら、舞は部室へと向かう。神名西の文芸部は、活動がとても本格的なことで有名なのだ。多くの小説家を排出したという実績もある。部活に入って早々に、舞には一つの問題とぶつかっていた。それは…


「やっ‼︎木村センセ‼︎」


「もう、ボクはまだ小説家じゃないって何回も言ってるじゃん‼︎」


 小説家・木村啓二の娘だということがバレてしまったというものだ。正確には叔父と姪の関係であることまでは知られていないが。それでも、舞はこの場所が気に入っている。変わり者しかいない、誰も自分の心と体の性別が違うことを差別しない場所だから。


ー文芸部は楽しいけど…月美ちゃんと話す時間が減っちゃったのはちょっと寂しいな。


 そうは思いつつも、別にこれが原因で月美とまた衝突していまうようなことは無いのだろうという根拠のない確信があった為、不安などは一切無かった。


「どしたの、木村センセ。恋する乙女の顔してたよ。」


「してないよ‼︎」


「ホントかなー。じゃ、センセの恋バナ聞かせてよ‼︎」


「なんでそんな結論に…話が飛躍し過ぎじゃないかい?」


 そんな、仮に月美が聞いていたら「それをあなたが言うの?」と指摘されそうな発言をしながらも、舞は月美を初めて見た日のことを思い出す。


「ただ、見当は付いてるんだけどねー。」


「えっ?」


「影山さんでしょ、木村センセが狙ってるのって。」


「ち、違っ、別に違う、けど。何でそう思ったんだい?」


「誤魔化しても無〜駄。流石に影山さんの部屋に入り浸り過ぎ。で、影山さんとの恋バナ、聞きたいなぁなんて‼︎」


 そう言う彼女の態度から、これは悪意あっての発言では無いと判断。ちょうど月美のことが恋しくなっていた舞は、ゆっくりと月美との出会いについて話し始める。


「初めて月美ちゃんに会ったときはさ。ボクは月美ちゃんのことを、初恋の娘と勘違いしてたんだ。その初恋の娘だと思ってたら、月美ちゃんいかにも初対面って感じでさ。」


「ほほう。影山さんがセンセのことを忘れちゃってるだけって可能性は?」


「完全にあり得なくはないけど、多分違うと思うよ。なんか、ボクはその娘のことを、名前に関係したあだ名で呼んでた気がするんだ。だけど、なんか月美ちゃんの名前に合わない気がしてさ。」


 舞は眉をしかめながら、「みーちゃんだったかな?いや?リーちゃんとか?近い気はするんだけど、どっちもしっくり来ないなぁ。」と小さく呟く。そんな舞を見る文芸部員はやけにニヤニヤしていて。そんな様子に、どこか釈然としない思いを抱く。


「で、キミはどんな楽しい恋バナを持ってるんだい?」


「あれ?怒らせちゃいました?」


「別に〜?」


「あぁ、教えますから教えますから‼︎拗ねないで下さいよ〜‼︎」


 そう前置きして自分の幼少時代の恋を語る文芸部員の話を聞きながらも、舞は考える。


ーこうして久しぶりにあの日のことを思い出した訳だけど。月美ちゃん視点から見たら、ボクってすっごく胡散臭いよね。よく知らない人がこっちを見てると思ったら、いきなり話しかけてくるんだもん。別人だって分かるまでは忘れられちゃったんだって勘違いして、すごく寂しかったけどね。


 自分の月美への想いを再認識し、舞は軽く微笑む。「あ、センセ。ちゃんと聞いてます?今他のこと考えてましたよね‼︎」という文芸部員の指摘に、舞は「この娘ってば、人の心を読むのは上手いんだよね〜。」という、月美に「あなたがそれを言うの?」とつっこまれそうな感想を抱く。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「あぁ、今回はやけに早かったんだね。」


