プロローグ あの日の話
始まりました‼︎第二部‼︎ジカンヨトマレを読んでいた人もそうで無い人も楽しめる作品を目指して頑張ります‼︎
そこに、二人の女の子がいた。彼女達は仲良く、色鮮やかな花で飾りつけられた庭を楽しげに走っている。別の一人の女の子が、そんな二人をジーっと眺めていた。二人がその子に気付いて、こっちにおいでと手招きしたが、そっぽを向いてどこかへ行ってしまう。それが何でか分からなかった二人は、顔を見合わせて首を傾げる。まぁいいやと二人で笑い合い、再び二人で遊び始めるのだった。
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どんなものにも最後がある。別れがある。二人の女の子にも、また。
「『きーちゃん』…」
「なかないでよ…」
『きーちゃん』はトラックの前にいた。どうやら今、『きーちゃん』が引っ越しようとしているらしい。向こう側で、『きーちゃん』の両親も含むであろう大人達が話している。引っ越し前の挨拶だ。両親達がしているこの挨拶が終われば、きっと『きーちゃん』は出発してしまうだろう。これは正真正銘、最後の会話。
「『きーちゃん』、わたし、ね…『きーちゃん』のこと、だいすきだよ‼︎」
泣きながら、まだ拙い滑舌で言う。そう言われた『きーちゃん』も、鏡合わせのように同時に泣き始めてしまう。
「わたしも…わたしも‼︎すきだよ‼︎」
『きーちゃん』が、女の子の言葉に答える。しかし、返ってきた反応は、『きーちゃん』にとって予想外のものだった。
「なら…なら‼︎もし、また、あえたら、けっこんしてくれる?」
好き。幼い二人が使った、その二文字の言葉の持つ意味が違ったのだ。片方は恋愛の対象として、片方は友達としてその言葉を使っていた。そのすれ違いが、『きーちゃん』の心に動揺を生む。心を落ち着けるため、一度目の前の大好きな友達をしっかり見ようと、服の袖で涙を拭う。しかしそれは、拭っても拭っても、とめどなく溢れ出してきて…
「ごめんね…おんなのこどうしでは、けっこんできないんだよ?」
それが突然のことだったことと、彼女の幼さが起因して、『きーちゃん』は自分がもう一人の女の子のことを、目の前の大切な友達のことをどう思っているのかが良く分からなくなってしまった。「はい」と答えるべきか、「いいえ」と答えるべきか。だからこそ、彼女にはただの正論を言うことしか出来なかった。
そして、ここでついにタイムリミットが来てしまう。『きーちゃん』の両親がこちらに向かって歩いて来たのだ。
「最後までありがとうね。いつかまた会えたときは、またこの子と遊んでくれる?」
『きーちゃん』の母親が女の子に優しく問いかける。女の子は精一杯首を縦に振る。そして、『きーちゃん』に抱きつく。泣きながら抱き合う二人。そして、別れの時は訪れる…
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
甲高い目覚まし時計の音が部屋に鳴り響き、一人の少女を夢の世界から呼び戻す。「もう、うるさいなぁ…」と寝言のように愚痴りベッドから出ずに手探りで止めようとする。しかし横着をした罰か、目覚まし時計は鈍い音を立てて床に落ちてしまう。仕方無くベッドから出て目覚まし時計を拾い上げ、アラームを止める。
「ふわぁ、よく寝たぁ…」
寝癖だらけの髪の毛を軽く撫でる。彼女はよく過去の記憶を呼び覚ます。先々週と先週の出来事と、今見た夢。ずっと昔のことだから、確信は持てない。それでも、どこか似ていると彼女は思った。
「確かめたいなぁ…合ってるといいな…」
暗い部屋の中、カーテンの隙間から差し込む一筋の光を頼りにして落ちていた目覚まし時計を拾い、アラームを止めてから勢いよくカーテンを開ける。目覚まし時計が壊れていないことを確認し、彼女はゆっくりと洗面所へと向かった。
昼ぐらいに第一話を投稿する予定です‼︎