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第九話 時間を止めない為に

 ジカンヨモドレも、もう第九話‼︎序盤と呼べるようなパートも終わりを迎えようとしています。今回は珍しく、戦闘シーンからスタートです‼︎

 ビルの影に隠れて、少女は銃を構える。敵に動きが無いのを見計らって、月美は状況を整理する。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


 今回で時間が止まるのは4回目だ。

 1回目は月美の身体から溢れ出た謎の光でデビルを撃破。

 2回目が初めてのデビルとの戦闘。ここでアースという存在と聖因子というものの存在を知る。

 そしてこの物語では描かれなかった3回目。樹木のような体に葉のような翼、赤い木の実のような目を持つ異形のフクロウ型のデビルホロウと交戦した。強さとしては、無制限の遠距離攻撃である音波攻撃があり、蛾型より戦い辛かったものの、最初から2人で戦闘を開始出来たということもあり数の差を活かした囮戦法でなんとか勝利することが出来た。この際大量の聖因子を消耗したが、その3回目の戦闘から半月程経った今ではほぼ回復している。

 そして今回。今までは無かった、デビルが二体同時に現れるという事象が起きた。片方は象型のデビルホロウ(水のような素体に、宝石のように磨き上げられた氷の牙と爪、細い霜柱のような透明な毛を持つ異形の怪物だったが)。もう片方は闇を纏った人型のデビルホロウ。

 人型の方がこれといった特徴が外見に表れておらず、得体の知れない相手だと判断した月美。彼女は少し考え込み、足止めに特化した能力を持つ舞に遅延戦闘を指示。自分一人で出来るだけ早く象型デビルを撃破して合流するという方針を立てる。こうして物語は冒頭に戻る。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


 状況を整理し終えた月美は、もう一度敵に動きが無いことを確かめてから作戦を開始する。拳銃のハンマーを操作してウインドウを出し、マスカレイド・ルナを発動する。


「さぁ…ここからは賭けね。」


 そう小さく呟き、皮肉げに微笑む。月美は賭けが嫌いだ。だから相手の攻撃手段の種類やそれらの特徴、どのようなときにどのような行動をとるのかを徹底的に分析し、その上で自分の持つ手札を最大限に活かせる戦法を導き出して敵を屠ってきた。しかし今回はすぐに撃破し、舞と合流しなければならない。故に強引に敵を撹乱し、強引に隙を突いて一撃で撃破する必要があるのだ。敵に奇襲が気付かれたら、二度目の奇襲を警戒される。そうなれば撃破までの所要時間が格段に長くなってしまう。

 奇襲の準備は整った。マスカレイド・ルナで作ったダミーがデビルの前に姿を表す。どうやらこの象型デビルは、鼻から氷柱を発射する遠距離攻撃手段も持っているようだ。一回に一発しか撃てない上、クールタイムが長い。だが、その分一発一発が大きい。恐らく四肢に命中すれば即部分欠損に追い込まれ、胴体に命中すればすぐに精神体は崩壊するだろう。しかし月美が恐れていたのは、クールタイム無しで連射出来る遠距離攻撃手段があることだったので、この時点で一つ目の賭けに勝った。

 偽物の月美が別のビルに隠れてチャージショットの準備を開始するのと同時に月美もチャージショットの準備を開始する。デビルはこのまま月美のヒット&アウェイ戦法に付き合うことになるのを嫌って月美の偽物を追う。その鼻には巨大な氷柱。いつでも発射出来るように備えているようだ。どうやら以前の蛾型よりいくらか賢いらしい。


ーただ、馬鹿じゃなかったのは救いね。


 そう。ただの馬鹿ならば理に適わない行動をする為、いくら心理戦を仕掛けようにも月美の想像しない一手をうってくる。しかし敵に知性があるのなら、単純にそれを上回る一手を打てば良い。

 状況は刻々と変化していく。月美が隠れていたビルから飛び出て、偽物の月美に気を取られている間に背後から攻める。それと同時に象型のデビルが偽物の月美に迫る。それを予想していた偽物の月美は溜めていたチャージショットを発射。チャージショットをなんとか回避しようとするがその巨体が災いし、デビルの下半身が吹き飛ぶ。ただでは済まさじと、用意していた巨大な氷柱をカウンター気味に発射する。偽物の月美の身体を貫通。傷口から凍り、淡い光を放ちながら砕け散る。その光に気を取られている間に背後から本物の月美が襲いかかる。象型が気付いたときにはもう遅い。すぐさま氷柱を充填しようとするが、そのときにはチャージショットが頭部に近付いていた。こうして勝敗は決した。

 月美はデビルが消滅するのを見届けてから銃に付いた砂時計を見る。結果だけ見れば月美の圧勝に見えるかもしれない。しかし月美からみたらこれは辛勝と言わざるを得ない。分身を一体生成し、チャージショットを二回使用。いくら強引に勝つ為とはいえ、流石に聖因子を使い過ぎてしまった。


ーもう少し、セーブするべきだったかしら?いえ、反省するのは後回し。今はもう片方のデビル…あの人型のデビルを倒しに行くのが先ね。


 月美は遥か上空まで舞い上がり、高所から目的地を探し始めた。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


