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第十一話 limit

 あけましておめでとうございます‼︎今年もジカンヨモドレをよろしくお願いします‼︎

「影山さん。ちょっと教えて欲しいところがあるんだけど…」


「えぇ。良いわよ。どこかしら?」


 12月1日、金曜日。放課後。一人で学校の自習室に篭り、教科書と対峙していた月美はクラスメイトに話しかけられた。彼女は月美からの了承を得ると、「ありがとう。ここなんだけどね…」と言いながら隣に座る。そんな彼女を横目に見ながら彼女の名前を探る為に記憶の海に潜る。1秒程して彼女の名前が三ツ谷りんだと思い出す。りんの疑問点に答えながらも、月美は勉学に集中出来ていなかった。


ーあれからあの子と連絡は出来ていない。このままラグナロクが始まるのは避けるべきだし、そろそろ連絡をした方が良いのかもしれないけれど…


「ありがとう。よく分かったよ。」


「あなたの為になったなら良かったわ。分からないところがあればまた言って頂戴。出来る限り力になるわ。」


 そう言いながら立ち上がり、荷物を持ってその場を後にしようとした月美だったが、「あぁ、そうそう。勉強とはちょっと関係無い話なんだけど、良いかな?」と、りんに呼び止められる。特に断る理由も無かったので、席に座り直すことで了承の意を伝える。


「ちょっと聞きたいんだけど…影山さんさ、最近何かあった?」


「…え?」


「いやね?影山さんが高校を決めたっていうのは噂で聞いたんだけど、それでっていうわけでもないだろうし。とにかく、影山さん。最近あんまり元気無くない?」


 言われて月美は戸惑う。そう付き合いが長いわけでもないりんに見抜かれるほど態度や表情に感情が出てしまっていたのかと。


「よくある話よ。ただ人と喧嘩した。それだけ。」


「そっか、影山さんが喧嘩か。なんか想像出来ないな。なんか影山さんって、他の人に関わらない訳じゃないけど、誰にも深入りしないイメージだったから。」


 それは、月美が以前から悩んでいたことだった。いくら暫定的に共通の境遇を歩んでいる人物だとはいえ、自分は少々舞に肩入れし過ぎなのではないかと。


「そうね。自分でも不思議だわ。」


 少し前の月美なら、別に深入りなんてしていないと言い切りこの場を去っていたかもしれない。しかし彼女はそれを選ばなかった。


「…聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥。だから恥を忍んで聞くわ…」


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


 翌日の12月2日、土曜日。太陽が沈みかけて空を橙色に照らす頃、時間が止まった。月美は時期を鑑みて、これがラグナロクである可能性が高いと判断する。


ーひとまず神名市へ行かなければ何も始まらない。


 そう考え、月美は夕焼けの空を走る。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


 月美が神名市に到着すると、二十体程のデビルが群れていた。


ーこれは…正直、勝てるかどうかは一体一体の強さによるわね。まぁ、いくら相手が弱くても一人でこの量は…仕方ない。少し勿体ないけれど。


 月美はマスカレイド・ルナを発動。もう一人の自分に「本物の月美の背後を狙う敵を攻撃する。自分を狙う敵が現れたらマスカレイド・ルナで分身して身を守らせる。」という命令を課し、敵陣に進撃する。試しに敵の遠距離攻撃をなんとか掻い潜り、多少のダメージを喰らったものの、なんとか装甲が薄い敵に接近。頭部を狙って銃撃をかます。二発の弾丸が額に命中。喰らった敵は消滅する。


