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足の先から足の先まで~親指~

作者: 古川結日


SNSから次から次へと飛び出すオシャレ達に敏感でいるのは職業柄。

オシャレな雰囲気が好きだからという理由ではじめたオシャレな街中のオシャレカフェのアルバイト。

服装や髪型、ピアスなんかのオシャレアイテムはほぼOKの、そのあたりはゆるめのバイト。

ただ、靴は洗浄機やら掃除のモップやらキッチンの油やらでいつも汚いスニーカー。


スニーカーはどんな季節も乗り越えて1番テーブルからキッチン、トイレどこへでも行ける。


休みの夏。サンダルからでる足の爪はしっかり流行りのネイル。

このままスーパーへ一週間分の買い物へくり出す。

頭の先から足の先まで、オシャレに包まれているはずなのに、足がガクガク震える。

スーパーの夏の冷房は食品管理のためとはいえ寒すぎる。

二重の自動ドアの一つ目からもう冷気を感じる。

どうかしている。わかっているのにサンダルからネイルをにょきっと出さずにはいられない。

 

 遥か昔の夏すっぴんの足の爪と#OFFの日コーデ でスーパーへ向かい極寒の地、精肉コーナーで悲劇が起こった。

精肉コーナーの後ろのお菓子棚の列から聞き覚えのある声がスーパーのテーマソングを歌っていた。

「完コピじゃん!」

「いや、ここほぼ毎日来てるから」

 高校時代の同級生がカップルになっている。

驚いた。男子は当時からカッコ良かったけれど、女子は垢抜けすぎではないか!

たった一年、いや半年でここまでグレードアップするとは、女子の努力に喝采だ。

服装もオシャレだし髪型、メイクと文句なし、と勝手に称賛していたら、熱い目線を送り過ぎたのか二人が私に気付いた。

ただ、こちらもしっかりOFFの日コーデをしているので見られて恥ずかしい事などなかった。

堂々と久しぶりー!と挨拶を交わし軽く近況報告しつつここは極寒の地なのでそろそろ…と立ち去る瞬間。

女子の目線が躊躇なく私の足の爪を目掛けて落とされた。

あ、と女子の足の先を見ると、この日のために昨日、いや今朝?仕上げたネイルがギラリと目頭を刺激した。

やってしまった。終わった。

完全に勝ちを確信した女子の去り際の笑顔に愕然とした。

よりによって今朝の出来立てほやほやの爪と会うなんて。

2週間たった爪ならば、生え際が気になるネイルVSすっぴん爪はほぼ互角なのに。


あの日以来、#伸びてきたから #新しいネイル 又は #セルフネイル は怠っていない。

夏はとくに見せ場が多いのでサロンでジェルネイルをしてもらう。

そう言えば、あのカップルを見た頃から彼氏がいなかった。

彼氏がいれば、素足になるタイミングが幾度来るとこは想定済み。

思い出が保存されている脳から、足のデータばかり再生される。

 あー、あの海も、あのバーベキューも、あのベッドも、あのお風呂も、、、。

フットネイルへ行く前も、しっかり見られる足のケアをして挑んでいたのに。

その時の映像が思い出される。クリームを塗る、その前にムダ毛の処理、その前に、、、。

 処理??

 会計前のかごの塔から一つ持ち上げながら自動ドアが空いた。

クリーム色とピンク色の床に右足がキレイに正方形におさまる位置、足の親指の毛にピントが合う。

Instagramにいつも見る配置。

そこに毛。


終わった。

誰もみてませんように。

会計前のかごをそのままかごの塔のてっぺんに戻したのを左目で確認しつつ、#サザエさんか #お財布を忘れた人 を演じながら自転車置場へ向かった。

爪なんかのもっとこちら側で犯していた。

絶対に今年に入ってから一度も足の親指の毛の事を気にした記憶がない。

早く帰って!

この事を記録として残さないと!


『夏だからセルフネイルしてみた♡』

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