 舞と合流した月美。対峙するデビルの異様さは上空から見た際から感じてはいたが、近くで見るとより強く感じる。


「状況は?奴が動いていないのはあなたが拘束しているから?」


「早かったね、月美ちゃん。」


 舞は「無事に再会出来たことを祝いたいところだけど、そんな場合じゃないよね。」と前置きをしてから説明を開始する。

 月美と別れた舞は、順調に人型のデビルを追い詰めていたという。そして銃のハンマーを操作してウインドウを出し、「樹斬ノ術」で蔓を生み出して拘束しつつチャージショットで撃ち抜く為の傷口を作ろうとした瞬間、デビルは瘴気のような闇を周囲に振り撒き始めたようだ。その瘴気に触れた瞬間、蔓は崩れさってしまう。そのまま敵に動きが無かったので試しにチャージショットを撃つが、それも簡単にかき消されてしまう。初めて使う『風遁ノ術』も試してみたが、どうも相性が悪いようだった。


「ってな訳で、通用する可能性がある方法は一つしか無いんだよ。」


 言われて考える。月美は「ムーン・リコレクション」を使うことを避けてきた。それはただ単に嫌な予感がしていたから。こんな根拠の無い理由ではあるが、自分の直感も馬鹿には出来ないと思っていた。しかし、もし今賭けに出なければ、最悪の場合このままずっと人型を撃破出来ずに止まった時間に囚われたままになってしまう。


ー出し惜しみしてる場合じゃないってことね。


 ハンマーに手を添える。上手くハンマーを倒せない。少しして、自分の手が小刻みに震えていることに気が付いた。舞もそれに気が付いたようで、ハンマーに添えられている月美の手をそっと両手で包み込む。


「ボクにはね、月美ちゃんが何で震えてるのか分からないんだ。だからボクは、辛いよね、とか、分かるよ、とか、そんな言葉はあげられない。でもね。月美ちゃんなら大丈夫だって信じて、こうやって手を握ることならボクにだって出来るよ。」


 どこか悲しげな笑顔を見せる舞。何を怖れているのかは問わない。何故躊躇っているのかも問わない。そのうえで発した今の言葉が、舞にはどこか自分勝手なものに思えた。世界のどの場所を探しても、他人の心が完璧に読める人間などいない。だからといって、自分が下手な選択肢を選んだら月美を傷付けてしまうかもと自分を正当化して、月美に寄り添いきれてないんじゃないかという罪悪感が舞の笑顔を曇らせてしまっているのだ。


 月美には舞の悲しげな笑顔の理由は分からなかった。それでも、舞は自分のことを心から心配しているということは理解していた。


ーきっと、私がどちらを選んでも後悔する未来はある。だから、せめて選択をしなかったことを後悔しないように。自分で動いた結果起きた未来だと、言い訳せずに胸を張っていられるように。


 月美は震える手で強引にハンマーを倒してウインドウを出す。


「励まして貰った後に頼むのも情けない話なのだけれど、私の指を上の『ムーン・リコレクション』まで移動させてくれないかしら。」


「うん。分かったよ。」


 舞は頷いて月美の右手を優しく握る。月美の右手の人差し指がウインドウに触れる直前で一度その手を止めて、舞は月美の顔を見る。本当にこれで良いのかと、視線で問いかける。月美はこれに、右手に軽く前に向けて力を入れることで答えた。それに応える為に舞は月美の指をウインドウへと導く。指がウインドウに触れた途端、技の効果が頭の中に流れ込んでくる。


「…あなたの銃を、私の銃の銃口に近づけて。」


 月美の言葉を疑わず、舞は言われた通り自分の銃を月美の銃口の前に出す。それを確認した月美が引き金を引くと白いエネルギー弾が発射され、エネルギー弾が舞の拳銃に当たると拳銃は緑色に輝く。


「どうやらこの技は、命中した物体の記憶を解放することが出来るみたい。その副作用の力であなたの銃の力を拡張した。今ならチャージショットで撃ち抜けるはず。」


「ありがと‼︎月美ちゃん‼︎二人のきょーどーさぎょーだね‼︎」


 言いつつ銃のハンマーを長押しする。現れる蔓の紋章はいつもより早く大きくなり…


「「貫いて(ちゃえ)‼︎」」


 二人が全力を込めた一撃は瘴気に崩されることなく人型のデビルを貫いた。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「やったね‼︎月美ちゃん‼︎」


「まだ奴の消滅を確認してないじゃない。」


 月美は早々に喜ぶ舞を嗜める。そうして会話している間も意識は敵から逸らさない。やがて高火力砲撃による煙が散り敵がいた位置を見ると、人型が崩れ去っていく姿が見えた。そして崩れ去って場所には…


「月美ちゃん‼︎人‼︎人がいるよ‼︎」


 舞が叫んでいる。月美はこれを止める気にはならなかった。それは自分も内心動揺していたから。何故なら、少し前までその場所に人はいなかったはずなのだから。


「あれはどういうことかしら、アース。」


 いつの間にか二人の背後に現れていたアースに問いかける。


「私にも分からない。しかし止まった時間の中で肉体を動かしたことに変わりない。肉体の損傷は激しいはずだ。私が時間を進めたら、直ちにどちらかが救急車を呼ぶんだ。」


「私はこの場所の住所を覚えている。私が説明した方がスムーズに事が進むから、今回は私に任せて貰うわ。」


「了解した。今から時間を進める。彼が意識を取り戻したら君達の元に現れよう。」


 そして時は進む。その後、手筈通り救急車を呼んだ月美。今回の人型デビルとの戦いが今後の大局を変えることをまだ誰も知らない。

 さぁ、ジカンヨトマレでも出て来たヒトガタのお出ましです‼︎このデビルが倒れた位置にいた人物がどう動くのか、次回以降に注目です‼︎

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