ーこいつら、普段戦っている個体よりも弱い‼︎


 それを理解すると同時に、背後から銃声。どうやら、もう一人の月美が命令通りに動いたようだ。すぐに背後を見て、もう一人の月美を見る敵の首に向けて射撃。消滅を確認すると同時にハンマーを長押ししつつ急上昇。追ってきたデビル達に向けてチャージショットを放つ。チャージショットは月美を追うために並んでいたデビル達を貫通。複数体のデビルが同時に消滅する。次々と倒される同胞を見たデビル達が怯んで月美から距離を置く。そして放たれる各々の遠距離攻撃。仕方が無いと割り切り、その攻撃のうち一部を撃ち落として退路を確保。遠隔で意思を伝えて、もう一人の月美に「こちらを攻撃するデビルに、追撃をしないよう牽制攻撃を仕掛ける。」という命令を出す。月美の予定通り、敵の狙いの一部が逸れたので、先程の退路を有効活用し、上手く戦線から離脱。建物の影を縫って更に敵から離れる。敵はもう一人の月美に集中しているようで、月美を追う様子はない。圧倒的不利な状況も脱した為、月美はもう一人の月美に「月美本体に向けて帰還する。」という命令を出す。何とか消滅せずに残っていたようで、命令通りにこちらに向かっていることを確認。ここで視覚共有を発動。あの場のデビルの大半がもう一人の月美を追っていることを確認。


ー条件の第一条件は突破。あとは、しっかりと囮役を全うするまであの偽物が保つかどうかね…


 しばらく様子を見てから視界共有を解除。このままならここにたどり着く前に消滅することはないと判断。月美はチャージショットの準備をする。


ー大技を使い過ぎた…聖因子がかなり減ってしまったわね…


 そのことを考慮しつつ聖因子の量を設定しながらチャージショットを溜める。と、背後から銃声。ハンマーを離さないように気を付けながら振り返ると、そこには複数のデビルと交戦する舞の姿。


ーやけに合流が遅いと思ったら、まさかまだデビルがいたなんて…


 舞は月美に気付かない程戦闘に苦戦しているようだ。しかし、彼女に助力するような余裕は無いし、仮に下手に助力すれば今こちらにおびき寄せたデビル達を仕留められず、逆に戦況が危うくなる可能性が高い。もう一人の月美と視界共有。射程圏内まであと5秒。それを確認すると、視界共有を解除。目の前に集中する。姿を隠しつつ不意を突いて射撃をする必要があるので、民家の窓越しに狙いを定めて射撃する必要がある。今までの射撃より難易度は高い。精神を研ぎ澄ます。


ー4、3、2、1…今‼︎


 計算通りのタイミングでもう一人の月美の姿が見える。その瞬間、月美が事前に導き出していた方向に銃口を向け、引き金を引く。銃口の前に現れていた三日月の紋章が収束し、一つの巨大なエネルギー弾となり、もう一人の月美に向かって飛翔する。弾丸がもう一人の月美に命中する直前に、もう一人の月美は急下降。月美を全速力で追っていたデビル達はチャージショットに対応出来ずに爆散、消滅する。舞も彼女と交戦するデビル達も、その爆音で月美の存在に気が付いたようだ。チャージショットを耐えたデビルと合流して月美に襲いかかる。だが敵は近距離攻撃専門の敵が多かったため、すぐさま距離をとることで簡単に対応出来た。


ー私は聖因子を使い過ぎた。代償が分からない以上、これ以上の使用は出来るだけ避けたい。だからこうやって敵の攻撃を躱し続けて囮になることであの子の負担を軽くしたいところだけど、一体どれだけ逃げ続けられるかしら?


 考えている間も敵は待ってくれない。デビルの背後から放った攻撃を間一髪で躱し、急所に一発攻撃をする。どうやら月美のチャージショットのダメージを受けていたデビルだったらしく、呆気なく消滅する。


ーせめて聖因子を回復出来る手段があれば‼︎


 心の中で毒を吐き、今の攻撃で空いた隙間を通ってこちらに来るようにもう一人の月美に指示。もう一人の月美の聖因子は既に無いも同然なので、せめて非常時用の盾にしようという考えだ。他にも、「仮に離れた位置にいると、舞が月美のフォローをしようとした際にどちらをフォローすれば良いか分からなくなる可能性がある。」や、「纏まっていた方が目立つ為、囮としての役割を果たしやすい。」といった理由もある。