「もうすぐ二回目のラグナロクだから。情報が欲しいのよ。」


「ふーん。確かに、もう5月も中盤か。」


 月美がいるのは、カヅキの病室。カヅキは値踏みするような表情で月美を見ている。そのまま、何かを考えこむように少し黙る。


ー今は、どんな嘘を吐くのかでも考えているのかしらね。


 そんな状況が暫く続き、ようやくカヅキは口を開く。


「で、何が知りたいの?」


「デビルの残り戦力。それから、今回来ると予想されるデビルの戦力。今欲しいのはこの二つよ。」


 その答えを予測していたようで、満足したように嗤うカヅキ。


「知りたいよね。仕方が無いから、本当のことを教えてあげようか?」


「対価は?」


「話が早いね。僕があの日、最後に言った言葉を覚えてる?」


 月美は自分の記憶を掘り起こす。そのとき感じたカヅキに対する嫌悪感も思い出し、不愉快な気分になる。


「えぇ。私もそちら側の人間だという内容だったはずね。」


「あぁ。僕がどんな理由でそれを言ったか。当てることが出来たら教えるよ。」


「そうすることで、あなたに何のメリットがあるというの?」


「メリットデメリットなんてもの、元々考えてないよ。ただ、これをすれば君が揺らぐかなって思ったから。」


 言われて考える。確かに、自分とカヅキは多少重なる点があるかもしれない。自分のことを他人に話さない。目的の為なら手段は選ばないという面がある。それは認めるとしても、それを答えて自分が揺らぐ理由が分からない。ひとまず考えた通りに答えてみる。


「自分のことを話さないし、目的の為なら手段は選ばないという面があるという点で、あなたに近いのかもしれないわね。」


「残念。それは僕の聞きたい答えじゃないんだよね。」


「なら分からないわ。」


「ならばヒントをあげよう。僕がやろうとしてることから連想していくと良いよ。」


「人を煽るのが得意。これが答えかしら?」


「気が立ってるね。面白い答え。25点。」


 鼓動が早まる。目の前の彼が、「あの事」を知ってる訳が無い。金城家によって秘匿されているはずだから。それを知らない状態でこの結論を導き出したということは…


ー私が、またそれをもたらす予兆があるとでも言うの?


「私と、あなたの共通点は、破滅だとでも?」


「100点。よく出来ました。」


「あなた、いつから気付いていたの?何故気付いたの?」


「さぁ。ただ、自覚があるってことは前例があるのかな?」


「破滅に導いたことは、無い。」


「破滅に導きかけたことは、あるんだね。」


 満足したように、ニヤニヤ、ニヤニヤと不気味に嗤う。それを見る月美は、嫌悪感と焦燥感に駆られる。


「動揺してるね。対価としては充分かな。今回のラグナロクの規模は、前回の約1.5倍程度。前回のも含めて、三回目のラグナロクにはそのとき残っている敵の全勢力が侵攻してくるはず。参考になったかな。」


「不本意ながら、為になったわ。」


「あれ?僕を信じちゃって良いのかな?」


「えぇ、今回は信じる。あなたは、自分が一度決めたことは覆さない人間だから。」


 そう言い残し、ふらふらとその場を去ろうとする月美。それを、カヅキの一言が止めた。


「そうだ。あの日の戦いは随分と早く終わったね。僕のお見舞いに来た日のことだよ。」


「まさか、あなた。」


「その、まさかかもね。」


 はぐらかすような言い方。虫唾が走る。そんな感覚を味わいながら、彼女は今度こそ病室を後にした。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


 アースと合流すべく、人目につかない場所を探していた月美。そんな彼女は、見覚えのある少年を見かける。


「あ、あなたは…」


 見て見ぬ振りをしようとしていたが、話しかけられたので答えることにする。


「久しぶりね。あのときは、連れが迷惑をかけてしまった。心から謝罪するわ。」


「め、迷惑なんて、そんなこと‼︎今日は、あの人と一緒じゃないんですね。」


「えぇ。」


 少年の指摘に少なからず驚く。少年と出会ったときは、そこまで親密な関係では無かったはずだから。それでも、少年の目には月美と舞の様子が、一緒にいないことを指摘される程度の親密さに見えたということなのだろう。


「何かあったんですか?表情が優れないようですが。」


「いろいろあるのよ。私にも、ね。それはきっとお互い様でしょう?」


「違いありません。」


 力無く笑う二人。二人は、自分を苛んでいるものについて話そうとはしない。


「また会ったとき、あなたの背負っているものを聞かせてちょうだい。あなた、名前は?」


「土屋歩夢です。」


「土屋歩夢、ね。覚えたわ。私は月美よ。またいずれ会いましょう。」


 そう言い残し、月美は力無く微笑んで去っていく。


ーなんか、あの人の…月美さんの雰囲気が、前に会ったときより柔らかかったような。僕も変われるのかな。


 少年、土屋歩夢はそう考えながら、兄の待つ病室へと向かった。

 歩夢は、ジカンヨトマレにも少し出ていたキャラですね。

 二度目のラグナロク。皆さんも是非見届けて下さい。

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