 そうして囮に徹しようとしたが、大量の遠隔攻撃。咄嗟に近くのデビルを盾にする。月美も無事だったが、盾にしたデビルも無傷だった。盾にされた怒りで噛み付いて来る。遠くから銃弾。舞のフォローだ。舞が放ったその弾丸は月美に気を取られていた敵の頭部に命中し、敵は霧散する。その隙に月美は戦況を確認。どうやら敵は全て月美を狙っていたようだ。その為、舞は他の敵に邪魔されずにしっかりと狙うことが出来たのだと理解。


ーただ、その状況もすぐに変わる。今の攻撃の影響で、この中の数体はあの子の元に向かうはず。でもそれは出来るだけ避けたいから、敵が私を狙いたくなるような動きをする必要があるわね。


 月美は近くにいた敵の目に、銃本体を打撃武器としてそのまま突き刺す。闇雲に銃を叩きつけてもあまり効果は期待出来なかっただろうが、しっかりと急所に当てた為それなりのダメージを与えることが出来た。敵が反撃してきたが、目を破壊した側に逃げることで回避に成功。そして月美の目的通り、敵の視線が今まで以上に月美に集まる。わざわざ銃で近接攻撃を行った理由。それは、自分の攻撃手段がもうあまり残っていないことを公開する為。こうすることにより、敵は倒しやすい方を先に倒してしまおうと考えて一斉に月美を狙ったのだ。


ー計画通り、私がターゲットになった。あとは私に気を取られている間に比較的聖因子が残っているはずのあの子に特大のチャージショットを撃って欲しいところだけど…そうすれば、私も道連れになる。私だけ離脱するなんて不可能に近い…何か良い方法は無いかしら?


 そこまで考えた月美は、様々な情報を照らし合わせて一つの仮説を立てる。問題はその仮説を立証するか否か。


ー仕方がない。自分の仮説と、あの子が私のメッセージを受け取ることに賭ける。


 もう一人の自分に、おそらく今回のラグナロクにおいて最後になるであろう命令を下す。次は逆手に持った拳銃をトンファーのように用いて敵の喉元を攻撃、撃破。その光に紛れて月美は下、もう一人の月美は上へ。敵の視線は本物の月美に集中する。その隙にもう一人の月美が銃を構え、デビルに「ギリギリ当たらないように」照準を合わせる。正確には、デビルの先にいる存在に銃口を向ける。引き金を引く。弾丸はデビルに軽く擦り、その先へ。


ーご苦労様。ここまで良くやってくれたわね。


 聖因子を使い切り、仄かな白い光を放って消滅するもう一人の月美に心の中で賞賛の声をかける。その白い光が敵の視線を集めた為、月美の本来の目的からも上手く目を逸らさせることが出来たようだ。ここで目的が達成出来たかどうかを確認しようとすれば、視線を元にこちらの狙いが悟られてしまう可能性がある。故に、あとは祈るだけ。敵の視線が白い光から月美へ戻る。視線が自分から外れていた間にデビル達から逃げやすく、なおかつ自分の目的から敵の視線を離せる位置に陣取っていた月美は、あらかじめ決めておいた敵の隙間を縫って逃げる。逃げている間に敵の攻撃が掠る。その度に少しずつ、銃に付いている砂時計の砂が銃口に溜まっていく。逃げ続けている内に、気が付けば砂時計のハンマー側に残った砂は残り一割程度になっていた。そんな中、月美の視界の端に緑色の光。ここで彼女は作戦の成功を理解する。重い音が轟く。巨大な弾丸が月美を追う為に一直線に並んでいたデビル達を貫き…


 かくして、二人はラグナロクを乗り越えた。

 二人は初めてのラグナロクを乗り越えました‼︎次回は最後の攻撃の意図が分かるかと。

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